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NPO法人国際ビフレンダーズ 宮崎自殺防止
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いろいろと勉強中です。

なお、このブログは、自死等の相談に応じるものではありません。


NPO法人宮崎自殺防止センター
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自殺大国ニッポン、どうしたら悲劇を減らせるのか(日経ビジネスオンライン) [2012年03月28日(Wed)]
2012(平成24)年03月28日(水)
日経ビジネスオンライン
総合トップ> 経営・マネジメント > 「気鋭の論点」

自殺大国ニッポン、どうしたら悲劇を減らせるのか
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20120322/230124/?bv_ru&rt=nocnt
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20120322/230124/?P=2
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20120322/230124/?P=3
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20120322/230124/?P=4

■経済学から考える「自殺のインセンティブ」軽減の処方箋

澤田 康幸  【プロフィール】
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20120322/230124/?bv_ru&rt=nocnt#author_profile_tag

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澤田 康幸(さわだ・やすゆき)
1990年慶応大学経済学部卒業。大阪大学大学院・
東京大学大学院を経て99年米スタンフォード大学経済学部
博士課程修了(Ph.D.)。

同年より東京大学助教授・准教授を経て、
現在同大学経済学研究科教授。
2009年円城寺次郎賞、2011年石川賞受賞。
現在、JICA研究所客員研究員、バングラデシュBRAC訪問研究員、
2012年4月からスタンフォード大学SCID客員教授を兼務。

専攻は開発経済学・応用ミクロ計量経済学。
自殺問題に関する主な論文に
“Socio-Economic Studies on Suicide: A Survey,” Journal of Economic Surveys 26(2),
2012年(共著)、『現代経済学の潮流2012』
(東洋経済新報社、近刊)の「自殺対策の経済学」。

■「気鋭の論点」

経済学の最新知識を分かりやすく解説するコラムです。
執筆者は、研究の一線で活躍する気鋭の若手経済学者たち。
それぞれのテーマの中には一見難しい理論に見えるものも
ありますが、私たちの仕事や暮らしを考える上で役立つ
身近なテーマもたくさんあります。
意外なところに経済学が生かされていることも
分かるはずです。



以前、東北大学の北川章臣教授からご教示いただいたのだが、
今昔物語に「御読経の僧が平茸にあたる話」というのがある。

僧が平茸にあたって亡くなってしまったところ、
左大臣が同情して手厚く葬った。それを聞いた他の僧が
一生懸命に平茸を食っている。

「なぜそんな危ないことをするのか。」
と聞いてみると、
「手厚く葬ってもらいたくて
 平茸にあたって死のうと思った。」
という話である。

何百年も前の書物に、自殺の経済インセンティブ(動機)
に関わる記述が残っていることに驚く。

この僧に
「そんな危ないことはおやめなさい。」
と言うべきなのだろうか?。

そうだとすれば、その根拠はどこにあるのだろうか?
そして、どうすれば自殺を抑止することができるのだろうか?
今回はこれらの点について考えてみたい。

言うまでもなく今の日本において
自殺は最も深刻な社会問題の1つだ。
そこでは、3つの特徴を挙げることができる。

■13年間、毎日90人が自殺している国

第1に、1997年から98年にかけての「急増」、
第2に、1998年から13年間にわたり
年間の自殺者数が3万人を超えるという「恒常性」、
第3に、自殺者の「若年化」だ。

警察統計によると、2011年の日本の全自殺者数は
3万651人であり、13年間、毎日およそ90人もの人々が
自殺していることになる。

そうした問題から、2006年に自殺対策基本法が成立し、
さまざまな自殺防止の取り組みが始まった。

では、そもそもなぜ自殺「対策」が必要なのだろうか。
宗教的な立場から自殺を禁じることに対し、
16−17世紀の詩人ジョン・ダンは
自殺を弁護する理論を展開した。

また、現代でも自殺は個人の自由であるとする考え方も根強い。
日本では、新渡戸稲造著(矢内原忠雄訳・岩波文庫)
『武士道』第12章「自殺および復仇の制度」にも
表れているように、伝統的には切腹を正当化する考え方があり、
神風特別攻撃隊のように自殺を賛美する考え方さえもあった。

そうだとすれば、一体なぜ自殺を食い止めるための
「対策」が必要なのだろうか。

自殺「対策」が必要と考えられる理由として、
第1に自殺が大きな「負の外部性」を生み出すことがある。
その1つとして、著名人の自殺など自殺報道によって
誘発される後追い自殺のことを「ウェルテル効果」と
呼んでおり、韓国ではそうした効果を
統計的に見出だした研究結果もある。

ここでは、自殺が同時に遺族を生みだし、
遺族に対して及ぼす深刻な心理的精神的影響・経済的な
「負の外部性」を生み出す点に注目したい。



自死遺族についての公式統計は存在しないが、
我々の研究グループは、自死遺族を一親等に
兄弟姉妹数を加えた範囲に限り、日本における推計を試みた。

2006年時点では、自殺者1人当たり4.78人の遺族が存在し、
親を自殺で失った未成年者である自死遺児は
およそ8万6,230人いると考えられ、
自死遺族全体の総数は約292万人〜346万人にも上る。

この推計に基づけば、日本の人口当たり
およそ37人〜44人に1人が遺族ということになり、
より広い親族・友人・同僚・近隣住民などを含めると
国民全体にかなりの規模で負の外部性を生み出している。

■鉄道自殺で乗客が被った機会費用は8,900万円

また、鉄道自殺によって生み出される負の外部性もある。
日本では、鉄道自殺は大きな社会問題の1つになっており、
その数は近年増加傾向にある。

国土交通省の調査によると、首都圏における
30分以上1時間未満の鉄道遅延の理由のうち
61%が自殺によるものであり、それによって
乗客がこうむった機会費用を試算すると、
1件当たりの自殺のコストは平均して
8,900万円もの高額に上っているということである。

第2に、「市場の不完全性」が自殺を促進している
可能性があることも自殺対策の根拠となり得る。

まず、信用市場の不完全性が
自殺の問題と関連している可能性がある。

具体的には、日本の中小零細企業・自営業の融資における
連帯保証人制度である。

この制度は資金繰りに困った経営者の流動性制約を緩和し、
無担保融資における逆選択(リスクの高い人ほど
借り手として残ってしまう問題)や
モラルハザード(借りた後に使途がチェックされず、
返済が滞ってしまう問題)、
戦略的な債務不履行の被害を軽減する
優れた仕組みであると言うこともできる。

しかしながら我々の研究によれば、
事後的に「悪い状況」が起こった場合、
主債務者に対して重すぎる負担がもたらされ、
事実上の無限責任となるため、
主務者が自殺してしまう理論的可能性がある。

そうした「特異」な契約形態が、ある状況下で、
かなりの程度必然的に自殺を誘発し得るということであれば、
契約形態のあり方を再検討すべきであろう。

もう1つの事例が、消費者金融の団体生命保険である。
これは、流動性制約、つまりは資金不足に直面している
借り手に対する、融資契約と生命保険契約が相互に関連しあう
「インターリンケージ契約」として解釈することができる。

こうした契約のインターリンケージは、
一般に市場の不完全性によるインセンティブの歪みを
是正する仕組みであるとも言える。

しかし消費者信用団体生命保険は、
債務者の流動性制約を緩和すると同時に、
債務返済のために自殺するインセンティブを高める可能性が
ある契約であり、望ましい契約形態とは言い切れない。

金融庁の調査結果によると、
死因が自殺と判明したものについての保険金支払いは、
大手消費者金融5社について
2003年43億円、
2004年度38億円、
2005年度30億円となっている。

17社合計でみると2005年度には43億円にも上る。



■保険金全支払いのうち10%が自殺関連死

自殺の理由が信用市場に由来する不完全性にあるとすれば、
自殺対策の観点から、これらの「特異な」契約を用いるのでは
なく、そもそもの資金市場の不完全性を直接是正する
他の手段を用いることが求められる。

自殺対策が必要な第3理由は、
自殺することで便益が得られることが、
自殺の経済的動機付けになっている可能性だ。

冒頭の今昔物語にみられていたが、
現代も生命保険の文脈で議論されるべきである。

日本では、民間の 生命保険金は自殺免責期間が
経過した後であれば自殺に対しても支払われる。

ある大手生命保険会社で支払われた自殺関連の保険金は
1995年から2004年までに50%増加し、
保険金の全支払いのうちの10%が
自殺関連死に対して支払われているとする報告もある。

そして、日本の大手生命保険会社の自殺免責期間は
1999年までは1年間、
2000年から2年間、
2005年以降は3年間と延長されてきた。

経済協力開発機構(OECD)加盟諸国のデータを用いて
自殺と保険契約の関係を論じた我々の研究でも、
生命保険契約が生み出す自殺の経済インセンティブの問題、
生命保険市場における逆選択とモラルハザードの問題が
示されている。

しかしながら、そもそも生命保険契約は死因はどうあれ、
死亡者の遺族などが経済的に困窮するリスクを
削減するための仕組みであり、そうした契約が
他方で自殺の動機付けになっているとすれば、
根本的な対策を講じることは難しいかもしれない。

いずれにしても、これらの分析結果は、
市場の機能を補完してきた、
現在の連帯保証人制度や保険契約の在り方を、
今一度自殺対策という観点から再考する必要性を示している。

とはいえ、仮にこれらの制度がなかったとすると、
より悪い事態に陥っていた可能性も排除できず、
これらの制度が自殺という不幸な帰結につながってしまう
事態との比較衡量が必要となってくる。

こうした制度・契約の是非を評価するためには、
実態を詳細に捉えた質の高いエビデンス(証拠)が
不可欠である。



■国の自殺対策は緒に就いたばかり

それでは、自殺対策はどうあるべきだろうか。
OECD加盟21か国の1980〜2004年をカバーした
松林哲也氏と上田路子氏の論文
(「Social Science and Medicine」、 2011年)によれば、
国レベルの自殺対策は、国全体の自殺率を有意に低下させる。

平均値で評価すると、
10万人当たり平均自殺人数20.9人に対して、
国の対策が平均して1.38人の自殺を低下させる。

こうした国レベルの自殺対策が効果を挙げた
代表例がフィンランドである。

他方、日本では2006年10月に自殺対策基本法が施行され、
既に5年が経過しているが、松林氏と上田氏が発見したような
平均効果が日本でも表れているとは言い難い。

なぜなら、この平均効果が当てはまるとすれば、
日本の自殺者数は年間1,766人(= 1.38×1,280)という
規模で減っているはずであり、年間の自殺者数が
3万人を超えるという「恒常性」が
大きく改善の方向に向かっていたはずだからである。

つまり、日本の自殺の傾向は他のOECD加盟諸国から見ると
異質であるということができ、
国の施策に加えて、よりきめ細やかなミクロレベルでの
自殺対策を緊急に強化する必要がある。



ミクロレベルでの自殺対策については、
自治体での徹底した自殺対策の実施が不可欠である。

例えばうつ病の早期発見、ハローワークによる失業対策や
事業再生の支援、多重債務や連帯保証人問題解決のための
法律相談などの実施が必要だ。

その実現には医療従事者・法律の専門家・ソーシャルワーカー
や市民活動グループと行政との横の連携も必要で、
多方面にわたる課題がある。

とは言うものの、どのような対策が
どの程度自殺の防止に役立ったのかについて、
厳密に検証された例はほとんどない。

我々の研究グループでは、詳細な統計分析から、
鉄道自殺を抑止するためには青色灯に効果があることを
見出しているが、今後はこうした緻密な政策研究も
合わせて蓄積していく必要がある。



■経済学の精緻な分析を自殺対策に生かせ

日本では2006年10月自殺対策基本法が施行され、
様々な仕組みを通じた自殺対策が始まっているが、
こうした動きは緒についたばかりだ。

有効な自殺対策のためには、自治体・地域レベルでの
対策の強化が求められており、そうした施策を
バックアップするための資金面での制度構築、
対策の中心となる人材の養成が不可欠である。

地域レベルでの対策では、自殺の直接の原因として
深刻となっているうつ病に対する医療面での対策のみならず、
その背後にあり得る雇用問題・債務や事業資金繰りの問題
などの経済問題対策、そうした対策を実施するための
法律相談など、異なる分野を横断した連携が求められる。

こうした連携では、東京・足立区の都市型自殺対策である
「生きる支援」 など、自治体が中核となった
官民連携の注目すべき自殺対策の事例もある。

こうした連携の中核になる主体として、
地域のプライマリーケアを担うと今後期待されている
「家庭医」の役割を積極的に考えていく可能性も
あるかもしれない。



いずれにしても有効な自殺対策をするためには、
エビデンスに基づいた政策の設計と評価が欠かせない。

警察などが保有する個別の自殺統計を、
個人情報の取り扱いについて最大限に配慮しつつも
詳細に分析し、得られた知見を今後の
自殺予防対策に役立てていくことが不可欠である。

アカデミア、特にミクロデータを用いた実証経済学は、
こうした自殺対策の立案・実施の前提となるような
質の高いエビデンスを積み上げるという、
重要な役割を果たし得る。

また経済分析に携わる研究者がそうしたエビデンスを基に、
国や自治体の政策担当者と自殺対策をしている
様々な民間団体の間をつなぐこともできる。

とりわけ経済学者は、医療・雇用・債務など幅広い問題を
理論的・実証的に精緻に分析し、政策提言をしてきている。

そうした積み上げからも、自殺対策の連携に役立つ
重要な貢献をし得る立場だろう。

それは、近年発展の著しいミクロ計量経済学的な
政策評価から得られた学術的知見を、
政策の現場で生かす実践例としても、重要である。

日経ビジネスオンライン 2012年03月28日(水)
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