2009(平成21)年06月24日(水)
医療介護CBニュース(キャリアブレイン)
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死因究明のモデル事業、2年間延長を検討
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/22722.html
医療関連死の死因究明や再発防止に役立てることを目的に、
厚生労働省が2005年度から今年度までの予定で実施している
「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」
を、2年間延長する方向で検討していることが6月24日、
明らかになった。
モデル事業の中央事務局長を務める山口 徹・虎の門病院長に
よると、2年間延長する方針は、4月に開かれた同事業の
運営委員会で厚労省側から提案があり、
「基本的に運営委員会では了承した」
という。
モデル事業は、現在は日本内科学会が38学会の支援を受けて
実施しているが、延長後の事業主体については、同学会のほか、
日本外科学会、日本病理学会、日本法医学会の4学会で
近く協議する。
山口氏は
「(モデル事業が終了する)来年3月までには具体的な格好を
決めないといけない」
と話している。
モデル事業では、患者遺族の同意を得た上で、医療機関から
診療行為に関連した死亡の調査依頼を受け付け、診療記録など
の調査や聞き取りを行った後、解剖を行う。
さらに、原因究明や診療行為との関連の評価などに必要な事項
について、臨床面からの調査を行い、「地域評価委員会」が
評価結果報告書を作成。
調査を依頼した医療機関と患者遺族に報告する。
その後、地域から送られてきた同報告書などを基に、
「中央評価委員会」
が再発防止策などを検討、公表する。
事業は現在、10地域で実施されている。
モデル事業は、厚労省の医療安全調査委員会設置法案(仮称)
策定に生かすために事例を重ね、調査や評価などの過程で生じる
課題を明らかにする役割を担っている。
山口氏は
「(死因究明)制度創設に向けた予備事業として始まった
と理解している。制度化が見えた時点からは、
準備事業になる話だと思う」
とした上で、
「モデル事業をやっている方としては、(延長する)2年間で
何とか法案にして制度化が見えるような格好になるもの
だろうと理解している」
と話す。
モデル事業における課題としては、4月の運営委員会で、
▽評価方法の標準化
▽院内調査委員会との円滑な情報交換
▽全国の医療機関に対する再発防止などの提言
−などが挙げられている。
厚労省の佐原康之医療安全推進室長によると、モデル事業の延長
は、これまでに見えてきた課題の解決策を探り、将来的に設置を
想定している医療安全調査委員会(仮称)などの
「公的な第三者機関」
による死因究明や再発防止策の検討に役立てるため。
佐原室長は課題の解決策などについて、
「もう2年くらいで結論を出していける形になれば」
と話している。
また、厚労省案では、医師法第21条を改正し、
医療機関が医療安全調に届け出た場合には、同条の
「異状死」としての警察への届け出を不要とするとしている。
しかし、モデル事業は現行の医師法の下で実施されているため、
調査分析を行う事例が限られている。
山口氏は
「制度化が決まったとしても、医師法21条関連の事例の検討
など、課題はたくさんある」
と指摘している。
更新:2009/06/24 15:16 キャリアブレイン
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
2009(平成21)年06月22日(火)
医療介護CBニュース(キャリアブレイン)
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警察に通知、「故意に近い悪質な医療行為に起因する死亡」−厚労省研究班
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/22674.html
診療行為に関連した死亡の調査分析法などについて、
昨年度から研究を進めている厚生労働省の
「診療行為関連死調査人材育成班」
の研究代表者を務める東京逓信病院の木村哲病院長らは
6月21日、中間報告会を開いた。
この中で、
「届け出等判断等の標準化に関する研究」
のグループリーダーを務める虎の門病院の山口徹院長は、
医療安全調査委員会(仮称)が警察へ通知する範囲について、
「『故意に近い悪質な』医療行為に起因する死亡」
などとした。
冒頭、あいさつした厚労省医療安全推進室の佐原康之室長は、
「(厚労省の)第3次試案、大綱案に批判的な意見の中には、
医療事故の調査と責任追及とは完全に切り離すべきだという
意見がある」
と指摘。
こうした意見に対し、
「医師や看護師という医療のプロとして、実施した医療に対する
責任というものから完全に逃れることはできないのではないか。
プロとしての責任からいたずらに逃れようとすれば、
社会は逆にそれを医療界の無責任と見る。
これでは医療界は社会からの信頼を失ってしまうのではないか」
と反論した。
同時に、
「プロフェッショナルとしての責任が理不尽な方向で追及される
ことは適切ではない」
とも指摘。
日常的に死と隣り合わせの医療における死亡事故の
調査や評価は
「医療者が中心となって、専門的かつ科学的に行われなければ
ならないし、個々の医療現場の状況を十分踏まえたもので
なければならない」
「個人の責任追及を目的とするものではなく、医療の質や
安全の向上に主眼を置いた調査や評価でなければならない」
と述べた。
その上で、佐原氏は
「医療者、患者、法律関係者、さまざまな立場の方が
その垣根を越えて、信頼の上に新しいシステムのできるよう
引き続き努力していきたい」
と語った。
■「著しく無謀な医療」「リピーター医師」など
続いて研究報告が行われ、初めに山口氏が
「医療機関から医療安全調への届出」と
「医療安全調から警察への通知」
の範囲について報告した。
厚労省の第3次試案と大綱案は、医療機関から医療安全調への
届出範囲について、
(1)誤った医療を行ったことが明らかであり、その行った
医療に起因して、患者が死亡した事案
(その行った医療に起因すると疑われるものを含む)
(2)誤った医療を行ったことは明らかではないが、行った医療
に起因して、患者が死亡した事案(行った医療に起因すると
疑われるものを含み、死亡を予期しなかったものに限る)
―のいずれかに該当すると医療機関が判断した場合としている。
口氏のグループでは、これに関連して
「明らかな誤った医療」
「○○に起因する死亡」
「予期された死亡」
について、より具体的な内容を検討した。
その結果、「明らかな誤った医療」を
「判断に医学的専門性を必要としない誤った医療」
と定義。
また、「○○に起因する死亡」については、
「○○によると医学的・合理的に判断できる死亡」
とした。
さらに、死亡が行った医療に起因すると判断する際の
時間的な目安について、
「事例発生後、2週間以内の死亡」
「退院後24時間以内の死亡」とした。
「予期された死亡」については、
「医療行為に伴い一定の確率で発生する事象(いわゆる合併症)
として医学的・合理的に説明できる死亡」
と定義した。
さらに、第3次試案で示された
「医療機関からの届出範囲の流れ図」
を、臨床的思考に沿って再構成した。
一方、医療安全調から警察への通知範囲について、大綱案では
「標準的な医療行為から著しく逸脱した医療に起因する死亡」
としている。
これに対し、同グループでは通知範囲を
「『故意に近い悪質な』医療行為に起因する死亡」とした。
具体的には、
「医学的根拠がない不必要な医療」
や、危険性が少なく、より有効的な選択肢があることを承知の上
で、危険性の極めて高い医療行為を実施するなどした
「著しく無謀な医療」、
致命的となる可能性が高い緊急性の異常に気付きながら、
それに対応する医療行為を行わないなどの
「著しい怠慢」
を挙げた。
また、故意や事実の隠ぺい、診療録などの偽造や変造、
過去に行政処分を受けたのと同じか、類似した医療行為に
起因して患者を死亡させた「リピーター医師」についても、
通知範囲に含めるとした。
一方、悪意によらない通常の過失や、知識不足、不注意などに
よる誤った医療行為については、行政処分で対処するとした。
また、極めて基本的な医学常識の欠如や、非常識な不注意に
よる医療事故の取り扱いについては、今後の検討課題とした。
■診療行為、2つの視点で評価
続いて、
「事例評価法・報告書作成マニュアルに関する研究」
のグループリーダーを務める東大医学部附属病院血管外科の
宮田哲郎准教授が、
「死因究明の評価法について」
と題して、調査結果報告書の作成に係る評価方法などについて
説明した。
このグループでは、2007年度に作成された
「評価に携わる医師等のための評価の視点・判断基準
マニュアル(案)」
の実地検証を
「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」
などで行い、同マニュアルの08年度版を作成した。
宮田氏は報告で、モデル事業で明らかになった調査結果報告書
の作成に当たっての問題点として、診療行為の評価の視点や
基準、道筋などがあると述べた。
診療行為の評価視点は、診療行為の時点においてその行為が
適切であったか否かという評価視点(診療行為の医学的評価)
と、結果から見てどのような対応をすれば死亡を回避できたか
という評価視点(再発防止への提言)の2点に明確に区別する
必要性があるとした。
また、評価の基準となる「標準的医療」については、
▽各学会で示されているガイドライン
▽医師一般に知られている診療方針
▽医療機関の特性によって差のないもの
−としながらも、ガイドラインは柔軟に適応されるべきもので
あり、特定の状況では特殊な診療も適切と認められる場合が
あることなどから、今後も引き続き検討し、明らかにすること
が課題とした。
評価の道筋として宮田氏は、
(1)診断の評価
(2)適応の評価
(3)治療手技の評価
(4)患者管理の評価
(5)システムエラーとしての評価
−が望ましいとした。
また、評価は「何をしたのか」だけでなく、
「何をしなかったのか」についても行い、評価結果が1つに
まとまらない場合は、複数の評価を列挙することを提案した。
具体的に、「適応の評価」では、選択した治療が標準的治療の
範囲に入るかなどの評価を行うが、標準的治療法には幅がある
ため、評価を記載する際は、標準的な対処法が1つしかなかった
と解釈されかねない表現は避けるべきとした。
■第三者機関、早期設立を
また、
「医療の良心を守る市民の会」
の永井裕之代表が、遺族の立場から
「医療に安全文化を」と題した発表を行い、
医療事故調査を実施する第3者機関の早期設立を訴えた。
永井代表は医療機関の医療事故対応について、
「組織防衛に走る」
と批判。
医療者が逃げずに誠意を示すことが重要とし、
患者やその家族への公正な対応を求めた。
また、現在行われているモデル事業について、
「もっと発展させてもいいと思っている」
「展開させることが(第3者機関の実現に)一番早いのでは
ないか」
と述べた。
更新:2009/06/22 22:45 キャリアブレイン