玉名・80代夫婦無理心中 背景は(朝日新聞/熊本)
[2010年09月29日(Wed)]
2010(平成22)年09月29日(火)
朝日新聞
asahi.com>マイタウン>熊本
玉名・80代夫婦無理心中 背景は
http://mytown.asahi.com/kumamoto/news.php?k_id=44000001009290003
玉名市のマンションで今月に起きた80代夫婦の無理心中事件。
妻の病気を苦にした夫が妻を手にかけ、
自ら命を絶ったとみられている。
独り暮らしや65歳以上の夫婦だけで暮らす世帯が増える中、
高齢者の自殺も少なくない。
孤立化する高齢者をどう社会で守っていくのか。
事件の背景を取材した。 (塩入 彩)

夫婦が住んでいた高齢者専用マンションの中庭には、
住民が植えた花が咲いていた=玉名市
事件の現場は玉名市の中心街に近い、
温泉施設が集まる一角の高齢者専用マンション。
玉名署などによると、8階に住んでいた男性(83)が
7日夜、ベッドに寝ていた妻(84)の首を絞めた直後に
共用廊下の窓から飛び降りた。
室内からは男性が残した遺書が見つかり、
「病気の妻を見ているのがつらかった」
と書かれていた。
○
男性の親類の女性(54)の話では、夫婦は約20年前に
埼玉県から妻の故郷の玉名市のマンションに転居。
子供はいなかった。
夫婦仲は良く、2人で頻繁に旅行にも出かけていたという。
しかし今年4月、妻が脳梗塞(こうそく)で倒れた。
8月末に退院するまでの間、男性はほぼ毎日
病院に見舞いに行ったという。
「病気したのは自分のせいだ」。
倒れる数日前からはしをよく落とすようになった
妻の兆候に気づけなかったと、男性は自分を責めた。
猛暑のなかを自転車で看病に向かう男性。
周囲は
「そんなに通い詰めてはバテてしまう」
と心配したが、
「行くと妻が喜ぶから」
と言う男性を止めることはできなかった。
○
8月30日に妻は退院。昼間はデイサービスに通い、
帰宅後は数時間おきにマンションの職員が様子を見ていた。
なるべく男性に負担をかけないようにするためだった。
だが退院からわずか9日後、事件は起きた。
「(男性は)心と体のバランスが取れなかったのかもしれない。
周りでサポートしていこうとしていた矢先だっただけに
悔しい」
とマンションの職員は漏らす。
□ ■ □
今回事件があった高齢者専用マンションには、
自立しながら老後を過ごしたい人たちが住む。
入居条件は60歳以上で身元引受人がいること。
24時間職員が常駐し、いざという時には病院に連絡して
救急対応をするなど受け入れ態勢は万全だ。
一方で年齢を重ねて体が不自由になったり、
伴侶を亡くしたりするケースも出てくる。
そのため、このマンション側は介護職員を増やし、
入居者全員が集う会を開くなどして
住民の「孤立」を防ぐように努めてきたという。
○
行政も高齢者を守ろうと取り組んでいる。
熊本県では「地域の結(ゆ)いづくり」事業として、
気軽に高齢者の相談に乗れるようなネットワークを
それぞれの地域ごとに構築することを目指す。
事件があった玉名市では、地域の公民館に高齢者を呼ぶ
「いきいきふれあい活動」を推進中。
今後は音楽会やDVDの鑑賞会など、
より利用者の要望に沿った形で企画していきたいという。
ただ、全国で相次いだ高齢者の行方不明事案のように、
最近では相手と接触することも難しくなっているという。
ある民生委員の男性(67)は
「悪徳商法などにだまされるのではと警戒され、
初めは会えないことも多いが、
何度も顔を出し、覚えてもらうことで
相手が声をかけてくることもある」。
○
高齢者の自殺問題などに詳しい
熊本大病院神経精神科の藤瀬 昇講師は
「病気やケガ、大切な人の死など
高齢の人は様々な喪失を経験し、自殺率も高くなる。
防止のためには、周囲が気長に声を掛けることや
行政側が声なき声をどれだけ拾っていけるかが重要」
と話す。
□ ■ □
事件から20日余り。無理心中を図った男性の親族の女性は、
事件の直前に男性から聞いた言葉が忘れられない。
2人のなれそめを聞いたら、
「(妻が)映画館の受付で切符を切っていてねえ」
と照れくさそうに話したという。
「こんなに早く2人と別れることになるなんて」。
女性は声を詰まらせた。
朝日新聞 2010年09月29日(火)
朝日新聞
asahi.com>マイタウン>熊本
玉名・80代夫婦無理心中 背景は
http://mytown.asahi.com/kumamoto/news.php?k_id=44000001009290003
玉名市のマンションで今月に起きた80代夫婦の無理心中事件。
妻の病気を苦にした夫が妻を手にかけ、
自ら命を絶ったとみられている。
独り暮らしや65歳以上の夫婦だけで暮らす世帯が増える中、
高齢者の自殺も少なくない。
孤立化する高齢者をどう社会で守っていくのか。
事件の背景を取材した。 (塩入 彩)

夫婦が住んでいた高齢者専用マンションの中庭には、
住民が植えた花が咲いていた=玉名市
事件の現場は玉名市の中心街に近い、
温泉施設が集まる一角の高齢者専用マンション。
玉名署などによると、8階に住んでいた男性(83)が
7日夜、ベッドに寝ていた妻(84)の首を絞めた直後に
共用廊下の窓から飛び降りた。
室内からは男性が残した遺書が見つかり、
「病気の妻を見ているのがつらかった」
と書かれていた。
○
男性の親類の女性(54)の話では、夫婦は約20年前に
埼玉県から妻の故郷の玉名市のマンションに転居。
子供はいなかった。
夫婦仲は良く、2人で頻繁に旅行にも出かけていたという。
しかし今年4月、妻が脳梗塞(こうそく)で倒れた。
8月末に退院するまでの間、男性はほぼ毎日
病院に見舞いに行ったという。
「病気したのは自分のせいだ」。
倒れる数日前からはしをよく落とすようになった
妻の兆候に気づけなかったと、男性は自分を責めた。
猛暑のなかを自転車で看病に向かう男性。
周囲は
「そんなに通い詰めてはバテてしまう」
と心配したが、
「行くと妻が喜ぶから」
と言う男性を止めることはできなかった。
○
8月30日に妻は退院。昼間はデイサービスに通い、
帰宅後は数時間おきにマンションの職員が様子を見ていた。
なるべく男性に負担をかけないようにするためだった。
だが退院からわずか9日後、事件は起きた。
「(男性は)心と体のバランスが取れなかったのかもしれない。
周りでサポートしていこうとしていた矢先だっただけに
悔しい」
とマンションの職員は漏らす。
□ ■ □
今回事件があった高齢者専用マンションには、
自立しながら老後を過ごしたい人たちが住む。
入居条件は60歳以上で身元引受人がいること。
24時間職員が常駐し、いざという時には病院に連絡して
救急対応をするなど受け入れ態勢は万全だ。
一方で年齢を重ねて体が不自由になったり、
伴侶を亡くしたりするケースも出てくる。
そのため、このマンション側は介護職員を増やし、
入居者全員が集う会を開くなどして
住民の「孤立」を防ぐように努めてきたという。
○
行政も高齢者を守ろうと取り組んでいる。
熊本県では「地域の結(ゆ)いづくり」事業として、
気軽に高齢者の相談に乗れるようなネットワークを
それぞれの地域ごとに構築することを目指す。
事件があった玉名市では、地域の公民館に高齢者を呼ぶ
「いきいきふれあい活動」を推進中。
今後は音楽会やDVDの鑑賞会など、
より利用者の要望に沿った形で企画していきたいという。
ただ、全国で相次いだ高齢者の行方不明事案のように、
最近では相手と接触することも難しくなっているという。
ある民生委員の男性(67)は
「悪徳商法などにだまされるのではと警戒され、
初めは会えないことも多いが、
何度も顔を出し、覚えてもらうことで
相手が声をかけてくることもある」。
○
高齢者の自殺問題などに詳しい
熊本大病院神経精神科の藤瀬 昇講師は
「病気やケガ、大切な人の死など
高齢の人は様々な喪失を経験し、自殺率も高くなる。
防止のためには、周囲が気長に声を掛けることや
行政側が声なき声をどれだけ拾っていけるかが重要」
と話す。
□ ■ □
事件から20日余り。無理心中を図った男性の親族の女性は、
事件の直前に男性から聞いた言葉が忘れられない。
2人のなれそめを聞いたら、
「(妻が)映画館の受付で切符を切っていてねえ」
と照れくさそうに話したという。
「こんなに早く2人と別れることになるなんて」。
女性は声を詰まらせた。
朝日新聞 2010年09月29日(火)



