現場から:’11知事選/9 うつ病 県対策で事件防げず/群馬(毎日新聞)
[2011年06月27日(Mon)]
2011(平成23)年06月27日(月)
毎日新聞 地方版
トップ>地域ニュース>群馬
現場から:’11知事選/9
うつ病 県対策で事件防げず/群馬
http://mainichi.jp/area/gunma/news/20110627ddlk10010044000c.html
◇全市町村に相談窓口も
梅雨で湿気がこもる前橋地裁4号法廷。
背中を丸めて被告席に座った女性(67)は
今月6月16日、目を閉じ口を硬く結んで
判決の時を待っていた。
「被告人を懲役3年に処する。」
実刑判決が告げられた瞬間、
女性は視線を床に落とし、がっくりと肩を落とした。
安中市磯部1の自宅で10年7月、
当時高校1年の孫を刺殺したとして
殺人罪に問われた保坂良江被告の
裁判員裁判。
母親代わりとして育てていた孫の行く末に
思い悩み、重症うつ病に陥った末の事件だが、
執行猶予は認められなかった。
●
異変は、保坂被告の日常生活にも表れていた。
家事が手につかず、誰とも会話をしない。
事件当日は、台所の床に座り込んでいる姿を
家族は目にしていたが、家族の誰もが、
うつ病とは気付かなかった。
同居する長男は弁護側の証人として出廷し、
事件前の様子を証言した。
弁護士「保坂被告はいつもと違っていましたか。」
長男「何もせず家でもぼーっとしている時間が
長いように見えました。」
弁護士「何か声はかけましたか。」
長男「『少し休んだら。』とか『病院に行こうか。』
と声をかけました。」
弁護士「その時の保坂被告の反応は。」
長男「『大丈夫。』と。事件を起こすほど
深刻な状態だと思わず、それ以上強くは言わなかった。」
公判では、凄惨(せいさん)な事件現場の様子が
裁判員席のモニターに映しだされた。
判決後、記者会見に臨んだ裁判員の1人は
「周りが早くうつ病に気付いていれば。」
と言葉を絞り出した。
●
厚生労働省のまとめによると、
群馬県内のうつ病を含む気分障害の患者数は、
99年に約4,000人だったが、
08年には約2万4,000人に増えた。
この間の05年、群馬県は自殺防止対策会議を
設置し、うつ病対策を柱に据えて、
周知のための講演会を開くなどしてきた。
09年に「自殺対策アクションプラン」を策定してからは、
35市町村すべてにうつ病などの相談ができる
窓口設置を呼び掛け、今年までに
全市町村に設けられた。
しかし今回の事件では被告本人も家族も
うつ病とは気付かず、公的機関に
何らかの相談をした形跡はない。
●
一方、静岡県は「お父さん、ちゃんと眠れてる?」を
合言葉にした「睡眠キャンペーン」を06年から行い、
テレビCMも制作。
うつ病対策の先進県と言われている。
患者の多くに表れる「不眠」を切り口に、
うつ病への気付きを高めるのが狙いだ。
また秋田県ではかかりつけ医と精神科医が
お互いに支援し合う連携システムを構築するなど、
全県下での対策を進める。
「地域密着型」の群馬方式に魂がこもっていたのか。
行政に突きつけられた課題は大きい。
【角田直哉】=つづく
毎日新聞 地方版 2011年06月27日(月)
毎日新聞 地方版
トップ>地域ニュース>群馬
現場から:’11知事選/9
うつ病 県対策で事件防げず/群馬
http://mainichi.jp/area/gunma/news/20110627ddlk10010044000c.html
◇全市町村に相談窓口も
梅雨で湿気がこもる前橋地裁4号法廷。
背中を丸めて被告席に座った女性(67)は
今月6月16日、目を閉じ口を硬く結んで
判決の時を待っていた。
「被告人を懲役3年に処する。」
実刑判決が告げられた瞬間、
女性は視線を床に落とし、がっくりと肩を落とした。
安中市磯部1の自宅で10年7月、
当時高校1年の孫を刺殺したとして
殺人罪に問われた保坂良江被告の
裁判員裁判。
母親代わりとして育てていた孫の行く末に
思い悩み、重症うつ病に陥った末の事件だが、
執行猶予は認められなかった。
●
異変は、保坂被告の日常生活にも表れていた。
家事が手につかず、誰とも会話をしない。
事件当日は、台所の床に座り込んでいる姿を
家族は目にしていたが、家族の誰もが、
うつ病とは気付かなかった。
同居する長男は弁護側の証人として出廷し、
事件前の様子を証言した。
弁護士「保坂被告はいつもと違っていましたか。」
長男「何もせず家でもぼーっとしている時間が
長いように見えました。」
弁護士「何か声はかけましたか。」
長男「『少し休んだら。』とか『病院に行こうか。』
と声をかけました。」
弁護士「その時の保坂被告の反応は。」
長男「『大丈夫。』と。事件を起こすほど
深刻な状態だと思わず、それ以上強くは言わなかった。」
公判では、凄惨(せいさん)な事件現場の様子が
裁判員席のモニターに映しだされた。
判決後、記者会見に臨んだ裁判員の1人は
「周りが早くうつ病に気付いていれば。」
と言葉を絞り出した。
●
厚生労働省のまとめによると、
群馬県内のうつ病を含む気分障害の患者数は、
99年に約4,000人だったが、
08年には約2万4,000人に増えた。
この間の05年、群馬県は自殺防止対策会議を
設置し、うつ病対策を柱に据えて、
周知のための講演会を開くなどしてきた。
09年に「自殺対策アクションプラン」を策定してからは、
35市町村すべてにうつ病などの相談ができる
窓口設置を呼び掛け、今年までに
全市町村に設けられた。
しかし今回の事件では被告本人も家族も
うつ病とは気付かず、公的機関に
何らかの相談をした形跡はない。
●
一方、静岡県は「お父さん、ちゃんと眠れてる?」を
合言葉にした「睡眠キャンペーン」を06年から行い、
テレビCMも制作。
うつ病対策の先進県と言われている。
患者の多くに表れる「不眠」を切り口に、
うつ病への気付きを高めるのが狙いだ。
また秋田県ではかかりつけ医と精神科医が
お互いに支援し合う連携システムを構築するなど、
全県下での対策を進める。
「地域密着型」の群馬方式に魂がこもっていたのか。
行政に突きつけられた課題は大きい。
【角田直哉】=つづく
毎日新聞 地方版 2011年06月27日(月)



