教会で共同生活 前向きに(読売新聞)
[2009年10月08日(Thu)]
2009(平成21)年10月08日(木)
読売新聞
ホーム>医療と介護>医療>医療ルネサンス>仕事と自殺予防
教会で共同生活 前向きに
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/renai/20091008-OYT8T00312.htm
三段壁をパトロールする白浜レスキューネットワークの
藤藪庸一さん
紀伊半島南西部の和歌山県白浜町。高さ50メートルの岸壁が
太平洋に面する観光名所が「三段壁」だ。
投身自殺を考えて来た人を保護し、再出発を支援する団体がある。
NPO法人「白浜レスキューネットワーク」。
代表の藤藪庸一さんは地元教会の牧師で、
約10年前、前任の牧師から活動を引き継いだ。
岸壁には「白浜いのちの電話((電)0739・43・8981)」
の看板を立て、連絡用の公衆電話も設置してある。
事務所に電話が入ればかけつける。
また、週2回夕方、保健所の精神保健福祉士や町職員、
警察官らと岸壁を見回り、不審な人がいれば声をかける。
昨年までの保護件数は月2、3人だったが、
今年は急増し、3〜7月は月10人前後に上った。
話を聞いて、身よりのない人や事情を抱えた人は、
就職など再出発のメドがつくまで
教会で共同生活してもらっている。
その人数も常時5、6人だったのが、7月には20人まで増え、
今も15人が教会に滞在する。
「部屋が足りず、礼拝堂で寝る人も出る状態」
と藤藪さん。
最近は、死のうとした人ばかりでなく、
最初から助けを求めて来る人もいる。
「いずれにしろ、暮らしに悩む人が増えた」
と思う。
6月、岸壁を見回りに来ていた保健所の精神保健福祉士、
栗田直嗣さんが50歳代の男性に声をかけた。
最初は無視されたが、
「ホテルは」
などと事情を聞くと、
「大阪から飛び込みに来た」
と打ち明けた。
「一晩でもあなたに付き合う」
という栗田さんに説得され、教会に来た。
離婚後、娘らと疎遠になり、会社も人間関係の悪化などから
辞め、孤立し自暴自棄になっていた。
2、3日、教会で過ごすと、
「悩んでいるのは自分だけじゃない」
と気づき、
「もう1回生きてみよう」
と前向きになれた。
地元ホテルの警備の仕事を紹介され、働き始めた。
藤藪さんは、一緒にハローワークに行くなど、職探しも手伝う。
就職後、町内のアパートで自立する人もいる。
また、栗田さんが様子をみて、必要な人には精神科医を紹介する。
藤藪さんらは今年、呼びかけに応え、福井県の東尋坊や
山梨県の樹海などの自殺多発地域で活動する団体で
ネットワークを組み、情報交換を始めた。
藤藪さんは、
「不況の中、多くの人を保護するが、
みんな本当は死にたくないと思っている。
自殺を踏みとどまった人たちの例を元に、
どんな支援ができるのか知恵を絞りたい」
と話す。
読売新聞 2009年10月08日(木)
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
2009(平成21)年10月07日(水)
読売新聞
ホーム>医療と介護>医療>医療ルネサンス>仕事と自殺予防
アルコール依存も危険
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/renai/20091007-OYT8T00254.htm
東京都内のホテルで開かれた全日本断酒連盟の会合で話す
杉江昌夫さん(中央)
「昔は毎朝ビールを飲んで出勤するほどの酒浸り。
仕事や家族関係が成り立たず、自己嫌悪に陥っていた」
という愛知県の建築士、杉江昌夫さん(52)。
2度、自殺未遂の経験がある。
最初は会社員だった26歳の時だ。
アルコール性肝炎で入院。アルコール依存症と指摘され、
一度は飲酒をやめた。
「少しぐらい」
と缶ビールに手を出したのは3か月後。
また酒浸りに戻り、仕事も休みがちで妻ともめた。
「いけないと思いながら、
こんな生活をやめられない俺は死んだ方がいい」
と思い、カッターで手首を切った。
しかし、出血と共に酔いがさめ、
怖くなって自ら救急車を呼んだ。
2度目は翌年だ。家族に言われて依存症専門病院に半年間入院。
退院後は、回復をめざす人が集まる自助組織「断酒会」にも
通い始めた。
腰痛を理由に仕事を休んだ日、
「休んでホッとしている俺はダメ人間」
と思い、処方された睡眠薬などをまとめて飲んで意識を失った。
国の自殺予防総合対策センター自殺実態分析室長の
松本俊彦さん(精神科医)は
「自分の意思で適度に飲酒量を自制できなくなるのが
アルコール依存症。
うつ病のように知られていませんが、自殺の危険要因です」
と指摘する。
アルコールは精神状態を不安定にする。
うつ状態を招いたり、悪化させたりすることがある。
また、思考力が低下し、衝動的な行動を起こしやすくなる。
さらに、失業や家族との離別を招いて生活に困窮し、
精神的に追い込まれていく。
同センターが全国の断酒会員5,422人に行った調査では、
41%が
「本気で死にたい」
と考え、20%に自殺未遂経験があった。
死にたいと思った経験は一般を対象にした
内閣府調査の約2倍だ。
杉江さんも、断酒会が再出発の支えになった。
目を覚ました後、妻に連れられ会合に出ると、
会員約20人が2時間、自分がどうすればいいのか、
話し合ってくれた。
年配の会員には
「飲みたい、死にたいと思ったら俺の所に来い。
まず話そう」
と諭された。
「親身になってくれる仲間のありがたさを痛感し、
初めて、しっかり生きようと思った」。
以来、毎週、体験を語り合い、決意を再確認。
建築士の資格を取り仕事に励み、会の運営にも携わる。
松本さんは
「依存症は常に再発への注意が必要。
病院だけでなく、断酒会の意義は大きい」
と話す。
「全日本断酒連盟」の連絡先は
(電)03・3863・1600。
読売新聞 2009年10月07日(水)
読売新聞
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教会で共同生活 前向きに
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/renai/20091008-OYT8T00312.htm
三段壁をパトロールする白浜レスキューネットワークの
藤藪庸一さん
紀伊半島南西部の和歌山県白浜町。高さ50メートルの岸壁が
太平洋に面する観光名所が「三段壁」だ。
投身自殺を考えて来た人を保護し、再出発を支援する団体がある。
NPO法人「白浜レスキューネットワーク」。
代表の藤藪庸一さんは地元教会の牧師で、
約10年前、前任の牧師から活動を引き継いだ。
岸壁には「白浜いのちの電話((電)0739・43・8981)」
の看板を立て、連絡用の公衆電話も設置してある。
事務所に電話が入ればかけつける。
また、週2回夕方、保健所の精神保健福祉士や町職員、
警察官らと岸壁を見回り、不審な人がいれば声をかける。
昨年までの保護件数は月2、3人だったが、
今年は急増し、3〜7月は月10人前後に上った。
話を聞いて、身よりのない人や事情を抱えた人は、
就職など再出発のメドがつくまで
教会で共同生活してもらっている。
その人数も常時5、6人だったのが、7月には20人まで増え、
今も15人が教会に滞在する。
「部屋が足りず、礼拝堂で寝る人も出る状態」
と藤藪さん。
最近は、死のうとした人ばかりでなく、
最初から助けを求めて来る人もいる。
「いずれにしろ、暮らしに悩む人が増えた」
と思う。
6月、岸壁を見回りに来ていた保健所の精神保健福祉士、
栗田直嗣さんが50歳代の男性に声をかけた。
最初は無視されたが、
「ホテルは」
などと事情を聞くと、
「大阪から飛び込みに来た」
と打ち明けた。
「一晩でもあなたに付き合う」
という栗田さんに説得され、教会に来た。
離婚後、娘らと疎遠になり、会社も人間関係の悪化などから
辞め、孤立し自暴自棄になっていた。
2、3日、教会で過ごすと、
「悩んでいるのは自分だけじゃない」
と気づき、
「もう1回生きてみよう」
と前向きになれた。
地元ホテルの警備の仕事を紹介され、働き始めた。
藤藪さんは、一緒にハローワークに行くなど、職探しも手伝う。
就職後、町内のアパートで自立する人もいる。
また、栗田さんが様子をみて、必要な人には精神科医を紹介する。
藤藪さんらは今年、呼びかけに応え、福井県の東尋坊や
山梨県の樹海などの自殺多発地域で活動する団体で
ネットワークを組み、情報交換を始めた。
藤藪さんは、
「不況の中、多くの人を保護するが、
みんな本当は死にたくないと思っている。
自殺を踏みとどまった人たちの例を元に、
どんな支援ができるのか知恵を絞りたい」
と話す。
読売新聞 2009年10月08日(木)
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
2009(平成21)年10月07日(水)
読売新聞
ホーム>医療と介護>医療>医療ルネサンス>仕事と自殺予防
アルコール依存も危険
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/renai/20091007-OYT8T00254.htm
東京都内のホテルで開かれた全日本断酒連盟の会合で話す
杉江昌夫さん(中央)
「昔は毎朝ビールを飲んで出勤するほどの酒浸り。
仕事や家族関係が成り立たず、自己嫌悪に陥っていた」
という愛知県の建築士、杉江昌夫さん(52)。
2度、自殺未遂の経験がある。
最初は会社員だった26歳の時だ。
アルコール性肝炎で入院。アルコール依存症と指摘され、
一度は飲酒をやめた。
「少しぐらい」
と缶ビールに手を出したのは3か月後。
また酒浸りに戻り、仕事も休みがちで妻ともめた。
「いけないと思いながら、
こんな生活をやめられない俺は死んだ方がいい」
と思い、カッターで手首を切った。
しかし、出血と共に酔いがさめ、
怖くなって自ら救急車を呼んだ。
2度目は翌年だ。家族に言われて依存症専門病院に半年間入院。
退院後は、回復をめざす人が集まる自助組織「断酒会」にも
通い始めた。
腰痛を理由に仕事を休んだ日、
「休んでホッとしている俺はダメ人間」
と思い、処方された睡眠薬などをまとめて飲んで意識を失った。
国の自殺予防総合対策センター自殺実態分析室長の
松本俊彦さん(精神科医)は
「自分の意思で適度に飲酒量を自制できなくなるのが
アルコール依存症。
うつ病のように知られていませんが、自殺の危険要因です」
と指摘する。
アルコールは精神状態を不安定にする。
うつ状態を招いたり、悪化させたりすることがある。
また、思考力が低下し、衝動的な行動を起こしやすくなる。
さらに、失業や家族との離別を招いて生活に困窮し、
精神的に追い込まれていく。
同センターが全国の断酒会員5,422人に行った調査では、
41%が
「本気で死にたい」
と考え、20%に自殺未遂経験があった。
死にたいと思った経験は一般を対象にした
内閣府調査の約2倍だ。
杉江さんも、断酒会が再出発の支えになった。
目を覚ました後、妻に連れられ会合に出ると、
会員約20人が2時間、自分がどうすればいいのか、
話し合ってくれた。
年配の会員には
「飲みたい、死にたいと思ったら俺の所に来い。
まず話そう」
と諭された。
「親身になってくれる仲間のありがたさを痛感し、
初めて、しっかり生きようと思った」。
以来、毎週、体験を語り合い、決意を再確認。
建築士の資格を取り仕事に励み、会の運営にも携わる。
松本さんは
「依存症は常に再発への注意が必要。
病院だけでなく、断酒会の意義は大きい」
と話す。
「全日本断酒連盟」の連絡先は
(電)03・3863・1600。
読売新聞 2009年10月07日(水)