こころを救う:産後うつ、理解深めて 毎年10万人前後、発症(毎日新聞)
[2010年08月18日(Wed)]
2010(平成22)年08月18日(水)
毎日新聞 東京朝刊
トップ>ライフスタイル>新着記事
こころを救う:産後うつ、理解深めて 毎年10万人前後、発症
http://mainichi.jp/life/today/news/20100818ddm013040176000c.html
支援団体が開いたフォーラムでは、夫の無理解から、
治療が遅れるケースも報告された
=東京都文京区の文京区民センターで、水戸撮影
◇早期治療なら薬不要 回復へ夫の役割重要
出産後に思うような子育てができずに自分を責めたり、
イライラして子どもを傷つけたりする母親がいる。
出産後の女性の1割がかかる「産後うつ」という病気だが、
医療機関や家族の認識不足から適切なサポートを受けられず、
苦しむケースもある。 【水戸健一、斎藤広子】
●
「この世から消えてしまいたい」。
さいたま市の主婦(32)は4月上旬、第1子を産んだ直後から
気分が沈みがちになった。
出産した病院に相談したが、担当の産婦人科医は
「初めての出産で疲れているだけ」
と言うばかり。
「別の病院を探して」
と突き放された。
●
途方に暮れ、懇意の医者に相談。
紹介された心療内科で産後うつと診断された。
現在もカウンセリングが続いている。
会社員の夫(34)は
「妻の様子がおかしく、一刻を争う事態だった。
なぜ出産した病院で診てもらえなかったのか」
と憤る。
●
産後うつは産後半年ごろまでに発症し、
憂うつな気分や食欲不振、体のだるさなどが2週間以上続く。
産後のホルモンバランスの変化や家事育児の増加が、
興味の喪失や慢性的な疲労感を引き起こすといわれている。
7月下旬には、2月に出産した日本テレビの女性アナウンサー
(34)が自殺。
親族がテレビ番組に出演して、うつ病の診断を受けていたと
明かした。
産後うつに詳しい三重大学保健管理センターの岡野禎治教授
(精神医学)によると、国内では産後の女性の約8〜14%、
毎年10万人前後がかかると言われている。
岡野教授は
「まじめできちょうめんなタイプが多い」
と話す。
●
問題は、産婦人科が出産後のケアに積極的にかかわろうとせず、
小児科も子どもの健診が中心で、病気が見過ごされがちなことだ。
また投薬治療が中心の心療内科は、授乳への影響を懸念して
母親が敬遠する傾向にある。
日本周産期メンタルヘルス研究会の宗田 聡理事
(パークサイド広尾レディスクリニック院長)は
「出産後の相談窓口をつくらなければならない。
投薬が必要な患者は1〜2割。
早期に治療を始めれば、カウンセリングで回復が可能」
と強調する。
母親が産後うつにかかったら、
家族や周囲はどう接すればよいのだろうか。
岡野教授は
「体をゆっくり休めることが必要なので、
できる限り家事や育児を代わってあげて。
特に夫が病気のつらさを理解して、
一緒に専門医を受診してほしい」
と助言する。
気をつけたいのが回復期だという。
「治療後2〜3カ月は自殺の危険がある。
勝手に治ったと判断して薬をやめたりしないでほしい。
家族も専門医の判断があるまで気を抜かずに見守って」
と話す。
●
民間団体は、病気への理解を深めるための取り組みを進める。
父親の育児支援をするNPO法人「ファザーリング・ジャパン」
は9日、東京都内で「父親たちで考える産後うつ問題」と題した
フォーラムを開催。
仕事帰りの男性ら約200人が耳を傾けた。
妻(44)が7年前に産後うつにかかったという
会社員(46)が講演、
「最初は単なる疲れと思い、
妻の弱音をグチと聞き流してしまった。
『大変といっても育児休暇中だろ』
と言ってしまった」
と打ち明けた。
産後うつの自助グループで情報サイトを運営する
「ママブルーネットワーク」には、
症状を理解しない夫との関係に悩む声が寄せられる。
宮崎弘美代表は
「うつで体を動かせない妻に対して、
気分転換の外出を勧めるなどのずれた助言をしてしまう
夫もいる。回復に家族の適切なサポートは不可欠」
と訴える。
毎日新聞 東京朝刊 2010年08月18日(水)
毎日新聞 東京朝刊
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こころを救う:産後うつ、理解深めて 毎年10万人前後、発症
http://mainichi.jp/life/today/news/20100818ddm013040176000c.html
支援団体が開いたフォーラムでは、夫の無理解から、
治療が遅れるケースも報告された
=東京都文京区の文京区民センターで、水戸撮影
◇早期治療なら薬不要 回復へ夫の役割重要
出産後に思うような子育てができずに自分を責めたり、
イライラして子どもを傷つけたりする母親がいる。
出産後の女性の1割がかかる「産後うつ」という病気だが、
医療機関や家族の認識不足から適切なサポートを受けられず、
苦しむケースもある。 【水戸健一、斎藤広子】
●
「この世から消えてしまいたい」。
さいたま市の主婦(32)は4月上旬、第1子を産んだ直後から
気分が沈みがちになった。
出産した病院に相談したが、担当の産婦人科医は
「初めての出産で疲れているだけ」
と言うばかり。
「別の病院を探して」
と突き放された。
●
途方に暮れ、懇意の医者に相談。
紹介された心療内科で産後うつと診断された。
現在もカウンセリングが続いている。
会社員の夫(34)は
「妻の様子がおかしく、一刻を争う事態だった。
なぜ出産した病院で診てもらえなかったのか」
と憤る。
●
産後うつは産後半年ごろまでに発症し、
憂うつな気分や食欲不振、体のだるさなどが2週間以上続く。
産後のホルモンバランスの変化や家事育児の増加が、
興味の喪失や慢性的な疲労感を引き起こすといわれている。
7月下旬には、2月に出産した日本テレビの女性アナウンサー
(34)が自殺。
親族がテレビ番組に出演して、うつ病の診断を受けていたと
明かした。
産後うつに詳しい三重大学保健管理センターの岡野禎治教授
(精神医学)によると、国内では産後の女性の約8〜14%、
毎年10万人前後がかかると言われている。
岡野教授は
「まじめできちょうめんなタイプが多い」
と話す。
●
問題は、産婦人科が出産後のケアに積極的にかかわろうとせず、
小児科も子どもの健診が中心で、病気が見過ごされがちなことだ。
また投薬治療が中心の心療内科は、授乳への影響を懸念して
母親が敬遠する傾向にある。
日本周産期メンタルヘルス研究会の宗田 聡理事
(パークサイド広尾レディスクリニック院長)は
「出産後の相談窓口をつくらなければならない。
投薬が必要な患者は1〜2割。
早期に治療を始めれば、カウンセリングで回復が可能」
と強調する。
母親が産後うつにかかったら、
家族や周囲はどう接すればよいのだろうか。
岡野教授は
「体をゆっくり休めることが必要なので、
できる限り家事や育児を代わってあげて。
特に夫が病気のつらさを理解して、
一緒に専門医を受診してほしい」
と助言する。
気をつけたいのが回復期だという。
「治療後2〜3カ月は自殺の危険がある。
勝手に治ったと判断して薬をやめたりしないでほしい。
家族も専門医の判断があるまで気を抜かずに見守って」
と話す。
●
民間団体は、病気への理解を深めるための取り組みを進める。
父親の育児支援をするNPO法人「ファザーリング・ジャパン」
は9日、東京都内で「父親たちで考える産後うつ問題」と題した
フォーラムを開催。
仕事帰りの男性ら約200人が耳を傾けた。
妻(44)が7年前に産後うつにかかったという
会社員(46)が講演、
「最初は単なる疲れと思い、
妻の弱音をグチと聞き流してしまった。
『大変といっても育児休暇中だろ』
と言ってしまった」
と打ち明けた。
産後うつの自助グループで情報サイトを運営する
「ママブルーネットワーク」には、
症状を理解しない夫との関係に悩む声が寄せられる。
宮崎弘美代表は
「うつで体を動かせない妻に対して、
気分転換の外出を勧めるなどのずれた助言をしてしまう
夫もいる。回復に家族の適切なサポートは不可欠」
と訴える。
毎日新聞 東京朝刊 2010年08月18日(水)