【社説】自殺3万人 ― 遺族にもっと支えの手を(朝日新聞)
[2009年12月30日(Wed)]
2009(平成21)年12月30日(水)
朝日新聞
asahi.com>社説
【社説】
自殺3万人 ― 遺族にもっと支えの手を
http://www.asahi.com/paper/editorial20091230.html
3万人といえば東京マラソンで銀座通りを埋める
ランナーの数にほぼ相当する。
今年も11月末時点で全国の自殺者がそれを超えた。
12年連続である。
この年末も自ら死を選ぶ人が増えないか、心配だ。
政府は年度末にかけて100日プランで対策を強化するという。
策を尽くしてもらいたい。
同時に見逃してほしくないことがある。
自殺者が増えれば遺族も増えることだ。
自殺対策のNPOライフリンクなどの推計では、
過去40年間に配偶者やきょうだい、父母、子どもが
自殺した経験のある人は約300万人いる。
肉親が突然死ぬ、という体験はどんな場合にも耐え難いことだ。
まして自殺は、事故や病気による死と違うかたちで
家族の心に深い傷を残す。
本当は違うのに、なぜ止められなかったかと自分を責めたり、
周りからも責められたりしがちだ。
背景に病気や借金などがある場合、
社会的な支援があれば救われた事例も多いだろう。
ところが多くの場合は個人の弱さの問題にされてしまう。
それをさらに遺族が引きずっていく。
遺児の支援をしている、あしなが育英会の自殺遺児の文集は
「自殺って言えなかった。」
と題されている。
筆者の若者のひとりは
「家でも外でも、死んだお父さんのことは
全く話題にしなくなった。
最初からいなかったようになった」
と話す。友達にも悩みを打ち明けようがない。
ライフリンクの自殺遺族聞き取り調査によると、
4人に1人は「死にたい」と答えている。
1990年代にようやく遺族が苦しみを分かち合う活動が
広がった。
「自分だけではなかった」
と知り、心を落ち着ける人が少しずつ増えてきた。
とはいえ、まだ全国で約80の組織があるだけだ。
参加者は数千人にすぎないだろう。
遺族が集まる場所や、安心して話し合える雰囲気をつくれる
リーダーが求められている。自治体にも手助けしてほしい。
現実的な支援が必要なことも忘れてはいけない。
この十数年、全体の数を高どまりさせているのは
中高年男性の自殺者の増加だ。
その結果、中高生の子どもを抱える母子家庭が多く残された。
あしなが育英会によると、奨学金を受給している
母子家庭の平均年収は134万円にすぎない。
「アパートで自殺し、遺族がその後の家賃を負担させられ続けた」
「相続放棄の方法を知らずに借金を引き継いでしまった」。
そんな遺族も多い。
弁護士などに相談できる機会があれば、避けられたのではないか。
東京都は今年から、遺体の検査の際、
相談窓口や遺族会の案内などの一覧表を遺族に渡し始めた。
政府も自治体も、自殺防止の対策だけでは不十分だ。
残された家族への温かい配慮も忘れてはなるまい。
朝日新聞 2009年12月30日(水)
朝日新聞
asahi.com>社説
【社説】
自殺3万人 ― 遺族にもっと支えの手を
http://www.asahi.com/paper/editorial20091230.html
3万人といえば東京マラソンで銀座通りを埋める
ランナーの数にほぼ相当する。
今年も11月末時点で全国の自殺者がそれを超えた。
12年連続である。
この年末も自ら死を選ぶ人が増えないか、心配だ。
政府は年度末にかけて100日プランで対策を強化するという。
策を尽くしてもらいたい。
同時に見逃してほしくないことがある。
自殺者が増えれば遺族も増えることだ。
自殺対策のNPOライフリンクなどの推計では、
過去40年間に配偶者やきょうだい、父母、子どもが
自殺した経験のある人は約300万人いる。
肉親が突然死ぬ、という体験はどんな場合にも耐え難いことだ。
まして自殺は、事故や病気による死と違うかたちで
家族の心に深い傷を残す。
本当は違うのに、なぜ止められなかったかと自分を責めたり、
周りからも責められたりしがちだ。
背景に病気や借金などがある場合、
社会的な支援があれば救われた事例も多いだろう。
ところが多くの場合は個人の弱さの問題にされてしまう。
それをさらに遺族が引きずっていく。
遺児の支援をしている、あしなが育英会の自殺遺児の文集は
「自殺って言えなかった。」
と題されている。
筆者の若者のひとりは
「家でも外でも、死んだお父さんのことは
全く話題にしなくなった。
最初からいなかったようになった」
と話す。友達にも悩みを打ち明けようがない。
ライフリンクの自殺遺族聞き取り調査によると、
4人に1人は「死にたい」と答えている。
1990年代にようやく遺族が苦しみを分かち合う活動が
広がった。
「自分だけではなかった」
と知り、心を落ち着ける人が少しずつ増えてきた。
とはいえ、まだ全国で約80の組織があるだけだ。
参加者は数千人にすぎないだろう。
遺族が集まる場所や、安心して話し合える雰囲気をつくれる
リーダーが求められている。自治体にも手助けしてほしい。
現実的な支援が必要なことも忘れてはいけない。
この十数年、全体の数を高どまりさせているのは
中高年男性の自殺者の増加だ。
その結果、中高生の子どもを抱える母子家庭が多く残された。
あしなが育英会によると、奨学金を受給している
母子家庭の平均年収は134万円にすぎない。
「アパートで自殺し、遺族がその後の家賃を負担させられ続けた」
「相続放棄の方法を知らずに借金を引き継いでしまった」。
そんな遺族も多い。
弁護士などに相談できる機会があれば、避けられたのではないか。
東京都は今年から、遺体の検査の際、
相談窓口や遺族会の案内などの一覧表を遺族に渡し始めた。
政府も自治体も、自殺防止の対策だけでは不十分だ。
残された家族への温かい配慮も忘れてはなるまい。
朝日新聞 2009年12月30日(水)



