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【書評】『ウィトゲンシュタイン家の人びと 闘う家族』 アレグザンダー・ウォー著(読売新聞) [2010年09月12日(Sun)]
2010(平成22)年09月12日(日)
読売新聞
総合トップ>本よみうり堂>書評

【書評】
『ウィトゲンシュタイン家の人びと 闘う家族』
アレグザンダー・ウォー著
http://www.yomiuri.co.jp/book/review/20100913-OYT8T00200.htm

評・野家啓一(科学哲学者)

哲学者一族の愛憎

ウィトゲンシュタインと聞けば、誰しも20世紀を代表する
孤高の哲学者 ルートウィヒの風貌(ふうぼう)を
思い浮かべることだろう。

だが、彼は
「親に反抗するアメリカのバーテンダーから
 億万長者のオーストリア鉄鋼王」
にまで成り上がった父カールと母レオポルディーネの
末子であった。

四男パウルは「片腕のピアニスト」として知られ、
四女マルガレーテはクリムトの肖像画にその面影を留め、
長男ヨハネス、次男コンラート、三男ルドルフは、
みな自殺をとげている。

本書はこの五男四女の子宝に恵まれた一家の
栄光と没落の物語である。



主役はパウル、大哲学者のルートウィヒも、ここでは
家族の軋轢(あつれき)の間で右往左往する脇役にすぎない。

第一次世界大戦はこの一家に最初の不運をもたらした。
新進ピアニストとして華やかなデビューを飾ったパウルが
戦場で「弾丸に右肘(ひじ)を打ち砕かれ」、負傷したまま
シベリアに抑留されたのである。

そこはドストエフスキーの『死の家の記録』の舞台、
クレポストの収容所であった。

だが、幸いにも帰還したパウルは、刻苦のすえ、
左手1本で演奏活動を再開し、大きな成功を収める。

ナチスによるオーストリア併合と第二次世界大戦は、
一家に第二の決定的な打撃を与えた。

彼らは「完全ユダヤ人」と見なされ、莫大(ばくだい)な財産も
没収の危機に晒(さら)されたのである。

事態への対処をめぐって、「自尊心や名誉心や頑固さ」が
いずれ劣らぬ兄弟姉妹の不和と対立は頂点に達する。

だが、この窮地にあってマルガレーテの行動力は傑出しており、
逮捕にも臆しないナチスとの駆け引きなどは、
さながらスパイ小説を読むかのようなスリルを味わわせてくれる。



「この一家では自殺も発狂も続出し、
 不和もまた続出した」

と語る著者は、戦争と政治に翻弄(ほんろう)された
家族の運命を、膨大な資料や書簡を駆使して、
まるで「見てきたように」描き出す。

ウィーン世紀末の最後の光芒(こうぼう)ともいうべき、
凄(すさ)まじい「ホームドラマ」である。塩原通緒訳。

◇Alexander Waugh
=1963年生まれ。作家、音楽評論家。
祖父は英の国民的作家、イーヴリン・ウォー。

中央公論新社 3,200円

『ウィトゲンシュタイン家の人びと 闘う家族』
アレグザンダー・ウォー/著
塩原通緒/訳
中央公論新社/3,360円

読売新聞 2010年09月12日(日)
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