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サンデーらいぶらりぃ:張 競・評『忍ぶ川』三浦哲郎・著(毎日新聞) [2010年09月28日(Tue)]
2010(平成22)年09月28日(火)
毎日新聞
トップ>エンターテインメント>毎日の本棚>書評

サンデーらいぶらりぃ:張 競・評
『忍ぶ川』 三浦哲郎・著
http://mainichi.jp/enta/book/review/news/20100928org00m040016000c.html

◆ふつうの恋愛を「事件」に転ずる妙

◇『忍ぶ川』三浦哲郎・著(新潮文庫所収)

「私」は東京の私立大学の学生で、偶然の機会で
料亭「忍ぶ川」の志乃を知り、一目惚れした。

志乃は深川の生まれ、12歳までそこで育った。
母親は洲崎で射的屋をしていたが、終戦の前年の夏、
栃木へ疎開してから一度も訪ねたことはない。

付き合ってまもなく、「私」は彼女をつれて深川へいった。
志乃は深川の街を歩きながら、自分の秘密をすべてさらけ出し、
「私」は彼女の言葉を通して、その思いを確かめることができた。

そんな矢先に、志乃には本村という婚約者がいることを耳にした。
「私」は半狂乱になって、志乃に糺したが、
誤解はすぐに解け、2人の絆は前よりも緊密なものになった。

秋の終わり、志乃の父親の容態が急変した。
父に会ってほしいという手紙を残して、彼女は急遽栃木に帰った。
翌日、志乃の実家に駆けつけた「私」も何とか父の死に目に会えた。

その年の大晦日、2人は夜行列車で上野を発った。
さらさらとした粉雪が降る北国の町で、
ささやかな結婚式が行われた。



ツルゲーネフ『初恋』を想起させる、美しい小説だ。
物語の構想といい、人物描写といい、文章といい、
ほとんど完璧といっていいほどの出来栄えだ。

劇にしろ、小説にしろ、本来、波瀾万丈の展開は描きやすいが、
順調な進行は書きにくい。悲劇や破局は扱いやすいが、
幸福な結末はまとめにくい。

だが、この小説は筋が単純であるにもかかわらず、
人を引きつける力強さがある。

秘密は陰影が巧妙に配置されていることにある。
志乃の父は貧困と失意のなかで一生を終え、
「私」の兄姉は自殺したか、失踪している。

理由ははっきりと明かされていないが、
陰影の曖昧さはふつうの恋愛を「事件」に反転させた。

<サンデー毎日 2010年10月10日号より>

【関連リンク】
サンデー毎日
http://www.mainichi.co.jp/publish/magazine.html#sunday

毎日新聞 2010年9月28日(火)
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