【団塊はいま】「幸せな遺影」撮ります(朝日新聞/東京)
[2008年08月23日(Sat)]
008(平成20)年08月23日
朝日新聞
asahi.com>マイタウン>東京>団塊の世代
【団塊はいま】
「幸せな遺影」撮ります
http://mytown.asahi.com/tokyo/news.php?k_id=13000170808250001
「声が聞こえる写真を撮りたい」と語る能津喜代房さん
=中野区本町4丁目の「素顔館」
「見ているだけで声が聞こえるような遺影写真を撮りたい」。
中野区の写真家 能津(の・づ)喜代房(き・よ・ふさ)さん
(59)が、自宅を改造して遺影を撮る写真館を開いた。
もともとは化粧品などの広告写真を38年ほど撮影し、
数々の賞にも輝いてきた気鋭のフリーカメラマン。
「60」という節目の年齢近くになり、
「新たな人生を」
と夢を実現した。
(五十嵐透)
10数年前、妻の父親がなくなり、遺影写真を探すのに苦労した。
「遺影写真を撮りたい」
と思い始めたのは、そのころからだ。
85歳になる父の写真を5年前に撮った。白いあごひげに
にっこりと優しくほほ笑む父の姿。90歳になった今も健在
だが、病気で弱った今の父の姿からは、写真ほどの豊かな表情
は望めないという。
「孫に『おじいちゃんってどんな人だったの』と聞かれたら、
分かるような写真を撮りたい。
私は、父の写真を撮っておいて本当に良かった」。
遺影写真への思いが強くなった。
叔父が新聞社のカメラマン。その影響で報道写真を撮りたいと、
写真を専門にする短大に進学。だが、新聞社には縁がなく、
ぶらぶらしていた。
「何か仕事をしなさい」
と、教授に勧められて資生堂の広告写真の助手に応募。
2年の見習いを経て独立した。
化粧品など商品の撮影に没頭した。仕事は順調で、
港区の麻布十番駅の近くで広告写真の事務所を開設。
月300万円ほど売り上げてきた。
だが、依頼主とは「友達のように」親しくなっても、仕事が
終わるとそれまで。そんな世界を疑問に思うことも。
子供たち3人の独立を機に、
「これからは自分の生き方をしよう」
と決意。今年2月、念願の遺影写真の撮影スタジオ「素顔館」
を自宅1階につくった。
これまでに撮影したのは、30数人ほど。100人の撮影が
終わったら、
「遺影写真の100福展」
と題して個展を開くのが当面の目標だ。
「『遺影』というと、縁起でもないと思うかもしれないが、
家族にとって貴重な写真。『幸福』な写真なんです。
亡くならなくても、部屋に飾ってほしい」
撮影料は、
「年金生活のお年寄りでも出せるお金でやりたい」
と、台紙を含めて3,800円から。
1万円ほどの料金が相場という。
機材の購入費などを考えると、採算は全く合わない。
「がつがつ稼ぐより、いい写真を撮らせてもらって、
お互いに喜び合えたら、こんなにいい人生はないと思う」
スタジオ撮影が難しければ、出張もする。
問い合わせは「素顔館」(電話03・6659・5111)へ。
2008年08月23日
朝日新聞
asahi.com>マイタウン>東京>団塊の世代
【団塊はいま】
「幸せな遺影」撮ります
http://mytown.asahi.com/tokyo/news.php?k_id=13000170808250001
「声が聞こえる写真を撮りたい」と語る能津喜代房さん
=中野区本町4丁目の「素顔館」
「見ているだけで声が聞こえるような遺影写真を撮りたい」。
中野区の写真家 能津(の・づ)喜代房(き・よ・ふさ)さん
(59)が、自宅を改造して遺影を撮る写真館を開いた。
もともとは化粧品などの広告写真を38年ほど撮影し、
数々の賞にも輝いてきた気鋭のフリーカメラマン。
「60」という節目の年齢近くになり、
「新たな人生を」
と夢を実現した。
(五十嵐透)
10数年前、妻の父親がなくなり、遺影写真を探すのに苦労した。
「遺影写真を撮りたい」
と思い始めたのは、そのころからだ。
85歳になる父の写真を5年前に撮った。白いあごひげに
にっこりと優しくほほ笑む父の姿。90歳になった今も健在
だが、病気で弱った今の父の姿からは、写真ほどの豊かな表情
は望めないという。
「孫に『おじいちゃんってどんな人だったの』と聞かれたら、
分かるような写真を撮りたい。
私は、父の写真を撮っておいて本当に良かった」。
遺影写真への思いが強くなった。
叔父が新聞社のカメラマン。その影響で報道写真を撮りたいと、
写真を専門にする短大に進学。だが、新聞社には縁がなく、
ぶらぶらしていた。
「何か仕事をしなさい」
と、教授に勧められて資生堂の広告写真の助手に応募。
2年の見習いを経て独立した。
化粧品など商品の撮影に没頭した。仕事は順調で、
港区の麻布十番駅の近くで広告写真の事務所を開設。
月300万円ほど売り上げてきた。
だが、依頼主とは「友達のように」親しくなっても、仕事が
終わるとそれまで。そんな世界を疑問に思うことも。
子供たち3人の独立を機に、
「これからは自分の生き方をしよう」
と決意。今年2月、念願の遺影写真の撮影スタジオ「素顔館」
を自宅1階につくった。
これまでに撮影したのは、30数人ほど。100人の撮影が
終わったら、
「遺影写真の100福展」
と題して個展を開くのが当面の目標だ。
「『遺影』というと、縁起でもないと思うかもしれないが、
家族にとって貴重な写真。『幸福』な写真なんです。
亡くならなくても、部屋に飾ってほしい」
撮影料は、
「年金生活のお年寄りでも出せるお金でやりたい」
と、台紙を含めて3,800円から。
1万円ほどの料金が相場という。
機材の購入費などを考えると、採算は全く合わない。
「がつがつ稼ぐより、いい写真を撮らせてもらって、
お互いに喜び合えたら、こんなにいい人生はないと思う」
スタジオ撮影が難しければ、出張もする。
問い合わせは「素顔館」(電話03・6659・5111)へ。
2008年08月23日