香山リカのココロの万華鏡:復職の雰囲気づくり/東京(毎日新聞)
[2010年09月23日(Thu)]
2010(平成22)年09月23日(木・祝)
毎日新聞 地方版
トップ>地域ニュース>東京
香山リカのココロの万華鏡:復職の雰囲気づくり/東京
http://mainichi.jp/area/tokyo/news/20100923ddlk13070233000c.html
企業の人事の担当者と話すと必ず言われるのが、次のことばだ。
「ウチの会社、このところ、メンタルヘルス系の疾患で休職する
社員が増えているんです。なぜでしょう」
「そちらの会社だけじゃないです。
日本全国どこの会社も同じですよ」
と答えると、ちょっとほっとしたような顔をするが、すぐに
「ということは、この問題は相当に深刻なんですね」
と言う。その通りだ。
●
そんな話をしていたら、ある人事担当者が言った。
「うつ病になりやすい人を
採用時点で見抜くコツはありますか?」。
なるべくなら休職の可能性がある人は採用したくない、
というのが企業の本音なのだろう。
しかし、「見抜くコツ」などはない。
もっと正確に言うならば、誰もがうつ病になる可能性が
あるわけだから、本当にそういう人を除こうとするならば
「誰も採用できない」
となるだろうか。
それよりも大切なのは、過重労働や高すぎる目標設定など、
一般的に考えてストレスになるような問題を取り除くこと。
そして、うつ病になった場合、早めに治療を受けて、
きちんと職場復帰できるような環境を整えることだ。
●
そう伝えたら、
「復職に必要な環境って何ですか」
ときかれた。
そこで大切なのはふたつ、ひとつは
「少しずつ元の仕事に戻れるようなならし出社、
段階的復職のシステムの整備」、
そしてもうひとつは「まわりの自然な対応」となるだろう。
とくにむずかしいけれど大切なのは後者で、
復職してきた人に対してはれものにさわるような扱いも
いけないし、かと言って
「これまでの分を取り戻してもらうぞ」
といったスパルタ的な対応も逆効果だ。
病気のことにはいっさい触れてはいけない、
と思う人もいるようだが、
「だいじょうぶ?」
「無理しないでしんどいときは言ってよ」
といった声がけは、まったく問題ない。
●
うつ病などメンタルヘルス系の従業員を排除していては、
今や職場は成り立たない。
むしろ
「誰もがなる病気だから」
と理解し、
その人たちもいっしょに仕事をしていくんだ、
といった雰囲気を作るほうが、
結果的には休職者の減少にもつながっていく。
うつ病の従業員が出ないほうがいいにこしたことはないが、
もしいたとしても、それ自体は恥ずかしいことではないのだ。
正しい理解と懐の深い対応が、どの職場にも求められている。
毎日新聞 地方版 2010年09月23日(木・祝)
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香山リカのココロの万華鏡:復職の雰囲気づくり/東京
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企業の人事の担当者と話すと必ず言われるのが、次のことばだ。
「ウチの会社、このところ、メンタルヘルス系の疾患で休職する
社員が増えているんです。なぜでしょう」
「そちらの会社だけじゃないです。
日本全国どこの会社も同じですよ」
と答えると、ちょっとほっとしたような顔をするが、すぐに
「ということは、この問題は相当に深刻なんですね」
と言う。その通りだ。
●
そんな話をしていたら、ある人事担当者が言った。
「うつ病になりやすい人を
採用時点で見抜くコツはありますか?」。
なるべくなら休職の可能性がある人は採用したくない、
というのが企業の本音なのだろう。
しかし、「見抜くコツ」などはない。
もっと正確に言うならば、誰もがうつ病になる可能性が
あるわけだから、本当にそういう人を除こうとするならば
「誰も採用できない」
となるだろうか。
それよりも大切なのは、過重労働や高すぎる目標設定など、
一般的に考えてストレスになるような問題を取り除くこと。
そして、うつ病になった場合、早めに治療を受けて、
きちんと職場復帰できるような環境を整えることだ。
●
そう伝えたら、
「復職に必要な環境って何ですか」
ときかれた。
そこで大切なのはふたつ、ひとつは
「少しずつ元の仕事に戻れるようなならし出社、
段階的復職のシステムの整備」、
そしてもうひとつは「まわりの自然な対応」となるだろう。
とくにむずかしいけれど大切なのは後者で、
復職してきた人に対してはれものにさわるような扱いも
いけないし、かと言って
「これまでの分を取り戻してもらうぞ」
といったスパルタ的な対応も逆効果だ。
病気のことにはいっさい触れてはいけない、
と思う人もいるようだが、
「だいじょうぶ?」
「無理しないでしんどいときは言ってよ」
といった声がけは、まったく問題ない。
●
うつ病などメンタルヘルス系の従業員を排除していては、
今や職場は成り立たない。
むしろ
「誰もがなる病気だから」
と理解し、
その人たちもいっしょに仕事をしていくんだ、
といった雰囲気を作るほうが、
結果的には休職者の減少にもつながっていく。
うつ病の従業員が出ないほうがいいにこしたことはないが、
もしいたとしても、それ自体は恥ずかしいことではないのだ。
正しい理解と懐の深い対応が、どの職場にも求められている。
毎日新聞 地方版 2010年09月23日(木・祝)