2009(平成21)年07月09日(木)
医療介護CBニュース(キャリアブレイン)
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福祉施設や病院でのボランティア活用のカギは?
https://www.cabrain.net/news/article/newsId/23068.html
ボランティアが運営する陶芸教室や書道教室、納涼会などの
イベント。
こうした取り組みのおかげで、利用者が笑顔を見せてくれる―。
東京都練馬区の練馬ボランティア・市民活動センターなどが
このほど開いた
「福祉施設・病院のためのボランティアマネジメント研修」
で講演した中野区かみさぎ特別養護老人ホームのスタッフの
樋口 実さんは、こう述べた。
特養などの施設でケアを受ける利用者にとって、
施設は生活の場でもあり、QOLの向上は重要だ。
一方、特定非営利活動法人日本ボランティアコーディネーター
協会の後藤麻理子事務局長は、
「ボランティアマネジメント」
がボランティアの活動を成功させるカギだと語った。
■ボランティアの活動がQOLの向上に
かみさぎホームでケアマネジャーとして働く樋口さん。
施設では、「ボランティアコーディネーター」としての役割も持つ。
ボランティアの受け入れやその後のフォロー、
利用者や現場の職員との調整を行っている。
樋口さんによると、かみさぎホームでは7年前からボランティア
を受け入れるようになった。
ボランティアの受け入れに対する理解が職員の間でなかなか
深まらない時期もあったが、
「利用者さんがこんな顔を見せてくれるんです」
という活動の成功事例を積み重ねていくことで、
理解を得たという。
今は施設全体で、
「ボランティアさん『どうぞ、いらっしゃい』
とウェルカムの精神で受け入れている」。
2005年には、ボランティア活動を行うメンバーの集まりで
ある「かみさぎ倶楽部」も発足し、今では倶楽部に登録している
ボランティアは120人に上るという。
ボランティアは陶芸教室などの「趣味・余暇活動」以外にも、
訪問して話をしたり、利用者を近くの公園まで散歩に連れて
行ったりすることもあるという。
洗濯や備品の設置など、職員の仕事をサポートする
ボランティアもいる。
樋口さんは、施設の職員が業務に追われる中、利用者とゆっくり
向き合えるボランティアの存在は大切だと語る。
また、スタッフ以外の人とかかわりを持てることは、
利用者にとって「社会的なつながり」を持つことでもあるという。
病院や福祉施設におけるボランティアの活用をめぐる状況に
ついて、同センターの唐木理恵子さんは、
「医療や介護の現場はどんどん仕事が厳しくなっており、
(患者や利用者との)ゆったりしたかかわり合いの時間が
なくなっている」
として、こうしたボランティアは重要だと話す。
後藤事務局長も、ボランティアの受け入れに関心を持つ
病院や福祉施設が増えていると指摘。
ただ、どうやって受け入れたらいいかが分からず、
「最初の一歩」を踏み出せない施設もあるという。
■ボランティアマネジメントが重要
後藤事務局長は、病院や施設でボランティアを受け入れるときに
重要になるのが「ボランティアマネジメント」だと話す。
「いきなり飛び込みでやって来たボランティアを、
すぐ受け入れるというわけにはいかない。
受け入れる前にすべきことがたくさんある」
と語る。
具体的には、施設や利用者が抱えるニーズを把握し、活動や体制に
ついての計画を立て、職員間で共有することなどが必要だという。
採用時の面談では、ボランティア志望者とコミュニケーションを
取りながら、ボランティアを志望した理由や具体的にやりたい
活動を確認し、施設側の状況を踏まえ活動内容を決めていく。
「面接の場で調整ができるのも、事前に計画を立てて
調整しているから」
で、事前の調整がないと
「現場も混乱する」
と語る。
組織の環境整備も必要だ。
「組織の意思として、ボランティアを積極的に
受け入れようという方針があるのか」
「職員間にボランティアを前向きに受け入れよう
という意識があるのか」
といった面はもちろん、
「ボランティア受け入れの手順やルール、
登録用紙や覚書などが明確になっているか」
といった体制の整備も要る。
活動開始後は、活動内容がそのボランティアに合っているか、
現場で何か問題は生じていないかなど、状況を確認しフォロー
する。
面談時に約束していた活動以外のことをしていたら、
「ちょっと確認しましょう」
と声を掛ける。
ボランティアマネジメントを中心に担うコーディネーターの
役割も重要だ。利用者と職員、ボランティアの3者のニーズが
重なるところを目指して調整し、
「ウィン・ウィン・ウィン」
のプログラムに近づけていくことが大切だという。
■感謝の言葉、惜しみなく伝える
かみさぎホームにおけるボランティアマネジメントでは、
受け入れの最初の時期の対応に特に気を付けていると
樋口さんは話す。
面談では、施設でどんな活動があるかを話すより先に、
まずボランティア志望者がどんなことをしたいと思っている
のかを聞き、利用者や職員のニーズとの調整を図る。
活動を始める時は、ベテランのボランティアメンバーがいる
グループに入れるなど、なじみやすくなるよう気を配る。
樋口さんは
「初めの関係がうまくつくれてしまうと、
その後は大丈夫だということが多い」
と説明する。
かみさぎ倶楽部も、ボランティア受け入れの重要な場だ。
ボランティアの登録時に倶楽部の一員になることで、
「施設を支える仲間」
としての帰属意識が生まれるのだという。
感謝の言葉も「惜しみなく伝えている」。
イベント時の写真をプレゼントしたり、ボランティアと交流した
利用者のその後の様子を伝えたりすることで、ボランティアの
やりがいにつなげている。
ボランティアの長期継続者には、施設長から表彰状を渡している。
今年の5月と6月には、新型インフルエンザの影響を考慮し、
一時ボランティア活動や面会を控えてもらった。
樋口さんは
「こんなに静かになってしまうんだ」
と、あらためてボランティアの重要性を認識したという。
樋口さんは、今年はホーム主催で
「ボランティアへの『感謝祭』も開くつもりだ」
と語った。
キャリアブレイン 2009年07月09日 17時21分