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語る:よしもとばななさん 『彼女について』を刊行(毎日新聞) [2008年12月09日(Tue)]
2008(平成20)年12月08日(月) 
毎日新聞 東京朝刊
トップ>エンターテインメント>芸術・文化

語る:よしもとばななさん 『彼女について』を刊行
http://mainichi.jp/enta/art/news/20081208ddm014070026000c.html

◇ 魂はいかにして救済されるのか
よしもとばななさんの書き下ろし長編小説
『彼女について』(文芸春秋)
が刊行された。
20代後半の女性が幼なじみのいとこと過去へさかのぼる
旅に出るファンタジー。
親による子殺しが頻発する暗い時代に、私たちはどうやって
生を慈しめばいいのだろうか。
よしもとさんに語ってもらった。
【米本浩二】

<「なにか手伝えることがあると思って来ました」>。
秋の夕方、東京のボロアパートに逼塞(ひっそく)する
二日酔いの「私」由美子を、突然いとこの昇一が訪ねてきて、
物語は動き始める。

2人が対面するのは小学校入学前に一緒に遊んで以来。
全く別の人生を歩んできたが、由美子の母の凶行という
禍々(まがまが)しい過去を共有している。
2人は、これまでの人生を確かめる旅に出る。

「いとこ同士だから逆に気楽さがある。
兄弟でも恋人でもないのに、即、親しい。
彼女の中には(母の暴力を免れた)彼に対する
憎しみとねたみが眠っているのかもしれません」。
よしもとさんは淡々と話す。

2人の母親は双子の姉妹である。
姉妹の母、由美子の祖母はイタリアの魔女の学校で
認定された白魔女。
姉妹は自分たちの母親が主宰する降霊会で集団自殺を目撃し、
心に傷を負う。
成人した姉妹は神秘的な力を手に入れるとともに
ビジネスに精を出す。
ところが、魔的なものに過剰に没入した結果、
由美子の母は由美子の父を殺害して自殺するという
悲劇を引き起こす。

魔女、という非日常的で現実離れした言葉にひいてしまう
読者がいるかもしれない。
しかし、この作品における「魔女」とは、純粋な生を追求
するあまり、内にわきおこるエネルギーを持てあまし、
つい常識の軌道を外れてしまった人々の謂(い)いである。
だれもが魔女になる可能性がある、というわけだ。

由美子の母親の名前は読者にはついに知らされない。
「だれも名前で呼んでいないのです。
みんなが気軽に名前を呼べる人ではなかった。
それは書いていて意識しましたね」

彼女の匿名性は、台風の目のような不気味な空白を感じさせる。
その空白は埋められないまま、やがて、物語を根本から転覆させる
驚天動地の事実が明らかになる。
読者は、物語を読み進みながら、背筋が凍る体験を味わう。

今回の作品はダリオ・アルジェントの映画『トラウマ』
をベースにしたという。
現実と幻想が交錯して不思議な生のリアリティーを醸し出す
映画に加え、秋田県の連続児童殺害事件も頭から去らなかった
らしい。

「映画のノベライズ(小説化)のようなことをやるつもりでした。
そんな時、秋田の事件が起きた。
母親が幼いわが子や近所の子を手にかけた。痛ましい事件でした。
劇作家の山崎哲さんは実名でお芝居にしたが、私はファンタジーに
して書こうと思った」

よしもとさん自身の妊娠、出産の経験も作品に反映している。
「書いている間、精神的に厳しかった。自分はプロだし、
切り替えられると思ったけど、苦しかったですね。
日常的に子供と接しているから書けた部分もあります」

ファンタジーを書くとは、よしもとさんにとって日常の禁忌の領域に
入りこみ、その世界に対して、日常的なまなざしで光をあてること
なのかもしれない。
単なるリアリズムでは拾いきれない、未知の領域に
果敢に踏み込む方法なのだ。

「双子を出すと、ファンタジー性が高まり、いろんなことが
やりやすくなる。ただし、三軒茶屋という地名とか、実在のコーヒー店を
出すなど現実と接続しています。私の読者は現実的な生々しさに弱い人が
多いから寓話(ぐうわ)的なものを常に書くようにしている」

明日のピクニックを思って浮き立つ気持ち。
旅の途中で由美子は天啓を受けたような喜びを覚える。

<「ピクニックそのものよりも、そのイメージで人は活気づくんですね。
イメージが全(すべ)てなんだ」>

夢でも実際に生きた体験のように感じるなら、それは現実と同じでは
ないのか。
幼いころに思わぬ受難にあったヒロインにとって、生と死をめぐる
起死回生の思想というべきか。

<「でも、イメージ以上のものを知るには、今の瞬間にぐっと
参加することしかないんだ」>

そして、その夢をリアルに生きるなら、現実を生きるのと
何ら変わることはない、という発見が由美子を励ます。
車の心地よい揺れ、自分たちでいれるコーヒーやお茶の出来に
陶然とした、あの充実した瞬間。幻であるわけがない。

巻末近くの由美子とおばさん(昇一の母)との対話が感動的だ。
慈愛に満ちたおばさんのまなざしに読者も深く安堵(あんど)する。
そのおばさんが双子である由美子の母とそっくりだという事実も、
読み手を不思議な感銘に誘う。
生と死、現実と夢、善と悪が反転するダイナミズム。
「ラストでほっとしてもらえるとうれしいです」
と作家ははにかんだ。

◇ 理屈を削るのが小説
小説を書く時、一番大事にしていることは何か尋ねると、
すぐに
「思っていないことを書かないこと」
と答えが返ってきた。

「調子が悪いと理屈っぽくなるのです。疲労がたまって、
ちょっと気を抜くと、すぐそうなる。自分で点数つけて、
添削します。一番理屈っぽいところから減らす作業をします」

「理屈っぽい」とはどういうこと?

「自分の結論を書いてしまいそうになるのです。
結論を言葉にするのは小説で一番つまらない。
赤ペン先生のように推敲(すいこう)の時に気をつけています。
エッセイストとの大きな差ではないでしょうか」

=「語る」は随時掲載します。

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■ 人物略歴

1964年、東京生まれ。87年に『キッチン』でデビュー。
代表作に『TUGUMI』『王国』『イルカ』など。
海外での翻訳も多く、国際的に高い評価を受けている。

毎日新聞 2008年12月08日 東京朝刊

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