知られたくない遺族(読売新聞/宮崎)
[2008年07月08日(Tue)]
2008(平成20)年07月08日(火)
読売新聞
ホーム>地域>宮崎>企画・連載
企画・連載
自殺と向き合う
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/miyazaki/feature/miyazaki1218092264157_02/index.htm
厚生労働省の調査によると、県の自殺者数は
1997年から毎年300人を超えている。
昨年の人口10万人当たりの自殺率は34・6人で、
秋田県(37・5人)に次いで全国ワースト2位。
深刻さを増す自殺問題の原因を探り、
防止への取り組みを報告する。
<7>知られたくない遺族
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/miyazaki/feature/miyazaki1218092264157_02/news/20080807-OYT8T00532.htm
◆ 深い苦しみ、支援届きにくく
自殺した女性の父が残したノートには、
父が子どものころの思い出や短歌が記されていた
「自殺で家族を亡くした人はそれを隠したいし、
恥ずかしいって思う」
児湯郡の農業女性(49)は20年前、父親を自殺で亡くした。
以来、抱いてきた気持ちは今も同じだ。
子どもへ残す財産だった杉山を親類に勝手に売却され、
父の人生は狂った。日雇い労働で生計を立てたが、
工具の震動が原因で、手が白くなってしびれる白ろう病を発症。
「誰かにつけられている」
などと口走るようになり、うつ病と診断されて約1年入院し、
女性は見舞いに行った。
ある日、父親から電話があった。ありもしない
財産の話で、女性は
「父ちゃん、そんな財産はないよ」
と答えた。1週間後、父は命を絶った。
「助けてやれなかった。私が父ちゃんを殺した」。
女性は自分を責め続けた。
家族が自殺すると、配偶者や子どもが後を追って
自殺する例は少なくなく、遺族の支援は自殺防止策としても
不可欠だ。1人が自殺すると、その家族や友人、職場の同僚
など5〜10人が深い悲しみや強いショックなど、
何らかの影響を受けると言われている。
年間自殺者数が10年以上300人を超える県では、
毎年1500〜3000人が影響を受けていることになる。
昨年5月、借金を重ねて母親(当時54)が自殺した
小林市の男性(35)は、布団に入ると、母親の死に顔が
頭に浮かんで消えなかった。
「なぜ、借金のことをもっと早く話して
くれなかったのだろう」。
眠れない日々が2か月ほど続いた。
こうした人々への支援は遅れている。関係者は
「遺族が家族の自殺を隠すことで、
支援を難しくしている」
と口をそろえる。
小林保健所は昨年6月、毎月第4土曜に
「遺族の集い」を始めた。これまで13回開いたが、
うち11回は1人も参加せず、参加者はわずか2人。
近所や知り合いの目が気になり、わざわざ
福岡の「集い」に参加している人もいるという。
宮崎市のNPO法人
「国際ビフレンダーズ 宮崎自殺防止センター」
も宮崎市で偶数月の第2土曜日に遺族の会合を
開いているが、参加者は毎回数人で、
ほとんど同じ顔ぶれだという。
長崎県大村市のNPO法人
「自死遺族支援ネットワークRe」
の月1回の「集い」には、平均5人が参加する。
山内賢司副代表は
「集いに参加できるまでに要する時間は人によって違う。
参加できなくても語り合える場があるというだけで、
支えになるはず」
と、長期的視点に立った活動が必要だと指摘する。
児湯郡の農業女性は昨年末、宮崎自殺防止センター
の集いに参加した。
「自分のせいで父が亡くなった」。
女性は、今までだれにも話せなかった思いをはき出した。
この時、父親を亡くした20歳代の男性がやはり、
「自分を責めた」
と聞いて救われた。
「家族の自殺は、残された遺族にとって、
想像を絶するつらさなのです。
でも、だれかに話を聞いてもらうことで、
立ち直るきっかけになることもある」
女性は、大切な人や家族を自殺で失った人への
理解と支援を社会に求めた。
(おわり。この連載は毛利雅史、坂田元司が担当しました)
(2008年7月8日 読売新聞)
読売新聞
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自殺と向き合う
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/miyazaki/feature/miyazaki1218092264157_02/index.htm
厚生労働省の調査によると、県の自殺者数は
1997年から毎年300人を超えている。
昨年の人口10万人当たりの自殺率は34・6人で、
秋田県(37・5人)に次いで全国ワースト2位。
深刻さを増す自殺問題の原因を探り、
防止への取り組みを報告する。
<7>知られたくない遺族
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/miyazaki/feature/miyazaki1218092264157_02/news/20080807-OYT8T00532.htm
◆ 深い苦しみ、支援届きにくく
自殺した女性の父が残したノートには、
父が子どものころの思い出や短歌が記されていた
「自殺で家族を亡くした人はそれを隠したいし、
恥ずかしいって思う」
児湯郡の農業女性(49)は20年前、父親を自殺で亡くした。
以来、抱いてきた気持ちは今も同じだ。
子どもへ残す財産だった杉山を親類に勝手に売却され、
父の人生は狂った。日雇い労働で生計を立てたが、
工具の震動が原因で、手が白くなってしびれる白ろう病を発症。
「誰かにつけられている」
などと口走るようになり、うつ病と診断されて約1年入院し、
女性は見舞いに行った。
ある日、父親から電話があった。ありもしない
財産の話で、女性は
「父ちゃん、そんな財産はないよ」
と答えた。1週間後、父は命を絶った。
「助けてやれなかった。私が父ちゃんを殺した」。
女性は自分を責め続けた。
家族が自殺すると、配偶者や子どもが後を追って
自殺する例は少なくなく、遺族の支援は自殺防止策としても
不可欠だ。1人が自殺すると、その家族や友人、職場の同僚
など5〜10人が深い悲しみや強いショックなど、
何らかの影響を受けると言われている。
年間自殺者数が10年以上300人を超える県では、
毎年1500〜3000人が影響を受けていることになる。
昨年5月、借金を重ねて母親(当時54)が自殺した
小林市の男性(35)は、布団に入ると、母親の死に顔が
頭に浮かんで消えなかった。
「なぜ、借金のことをもっと早く話して
くれなかったのだろう」。
眠れない日々が2か月ほど続いた。
こうした人々への支援は遅れている。関係者は
「遺族が家族の自殺を隠すことで、
支援を難しくしている」
と口をそろえる。
小林保健所は昨年6月、毎月第4土曜に
「遺族の集い」を始めた。これまで13回開いたが、
うち11回は1人も参加せず、参加者はわずか2人。
近所や知り合いの目が気になり、わざわざ
福岡の「集い」に参加している人もいるという。
宮崎市のNPO法人
「国際ビフレンダーズ 宮崎自殺防止センター」
も宮崎市で偶数月の第2土曜日に遺族の会合を
開いているが、参加者は毎回数人で、
ほとんど同じ顔ぶれだという。
長崎県大村市のNPO法人
「自死遺族支援ネットワークRe」
の月1回の「集い」には、平均5人が参加する。
山内賢司副代表は
「集いに参加できるまでに要する時間は人によって違う。
参加できなくても語り合える場があるというだけで、
支えになるはず」
と、長期的視点に立った活動が必要だと指摘する。
児湯郡の農業女性は昨年末、宮崎自殺防止センター
の集いに参加した。
「自分のせいで父が亡くなった」。
女性は、今までだれにも話せなかった思いをはき出した。
この時、父親を亡くした20歳代の男性がやはり、
「自分を責めた」
と聞いて救われた。
「家族の自殺は、残された遺族にとって、
想像を絶するつらさなのです。
でも、だれかに話を聞いてもらうことで、
立ち直るきっかけになることもある」
女性は、大切な人や家族を自殺で失った人への
理解と支援を社会に求めた。
(おわり。この連載は毛利雅史、坂田元司が担当しました)
(2008年7月8日 読売新聞)