【自殺考 被災地から(2)】折れる心 自殺を決める「使命の有無」(MSN産経)
[2012年04月30日(Mon)]
2012(平成24)年04月28日(土)
MSN産経ニュース west
トップ>できごと>ニュース
【自殺考 被災地から(2)】
折れる心 自殺を決める「使命の有無」
http://sankei.jp.msn.com/west/west_affairs/news/120428/waf12042812000013-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/west/west_affairs/news/120428/waf12042812000013-n2.htm
http://sankei.jp.msn.com/west/west_affairs/news/120428/waf12042812000013-n2.htm
■家計簿に記されていた“絶望”
震災から5カ月あまりたった8月20日。
海に身を沈めた女性は、日記代わりにしていた
家計簿に、こんな言葉を書き付けていた。
「子供の能力しかなくなった。
本当に長い間お世話になりました。
ごめんなさい。
片付けもできなくなり 子供になりました。」
○
妻の行方が分からなくなって心配した夫が、
妻の枕元に置かれていた家計簿で、
この走り書きを見つけた。
その文字は震えるようなつたない筆跡で、
家計簿の上下を逆さにして書かれていた。
自宅にいた義父を津波で亡くし、
親友やいとこも失いながら、
避難所でも仮設住宅に移ってからも、
忙しく動き回っていた女性。
とくにお盆は自宅に訪ねてくる親類のための応対に追われ、
多忙を極めた。
その反動か、お盆が過ぎると、
夕食を作る気力もなくなっていたという。
そんな妻に夫は
「適当に食べるから気にするな。」
と声をかけていた。
「彼女はまじめで責任感があり、
家事などを忠実にこなしてきたタイプでしょう。」
精神科医の片田珠美さんはこう分析する。
「お世話をしていた義父を失い、助けられなかったことに
罪悪感を感じていたのでしょう。
また主婦として、料理や掃除の役目を
きちんと果たせなくなったことで、
『自分は存在価値がない。』
と思うようになってしまったのではないでしょうか。」
東日本大震災から1年を迎えた今年3月11日、
思い思いのメッセージが書かれたキャンドルライトが
灯された。=岩手県釜石市(頼光和弘撮影)
○
■「眠れない…」それは前兆だった
避難所で「眠れない」などと体調の不良を訴えた女性に対し、
看護師や医師は、女性を別のスペースで生活させるなどの
措置をとり、女性は一時的に回復した。
仮設住宅に移ってからも、避難所にいるときから
みてもらっていた看護師が定期的に訪問していた。
亡くなる2日前にも、看護師が面談に訪れ、
様子を確認していた。
○
しかし、夫には今も心に引っかかる出来事がある。
仮設住宅に移ってから妻の状態が再び悪化した際、
精神的な治療を受けようと、避難所で受診した
医師のもとへ妻を連れて行った。ところが−。
「『熱があるからうちでは診られない。』
と言われたんです。
ほかの病院に連れて行っても同じこと言われて、
仕方ないから内科で熱冷ましもらって帰った。
もっとちゃんと心のケアが受けられていたらなあ。
『ストレス病』なんて、おれは知らないもの。」
■混乱収まるにつれ増す危険
大津波を生き延びた被災者に襲いかかる
さまざまなストレス。
とくに大事な人を失った被災者の心の負担は計り知れない。
「ただ、意外に思われるかもしれませんが、
震災から1年、少なくとも岩手県では、
自殺は前年に比べて減少しています。」
そう話すのは、岩手県障がい保健福祉課で
自殺総合対策にあたる小川修特命課長。
岩手県が公表した昨年3月から今年1月までの自殺者数は、
大船渡、釜石、宮古、岩泉、久慈の沿岸5署管内で83人。
前年同期と比べると15人少なかったという。
内閣府の統計では、福島、宮城両県でも、
自殺者は前年を下回っている。
○
片田さんによると、大規模災害の発生直後は、
命が助かったことへの感謝や生きることへの使命感から、
自殺は減少する傾向にあるのだそうだ。
「ですが、災害発生後の混乱が落ち着いてくると、
気分の落ち込みから鬱状態になる人も増えてくる。
がれきの処理も進まず、目に見える形で
復興が進まない状況では今後、
傾向が悪化する恐れがある。」
と片田さんは警告する。
○
震災から1年が過ぎた被災地。
長引く仮設住宅での暮らしは、
新たに孤独死やアルコール依存の問題を増加させる
おそれがある。
これらを「消極的な自殺」と表現する精神科医もいる。
長期的な継続性が必要といわれる心のサポートは、
まだ始まったばかりだ。
(佐々木 詩)
=次回は4月29日(日)に掲載
MSN産経ニュースwest
2012年04月28日(土)12時00分
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折れる心 自殺を決める「使命の有無」
http://sankei.jp.msn.com/west/west_affairs/news/120428/waf12042812000013-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/west/west_affairs/news/120428/waf12042812000013-n2.htm
http://sankei.jp.msn.com/west/west_affairs/news/120428/waf12042812000013-n2.htm
■家計簿に記されていた“絶望”
震災から5カ月あまりたった8月20日。
海に身を沈めた女性は、日記代わりにしていた
家計簿に、こんな言葉を書き付けていた。
「子供の能力しかなくなった。
本当に長い間お世話になりました。
ごめんなさい。
片付けもできなくなり 子供になりました。」
○
妻の行方が分からなくなって心配した夫が、
妻の枕元に置かれていた家計簿で、
この走り書きを見つけた。
その文字は震えるようなつたない筆跡で、
家計簿の上下を逆さにして書かれていた。
自宅にいた義父を津波で亡くし、
親友やいとこも失いながら、
避難所でも仮設住宅に移ってからも、
忙しく動き回っていた女性。
とくにお盆は自宅に訪ねてくる親類のための応対に追われ、
多忙を極めた。
その反動か、お盆が過ぎると、
夕食を作る気力もなくなっていたという。
そんな妻に夫は
「適当に食べるから気にするな。」
と声をかけていた。
「彼女はまじめで責任感があり、
家事などを忠実にこなしてきたタイプでしょう。」
精神科医の片田珠美さんはこう分析する。
「お世話をしていた義父を失い、助けられなかったことに
罪悪感を感じていたのでしょう。
また主婦として、料理や掃除の役目を
きちんと果たせなくなったことで、
『自分は存在価値がない。』
と思うようになってしまったのではないでしょうか。」
東日本大震災から1年を迎えた今年3月11日、
思い思いのメッセージが書かれたキャンドルライトが
灯された。=岩手県釜石市(頼光和弘撮影)
○
■「眠れない…」それは前兆だった
避難所で「眠れない」などと体調の不良を訴えた女性に対し、
看護師や医師は、女性を別のスペースで生活させるなどの
措置をとり、女性は一時的に回復した。
仮設住宅に移ってからも、避難所にいるときから
みてもらっていた看護師が定期的に訪問していた。
亡くなる2日前にも、看護師が面談に訪れ、
様子を確認していた。
○
しかし、夫には今も心に引っかかる出来事がある。
仮設住宅に移ってから妻の状態が再び悪化した際、
精神的な治療を受けようと、避難所で受診した
医師のもとへ妻を連れて行った。ところが−。
「『熱があるからうちでは診られない。』
と言われたんです。
ほかの病院に連れて行っても同じこと言われて、
仕方ないから内科で熱冷ましもらって帰った。
もっとちゃんと心のケアが受けられていたらなあ。
『ストレス病』なんて、おれは知らないもの。」
■混乱収まるにつれ増す危険
大津波を生き延びた被災者に襲いかかる
さまざまなストレス。
とくに大事な人を失った被災者の心の負担は計り知れない。
「ただ、意外に思われるかもしれませんが、
震災から1年、少なくとも岩手県では、
自殺は前年に比べて減少しています。」
そう話すのは、岩手県障がい保健福祉課で
自殺総合対策にあたる小川修特命課長。
岩手県が公表した昨年3月から今年1月までの自殺者数は、
大船渡、釜石、宮古、岩泉、久慈の沿岸5署管内で83人。
前年同期と比べると15人少なかったという。
内閣府の統計では、福島、宮城両県でも、
自殺者は前年を下回っている。
○
片田さんによると、大規模災害の発生直後は、
命が助かったことへの感謝や生きることへの使命感から、
自殺は減少する傾向にあるのだそうだ。
「ですが、災害発生後の混乱が落ち着いてくると、
気分の落ち込みから鬱状態になる人も増えてくる。
がれきの処理も進まず、目に見える形で
復興が進まない状況では今後、
傾向が悪化する恐れがある。」
と片田さんは警告する。
○
震災から1年が過ぎた被災地。
長引く仮設住宅での暮らしは、
新たに孤独死やアルコール依存の問題を増加させる
おそれがある。
これらを「消極的な自殺」と表現する精神科医もいる。
長期的な継続性が必要といわれる心のサポートは、
まだ始まったばかりだ。
(佐々木 詩)
=次回は4月29日(日)に掲載
MSN産経ニュースwest
2012年04月28日(土)12時00分



