石井仁平医師:関川村移住1年 本当の「治療」模索の日々/新潟(毎日新聞)
[2010年02月26日(Fri)]
2010(平成22)年02月26日(金)
毎日新聞 地方版
トップ>地域ニュース>新潟
石井仁平医師:関川村移住1年
本当の「治療」模索の日々/新潟
http://mainichi.jp/area/niigata/news/20100226ddlk15040160000c.html
◇農業と両立、人に焦点を
農村から日本の医療を見つめ直したいと、
外科医の石井仁平さんが、
東京から関川村に移り住んで1年になる。
農業をしながら、近くの医療機関で診察したり、
健康相談に応じる日々を送る。
「やっと村の人に受け入れられてきたかな。
これからが本当のスタート」
と石井さん。
ゆくゆくは、村に訪問診療センターを作りたいと夢みている。
◆「いい医者」って?
石井さんは宮城県出身。長崎大医学部を卒業後、
埼玉や千葉など主に首都圏の病院で勤務した。
研修医1年目だった01年の夏。
千葉の病院で担当していた末期がんの60代男性が亡くなった。
自分がみとった初めての患者だった。
亡くなる直前、男性は息も絶え絶えの状態で
「先生、いい医者になってください」
と何度も繰り返した。
周りに家族がいるのに、自分に向かって発した
男性の最後の言葉。
それ以来、
「『いい医者』って何だろう」
とずっと考え続けてきた。
◆体だけ助けても…
より高度な技術を学ぼうと、
大阪の千里救命救急センターへ移った。
1年間勤務し、患者の多くが
社会的な問題を抱えていることに気づいた。
精神疾患を抱えた人や野宿生活者、自殺未遂を繰り返す人……。
同じ人が何度も運ばれてくる。
助けた後に自殺した患者もいた。
「体だけ助けても、社会的背景が変わらなければ、
本当に治すことはできない」。
病気への対応だけでは、医師も地域も疲弊するばかり。
「今、新しい病気がどんどん増えているのは、
人ではなく病気に焦点をあてているから」
という。
◆大切なのは食と農
人が健康であるために欠かせないものの1つが「食」。
食を考えるうえで切り離せないのが「農」だ。
3〜4年前から、新しい医療を目指す拠点を探していた。
08年に東京の雑穀レストランが主催する
田舎暮らし体験会に参加し、山形県小国町を訪ねた。
その時、県境を挟んで隣接する関川村と出合い、
09年1月に移住した。
4月には、田畑を借りて35種類の野菜の種をまき、
秋には無農薬の米を3俵半収穫した。
初めての農業の傍ら、村上市の県立坂町病院や
山北徳洲会病院で主に夜勤で診療をしている。
◆大声出して元気に
09年12月、村の有志で
「関川村 男大楽(おとこだいがく)」
を始めた。
禁酒禁煙女人禁制で、エネルギーを高めることを学び合う場。
著名人のスピーチなどを学び、心に残ったことを大声で叫ぶ。
「声を出すことは大事なんです」
と石井さん。
大声を出した後、参加者は生き生きした表情になるという。
人が本当に元気になるための「治療」を模索する日々は、
始まったばかりだ。 【川畑さおり】
毎日新聞 地方版 2010年02月26日(金)
毎日新聞 地方版
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石井仁平医師:関川村移住1年
本当の「治療」模索の日々/新潟
http://mainichi.jp/area/niigata/news/20100226ddlk15040160000c.html
◇農業と両立、人に焦点を
農村から日本の医療を見つめ直したいと、
外科医の石井仁平さんが、
東京から関川村に移り住んで1年になる。
農業をしながら、近くの医療機関で診察したり、
健康相談に応じる日々を送る。
「やっと村の人に受け入れられてきたかな。
これからが本当のスタート」
と石井さん。
ゆくゆくは、村に訪問診療センターを作りたいと夢みている。
◆「いい医者」って?
石井さんは宮城県出身。長崎大医学部を卒業後、
埼玉や千葉など主に首都圏の病院で勤務した。
研修医1年目だった01年の夏。
千葉の病院で担当していた末期がんの60代男性が亡くなった。
自分がみとった初めての患者だった。
亡くなる直前、男性は息も絶え絶えの状態で
「先生、いい医者になってください」
と何度も繰り返した。
周りに家族がいるのに、自分に向かって発した
男性の最後の言葉。
それ以来、
「『いい医者』って何だろう」
とずっと考え続けてきた。
◆体だけ助けても…
より高度な技術を学ぼうと、
大阪の千里救命救急センターへ移った。
1年間勤務し、患者の多くが
社会的な問題を抱えていることに気づいた。
精神疾患を抱えた人や野宿生活者、自殺未遂を繰り返す人……。
同じ人が何度も運ばれてくる。
助けた後に自殺した患者もいた。
「体だけ助けても、社会的背景が変わらなければ、
本当に治すことはできない」。
病気への対応だけでは、医師も地域も疲弊するばかり。
「今、新しい病気がどんどん増えているのは、
人ではなく病気に焦点をあてているから」
という。
◆大切なのは食と農
人が健康であるために欠かせないものの1つが「食」。
食を考えるうえで切り離せないのが「農」だ。
3〜4年前から、新しい医療を目指す拠点を探していた。
08年に東京の雑穀レストランが主催する
田舎暮らし体験会に参加し、山形県小国町を訪ねた。
その時、県境を挟んで隣接する関川村と出合い、
09年1月に移住した。
4月には、田畑を借りて35種類の野菜の種をまき、
秋には無農薬の米を3俵半収穫した。
初めての農業の傍ら、村上市の県立坂町病院や
山北徳洲会病院で主に夜勤で診療をしている。
◆大声出して元気に
09年12月、村の有志で
「関川村 男大楽(おとこだいがく)」
を始めた。
禁酒禁煙女人禁制で、エネルギーを高めることを学び合う場。
著名人のスピーチなどを学び、心に残ったことを大声で叫ぶ。
「声を出すことは大事なんです」
と石井さん。
大声を出した後、参加者は生き生きした表情になるという。
人が本当に元気になるための「治療」を模索する日々は、
始まったばかりだ。 【川畑さおり】
毎日新聞 地方版 2010年02月26日(金)