香山リカのココロの万華鏡:うつ病の経済損失/東京(毎日新聞)
[2010年09月14日(Tue)]
2010(平成22)年09月14日(火)
毎日新聞 地方版
トップ>地域ニュース>東京
香山リカのココロの万華鏡:うつ病の経済損失/東京
http://mainichi.jp/area/tokyo/news/20100914ddlk13070228000c.html
うつ病対策、自殺対策にもっと人手と予算を。
こんなことを口にすると、
「いまの日本に必要なのは景気回復。
うつや自殺の対策にお金をつぎ込んだって、
その費用が回収できるわけじゃないだろう」
などと言われることがある。
ところがこのほど、うつ病や自殺の対策は
結果的には“お得”になる、
という画期的なデータが公表された。
●
発表したのは厚生労働省。
自殺した人が亡くならなければ生涯、得られたはずの
所得額やうつ病の休業にともなう所得の減少などを
計算したところ、2009年だけで約2兆7,000億円の
経済損失が出ている、と推計されたのだ。
当然、得られたはずの税収も見込めなくなる。
もちろん、このデータは損失を示しているだけで、
「だから対策を講じたほうが“お得”」
とまでは言っていない。
ただ、この数字を見てこんなことを考えた経営者も
いるのではないか。
「たしかにウチでも、
新人時代からコストや時間をかけて育て上げた人材が、
うつ病などで長期休業したり退職したりするのは、
たいへんな利益の損失だよなあ」
そう思った経営者や管理職には、こう言いたい。
うつ病の場合、
「極端な成果主義で追い詰めない」
「ゆとりを持った勤務体制に」
「カウンセラーを配置する」
といった対策を導入することで、
ある程度、予防することもできるはずだ。
●
これらは一見、費用もかかるし効率ダウンにつながるかの
ようだが、長い目で見ると経済的な損失を減らし
業績の安定、さらにはアップにもつながる。
つまり、“お得”ということになるのだ。
人の健康や命にかかわる問題を損得で考えることじたいが
不謹慎、という意見もあるだろう。
しかし、そう言っていては、対策が進まないのも事実。
ここは、ソロバンをはじいてでも、行政のトップや経営者たちに
「そうか、今後の経済成長のためにも、
まずはうつ病対策、自殺対策か」
と思ってもらいたいところだ。
●
とはいえ、もちろん、そんな試算をしてみせなくても、誰もが
「自殺対策? 何をさしおいてもやるべきだろう」
と思ってくれる“心やさしい社会”になることこそが、
最大の対策なのかもしれない。
毎日新聞 地方版 2010年09月14日(火)
毎日新聞 地方版
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香山リカのココロの万華鏡:うつ病の経済損失/東京
http://mainichi.jp/area/tokyo/news/20100914ddlk13070228000c.html
うつ病対策、自殺対策にもっと人手と予算を。
こんなことを口にすると、
「いまの日本に必要なのは景気回復。
うつや自殺の対策にお金をつぎ込んだって、
その費用が回収できるわけじゃないだろう」
などと言われることがある。
ところがこのほど、うつ病や自殺の対策は
結果的には“お得”になる、
という画期的なデータが公表された。
●
発表したのは厚生労働省。
自殺した人が亡くならなければ生涯、得られたはずの
所得額やうつ病の休業にともなう所得の減少などを
計算したところ、2009年だけで約2兆7,000億円の
経済損失が出ている、と推計されたのだ。
当然、得られたはずの税収も見込めなくなる。
もちろん、このデータは損失を示しているだけで、
「だから対策を講じたほうが“お得”」
とまでは言っていない。
ただ、この数字を見てこんなことを考えた経営者も
いるのではないか。
「たしかにウチでも、
新人時代からコストや時間をかけて育て上げた人材が、
うつ病などで長期休業したり退職したりするのは、
たいへんな利益の損失だよなあ」
そう思った経営者や管理職には、こう言いたい。
うつ病の場合、
「極端な成果主義で追い詰めない」
「ゆとりを持った勤務体制に」
「カウンセラーを配置する」
といった対策を導入することで、
ある程度、予防することもできるはずだ。
●
これらは一見、費用もかかるし効率ダウンにつながるかの
ようだが、長い目で見ると経済的な損失を減らし
業績の安定、さらにはアップにもつながる。
つまり、“お得”ということになるのだ。
人の健康や命にかかわる問題を損得で考えることじたいが
不謹慎、という意見もあるだろう。
しかし、そう言っていては、対策が進まないのも事実。
ここは、ソロバンをはじいてでも、行政のトップや経営者たちに
「そうか、今後の経済成長のためにも、
まずはうつ病対策、自殺対策か」
と思ってもらいたいところだ。
●
とはいえ、もちろん、そんな試算をしてみせなくても、誰もが
「自殺対策? 何をさしおいてもやるべきだろう」
と思ってくれる“心やさしい社会”になることこそが、
最大の対策なのかもしれない。
毎日新聞 地方版 2010年09月14日(火)