寺院で集団自殺 接点ない4人 曖昧な生死の一線(MSN産経ニュース)
[2010年12月31日(Fri)]
2010(平成22)年12月30日(木)
MSN産経ニュース
ニューストップ>地方>関東>埼玉
【年の瀬記者ノート】
(5)寺院で集団自殺 接点ない4人 曖昧な生死の一線
http://sankei.jp.msn.com/region/kanto/saitama/101230/stm1012302330004-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/region/kanto/saitama/101230/stm1012302330004-n2.htm
http://sankei.jp.msn.com/region/kanto/saitama/101230/stm1012302330004-n3.htm
11月23日、穏やかな祝日だった。
1台の車が、表通りを行き交う人や車の波から取り残された
ように、駐車場の一角にひっそりと止まっていた。
さいたま市内にある県道沿いの寺院。
男性職員がその車に気付いたのは、その日の昼前だった。
「どうも、車の窓に粘着テープで目張りがしてあるようです」。
報告を受けた住職があわてて駐車場へ駆けつけると、
1台のワゴン車が止まっていた。
窓だけでなく、エアコンの吹き出し口にも張られた粘着テープ。
運転席の男性と助手席の女性は、口を開けて天を仰いでいた。
「自殺だ。」−。
住職は思わず合掌した。

集団自殺の現場となった駐車場。
事件を思わせる痕跡はないが、現在はカギがかけられ
立ち入ることはできない=12月23日、さいたま市
●
誰しも、仕事や人間関係で疲れたとき、
「死にたい。」
と思わずつぶやいてしまったことが一度くらいはあるはずだ。
でも、「死にたい。」と「死のう。」の間には、
容易には越えがたい壁があると信じていた。
新聞記者になるまでは。
3年前に記者になり、初めて世の中の事件や事故に
向き合うようになった。
警察を取材すると、人が死亡する事案の多さに驚いた。
ほとんどは自殺。
こんなにも人は死ぬのか−。
だが、そのショックも記者として取材をこなすうち、
次第に薄れていった。
●
今回もそうだった。
「大事件になることはないだろう。」
と判断し、脳裏に置き去りになっていた。
数日後、捜査関係者と雑談をしていたときだった。
「自殺した4人には、あまりにも動機がないんだ。
ただ、家族との縁が薄かったり職がなかったりで、
社会との『糸』が断たれ、死へと向かって
しまったんじゃないか。やるせない。」
捜査関係者が
「あまりにも動機がない。」
という彼らに一線を踏み越えさせたものは何だったのか。
4人の足跡をたどりたいと思った。
●
4人の居住地、年齢などはバラバラ。
4人はいずれも独身で、うち3人が職についていなかった。
朝霞市の男性は葬祭関係の会社に勤めていたが、
不景気のために収入は少なく、数十万円の借金を抱えていた。
福島県の女性は東京で1人暮らしをした後、一旦帰郷。
再び上京していた。
22歳の男性は大阪府出身。
今年5月に家を出て、都内を転々としていた。
精神科の診察券があり、埼玉県警は4人が自殺時に服用した
睡眠薬はこの男性が処方されたものだとみている。
茨城県の男性は「死にたい。」と家族に漏らしていたが、
深刻な様子ではなかったという。
「なんとなく死にたいという気持ちが
ネットを見て意気投合し、意志を強めてしまう。」
と捜査関係者は指摘する。男性も今年7月、実家を出ていた。
●
4人が都内で待ち合わせたのは11月19日前後。
練炭はその1週間ほど前、朝霞市の男性が購入していた。
茨城県の男性が用意した車に乗り込み、埼玉県内に向かった。
途中コンビニエンスストアで缶チューハイを買い、
県道沿いの寺院の駐車場に車を止めた。
後部座席に置いた七輪に火を付け、酒と睡眠薬を飲んで、
4人は2度と覚めることない眠りについた。
事件から約1カ月。現場となった駐車場には、何の痕跡もない。
「あんな悲しい事件は2度と起きてほしくない。」
偶然にも4人の若者の死と向き合うこととなった
住職はこう語る。
「自殺したい…。
そんなとき、世の中には話を聞いて、
受け止めてくれる人が必ずいる。
聞いてくれる人が1人でもいれば、生きていける。」
住職は力を込めた。
「死んでほしくない。生きてほしいです。」
人を「生」につなぎ止める糸は、
信じているよりもずっともろい。
糸を紡ごう。より強く。 (塩塚 夢)
=おわり
●
【寺院での集団自殺事件】
11月23日午前11時ごろ、さいたま市内の寺院の駐車場
に止めてあったワゴン車内で、男女4人がぐったりしているのが
発見された。
4人はすでに死亡しており、車内に燃えた練炭があったこと
などから、埼玉県警は自殺と断定した。
死亡したのは
▽福島県郡山市の 無職女性(20)
▽住居不詳、 職業不詳の男性(22)
▽茨城県稲敷市の職業不詳の男性(32)
▽朝霞市の 男性会社員(40)。
4人に共通の接点はなく、埼玉県警は
自殺サイトなどを通じて知り合ったとみている。
MSN産経ニュース 2010年12月30日(木)23時26分
MSN産経ニュース
ニューストップ>地方>関東>埼玉
【年の瀬記者ノート】
(5)寺院で集団自殺 接点ない4人 曖昧な生死の一線
http://sankei.jp.msn.com/region/kanto/saitama/101230/stm1012302330004-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/region/kanto/saitama/101230/stm1012302330004-n2.htm
http://sankei.jp.msn.com/region/kanto/saitama/101230/stm1012302330004-n3.htm
11月23日、穏やかな祝日だった。
1台の車が、表通りを行き交う人や車の波から取り残された
ように、駐車場の一角にひっそりと止まっていた。
さいたま市内にある県道沿いの寺院。
男性職員がその車に気付いたのは、その日の昼前だった。
「どうも、車の窓に粘着テープで目張りがしてあるようです」。
報告を受けた住職があわてて駐車場へ駆けつけると、
1台のワゴン車が止まっていた。
窓だけでなく、エアコンの吹き出し口にも張られた粘着テープ。
運転席の男性と助手席の女性は、口を開けて天を仰いでいた。
「自殺だ。」−。
住職は思わず合掌した。

集団自殺の現場となった駐車場。
事件を思わせる痕跡はないが、現在はカギがかけられ
立ち入ることはできない=12月23日、さいたま市
●
誰しも、仕事や人間関係で疲れたとき、
「死にたい。」
と思わずつぶやいてしまったことが一度くらいはあるはずだ。
でも、「死にたい。」と「死のう。」の間には、
容易には越えがたい壁があると信じていた。
新聞記者になるまでは。
3年前に記者になり、初めて世の中の事件や事故に
向き合うようになった。
警察を取材すると、人が死亡する事案の多さに驚いた。
ほとんどは自殺。
こんなにも人は死ぬのか−。
だが、そのショックも記者として取材をこなすうち、
次第に薄れていった。
●
今回もそうだった。
「大事件になることはないだろう。」
と判断し、脳裏に置き去りになっていた。
数日後、捜査関係者と雑談をしていたときだった。
「自殺した4人には、あまりにも動機がないんだ。
ただ、家族との縁が薄かったり職がなかったりで、
社会との『糸』が断たれ、死へと向かって
しまったんじゃないか。やるせない。」
捜査関係者が
「あまりにも動機がない。」
という彼らに一線を踏み越えさせたものは何だったのか。
4人の足跡をたどりたいと思った。
●
4人の居住地、年齢などはバラバラ。
4人はいずれも独身で、うち3人が職についていなかった。
朝霞市の男性は葬祭関係の会社に勤めていたが、
不景気のために収入は少なく、数十万円の借金を抱えていた。
福島県の女性は東京で1人暮らしをした後、一旦帰郷。
再び上京していた。
22歳の男性は大阪府出身。
今年5月に家を出て、都内を転々としていた。
精神科の診察券があり、埼玉県警は4人が自殺時に服用した
睡眠薬はこの男性が処方されたものだとみている。
茨城県の男性は「死にたい。」と家族に漏らしていたが、
深刻な様子ではなかったという。
「なんとなく死にたいという気持ちが
ネットを見て意気投合し、意志を強めてしまう。」
と捜査関係者は指摘する。男性も今年7月、実家を出ていた。
●
4人が都内で待ち合わせたのは11月19日前後。
練炭はその1週間ほど前、朝霞市の男性が購入していた。
茨城県の男性が用意した車に乗り込み、埼玉県内に向かった。
途中コンビニエンスストアで缶チューハイを買い、
県道沿いの寺院の駐車場に車を止めた。
後部座席に置いた七輪に火を付け、酒と睡眠薬を飲んで、
4人は2度と覚めることない眠りについた。
事件から約1カ月。現場となった駐車場には、何の痕跡もない。
「あんな悲しい事件は2度と起きてほしくない。」
偶然にも4人の若者の死と向き合うこととなった
住職はこう語る。
「自殺したい…。
そんなとき、世の中には話を聞いて、
受け止めてくれる人が必ずいる。
聞いてくれる人が1人でもいれば、生きていける。」
住職は力を込めた。
「死んでほしくない。生きてほしいです。」
人を「生」につなぎ止める糸は、
信じているよりもずっともろい。
糸を紡ごう。より強く。 (塩塚 夢)
=おわり
●
【寺院での集団自殺事件】
11月23日午前11時ごろ、さいたま市内の寺院の駐車場
に止めてあったワゴン車内で、男女4人がぐったりしているのが
発見された。
4人はすでに死亡しており、車内に燃えた練炭があったこと
などから、埼玉県警は自殺と断定した。
死亡したのは
▽福島県郡山市の 無職女性(20)
▽住居不詳、 職業不詳の男性(22)
▽茨城県稲敷市の職業不詳の男性(32)
▽朝霞市の 男性会社員(40)。
4人に共通の接点はなく、埼玉県警は
自殺サイトなどを通じて知り合ったとみている。
MSN産経ニュース 2010年12月30日(木)23時26分



