農村の自殺問題/発生防止運動を地域で(日本農業新聞)
[2009年06月14日(Sun)]
2009(平成21)年06月14日(日)
日本農業新聞
トップ>論説
農村の自殺問題/発生防止運動を地域で
http://www.nougyou-shimbun.ne.jp/modules/news1/article.php?storyid=936
警察庁が発表した2008年における自殺の概要によると、
総数3万2,249人のうち、農林漁業者は717人だった。
全体の2%程度を占め、例年の水準で推移している。
特に職業としての農林水産業で自殺が多いわけではない。
しかし、主に農村部では高齢者の自殺率の高いことが定説で
あり、減っていないことをうかがわせる。
政府は06年に自殺対策基本法を制定し、防止活動に取り組んで
いる。実効を上げるために、もう一段の強化を望みたい。
同庁の調べでは、1998年に初めて3万人を超えてから
11年連続で3万人台になっている。
職業別では、無職者が約6割を占め、非雇用者が約3割、
自営業者が約1割という構成になる。
自営業者の中に農林漁業者は含まれる。
より一層、対策の強化が必要になっている。
一方、厚生労働省が5年ごとに発表する都道府県別生命表による
と、2005年の死因別死亡確率で、自殺は男女とも
1位は秋田県であり、男性は2位が青森、3位が岩手、
女性は2位が岩手、3位が富山――で、
豪雪県が上位に名を連ねている。
かつて新潟県東頸城地方は
“世界一の高齢者自殺地域”
と言われた。人口10万人対比の自殺率は400を超えていた。
過疎化高齢化が激しい豪雪地域で、
「自分の家を自分で守れなくなったら死ぬしかないと
考えることは理解できる」
という高齢者の声がある。
だがこの地方は住民や行政が立ち上がり、
10年間で自殺率を100台にまで改善した。
北東北、特に日本海側の農村県・豪雪地帯には自殺に関連する
共通の要因があると考える研究者がいる。
気候的な要因がうつ病的な気分を助長させているのではないか
とする研究もある。
だから秋田県でも青森県でもさまざまな取り組みを進めている。
秋田県の自殺予防対策は、2000年度から本格化した。
県民への啓発から始め、相談窓口の設置など、
心の健康ネットワークづくりを進めてきた。
一方で、市町村の行うきめ細かな対策を重視して支援してきた。
警察庁調査で自殺率が最悪県だったこともあるが、
これらの活動で最悪県を脱した。
国際的に見ると、自殺予防対策でフィンランドが優良事例に
挙げられる。
1980年代に自殺率低下を国家プロジェクトに据え、
約10年で目標の20%削減を達成した。
スウェーデンやオーストラリアなども国策と位置付けて活動して
いる。
自殺という現象をタブー視せず、積極的な対策を打つことの
重要性が内外の事例から分かる。
これまでのところ、わが国の対策は十分とはいえない。
行政の一層の対応を期待すると同時に、
住民自身も対策を考え具体的に活動し、行政を巻き込みつつ、
地域で自殺の発生を防ぐ運動に取り組むべきだ。
日本農業新聞 掲載日:2009-6-14 12:02:00
日本農業新聞
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農村の自殺問題/発生防止運動を地域で
http://www.nougyou-shimbun.ne.jp/modules/news1/article.php?storyid=936
警察庁が発表した2008年における自殺の概要によると、
総数3万2,249人のうち、農林漁業者は717人だった。
全体の2%程度を占め、例年の水準で推移している。
特に職業としての農林水産業で自殺が多いわけではない。
しかし、主に農村部では高齢者の自殺率の高いことが定説で
あり、減っていないことをうかがわせる。
政府は06年に自殺対策基本法を制定し、防止活動に取り組んで
いる。実効を上げるために、もう一段の強化を望みたい。
同庁の調べでは、1998年に初めて3万人を超えてから
11年連続で3万人台になっている。
職業別では、無職者が約6割を占め、非雇用者が約3割、
自営業者が約1割という構成になる。
自営業者の中に農林漁業者は含まれる。
より一層、対策の強化が必要になっている。
一方、厚生労働省が5年ごとに発表する都道府県別生命表による
と、2005年の死因別死亡確率で、自殺は男女とも
1位は秋田県であり、男性は2位が青森、3位が岩手、
女性は2位が岩手、3位が富山――で、
豪雪県が上位に名を連ねている。
かつて新潟県東頸城地方は
“世界一の高齢者自殺地域”
と言われた。人口10万人対比の自殺率は400を超えていた。
過疎化高齢化が激しい豪雪地域で、
「自分の家を自分で守れなくなったら死ぬしかないと
考えることは理解できる」
という高齢者の声がある。
だがこの地方は住民や行政が立ち上がり、
10年間で自殺率を100台にまで改善した。
北東北、特に日本海側の農村県・豪雪地帯には自殺に関連する
共通の要因があると考える研究者がいる。
気候的な要因がうつ病的な気分を助長させているのではないか
とする研究もある。
だから秋田県でも青森県でもさまざまな取り組みを進めている。
秋田県の自殺予防対策は、2000年度から本格化した。
県民への啓発から始め、相談窓口の設置など、
心の健康ネットワークづくりを進めてきた。
一方で、市町村の行うきめ細かな対策を重視して支援してきた。
警察庁調査で自殺率が最悪県だったこともあるが、
これらの活動で最悪県を脱した。
国際的に見ると、自殺予防対策でフィンランドが優良事例に
挙げられる。
1980年代に自殺率低下を国家プロジェクトに据え、
約10年で目標の20%削減を達成した。
スウェーデンやオーストラリアなども国策と位置付けて活動して
いる。
自殺という現象をタブー視せず、積極的な対策を打つことの
重要性が内外の事例から分かる。
これまでのところ、わが国の対策は十分とはいえない。
行政の一層の対応を期待すると同時に、
住民自身も対策を考え具体的に活動し、行政を巻き込みつつ、
地域で自殺の発生を防ぐ運動に取り組むべきだ。
日本農業新聞 掲載日:2009-6-14 12:02:00