ワーク・ライフ・バランス[仕事と生活の調和](中)(毎日新聞)
[2008年08月31日(Sun)]
2008(平成20)年08月31日
毎日新聞 東京朝刊
トップ>ニュースセレクト>政治
読む政治・選択の手引:
ワーク・ライフ・バランス(その2)
心身の毒、長時間労働
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20080831ddm010010136000c.html
◆ ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)
仕事は暮らしを支え、人生を充実させる。
だが、働き過ぎは心身の健康を害し、少子化など
さまざまな問題の要因にもなっている。
仕事と生活の調和を目指す「ワーク・ライフ・バランス」の
実現が大きな課題になる今、長時間労働の現状と弊害などを探る。
【白戸圭一】
◇ 短くはなったが
Q 「ワーク・ライフ・バランス」って何?
A 文字通り「仕事と生活の調和」という意味だ。
日本人の労働時間は高度成長期に比べれば短くなったが、
他の先進国と比べてまだまだ長く、いろいろな問題を
引き起こしている。そこで、もっと仕事と生活のバランスが
取れた生き方をしようという考えが強まってきたんだ。
Q 日本人はどのくらい働いているの?
A 経済協力開発機構(OECD)によると、
日米英仏独の主要5カ国の年間総労働時間(06年)で、
日本は1784時間。最長の米国より13時間短いが、
最短のドイツの1436時間より348時間も長い。
先進18カ国対象の別の調査では、日本は週50時間以上
働く労働者の割合が28・1%で最高だった。
Q 休暇も短いの?
A 欧米では、2週間〜1カ月の夏休みやクリスマス休暇が
珍しくない。一方、06年の日本の労働者は、
1人年17・7日の有給休暇があるのに、実際は8・3日しか
休んでいない。取得率は約46%。また、育児・介護休業法で
男女とも育児休暇取得が認められているが、05年の男性の
取得率は0・5%。制度は完全に形骸(けいがい)化しているんだ。
◇ 働き方、ムダ多い
Q 長時間労働は日本人の勤勉さの表れじゃないの?
A そういう面もあるかもしれないが、問題は労働生産性、
つまりどれだけ効率よく働いているかだ。財団法人の
社会経済生産性本部がOECD30カ国の05年の労働生産性を
比較したところ、日本は20位。日米英仏独伊加の主要7カ国
の中では最低だった。生産性が低いまま長く働くということは、
働き方に無駄が多いとも言えるんだ。
Q 長時間労働の問題は?
A 過度の長時間労働は健康を害する。厚生労働省によると、
07年度に精神疾患で労災認定を受けたのは268人。
このうち自殺は未遂も含め81人。ともに05年度の約2倍で
過去最多だ。脳・心臓疾患も過去最多の392人が労災認定され、
うち142人は死亡した。認定を求めて争っている人の存在も
考えれば、長時間労働で健康を害した人はもっと多いだろう。
◇ 減る家族ふれ合い、男性の育児25分
Q ほかの問題は?
A 例えば男性が1日のうちに育児に使う時間は、
英国が90分、スウェーデン70分、ドイツは59分。
日本はわずか25分だ。仕事に時間を取られて子育てを
母親任せにしている現状が浮かぶ。長時間労働は家族が
触れ合う時間を減らし、少子化の大きな原因と指摘されている。
Q なぜ、日本では長時間労働が解消されないんだろう?
A いろいろな要因が複雑に絡む問題だ。バブル崩壊後に
企業が新規採用を控え、中堅社員が不足して忙しくなっている
との指摘もある。グローバル経済の競争激化で、
中小企業を中心に残業代でようやく暮らしを維持できる人が
増えている可能性もある。
雇用の不安定な派遣労働者が長時間労働を強いられている
現実もある。日本の長時間労働は高度成長期から国際的に
顕著だったから、国民性も大きな理由かもしれない。
◇ 「自分だけ」「職場に迷惑」後ろめたさ
Q 国民性って?
A 07年の厚労省の国民の意識調査では、有給休暇の取得について
回答者の25・2%が「ためらいを感じる」、
42・5%が「ややためらいを感じる」と回答。
理由では、実に66・2%が「(職場の)みんなに迷惑がかかる」
と答えたんだ。厚労省が働く女性に育児休暇を取得しない理由を
尋ねたところ、4割以上が「職場の雰囲気」を挙げた調査もある。
自分だけ休むことに後ろめたさを感じる国民性の存在をうかがわせる。
Q 国や財界は、何か対策を取っているの?
A 政府と経営者、労働者の代表は昨年12月、
「ワーク・ライフ・バランス憲章」と「行動指針」を作成した。
行動指針は
(1)働くことで経済的に自立できる
(2)健康で豊かな生活の時間が確保できる
(3)多様な働き方や生き方を選択できる
−−社会の実現を目指すとしている。
実現のために14の数値目標が掲げられた。
▽現在約46%の有給休暇取得率を17年に100%に
▽第1子出産前後の女性の継続就業率を
現状の38%から17年に55%に
−−などだ。
Q 社会的にも大きな問題なのかな?
A 少子高齢化が進む日本は、誰もが働きやすい雇用環境を作り、
効率的な働き方を実現しないと、産業が衰退してしまう恐れがある。
危機感を抱き、残業時間短縮、育児休業普及などを進める企業が
少しずつ出てきている。経営者、労働者の双方が意識改革を進める
しか、方法はないかもしれない。
毎日新聞 東京朝刊
トップ>ニュースセレクト>政治
読む政治・選択の手引:
ワーク・ライフ・バランス(その2)
心身の毒、長時間労働
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20080831ddm010010136000c.html
◆ ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)
仕事は暮らしを支え、人生を充実させる。
だが、働き過ぎは心身の健康を害し、少子化など
さまざまな問題の要因にもなっている。
仕事と生活の調和を目指す「ワーク・ライフ・バランス」の
実現が大きな課題になる今、長時間労働の現状と弊害などを探る。
【白戸圭一】
◇ 短くはなったが
Q 「ワーク・ライフ・バランス」って何?
A 文字通り「仕事と生活の調和」という意味だ。
日本人の労働時間は高度成長期に比べれば短くなったが、
他の先進国と比べてまだまだ長く、いろいろな問題を
引き起こしている。そこで、もっと仕事と生活のバランスが
取れた生き方をしようという考えが強まってきたんだ。
Q 日本人はどのくらい働いているの?
A 経済協力開発機構(OECD)によると、
日米英仏独の主要5カ国の年間総労働時間(06年)で、
日本は1784時間。最長の米国より13時間短いが、
最短のドイツの1436時間より348時間も長い。
先進18カ国対象の別の調査では、日本は週50時間以上
働く労働者の割合が28・1%で最高だった。
Q 休暇も短いの?
A 欧米では、2週間〜1カ月の夏休みやクリスマス休暇が
珍しくない。一方、06年の日本の労働者は、
1人年17・7日の有給休暇があるのに、実際は8・3日しか
休んでいない。取得率は約46%。また、育児・介護休業法で
男女とも育児休暇取得が認められているが、05年の男性の
取得率は0・5%。制度は完全に形骸(けいがい)化しているんだ。
◇ 働き方、ムダ多い
Q 長時間労働は日本人の勤勉さの表れじゃないの?
A そういう面もあるかもしれないが、問題は労働生産性、
つまりどれだけ効率よく働いているかだ。財団法人の
社会経済生産性本部がOECD30カ国の05年の労働生産性を
比較したところ、日本は20位。日米英仏独伊加の主要7カ国
の中では最低だった。生産性が低いまま長く働くということは、
働き方に無駄が多いとも言えるんだ。
Q 長時間労働の問題は?
A 過度の長時間労働は健康を害する。厚生労働省によると、
07年度に精神疾患で労災認定を受けたのは268人。
このうち自殺は未遂も含め81人。ともに05年度の約2倍で
過去最多だ。脳・心臓疾患も過去最多の392人が労災認定され、
うち142人は死亡した。認定を求めて争っている人の存在も
考えれば、長時間労働で健康を害した人はもっと多いだろう。
◇ 減る家族ふれ合い、男性の育児25分
Q ほかの問題は?
A 例えば男性が1日のうちに育児に使う時間は、
英国が90分、スウェーデン70分、ドイツは59分。
日本はわずか25分だ。仕事に時間を取られて子育てを
母親任せにしている現状が浮かぶ。長時間労働は家族が
触れ合う時間を減らし、少子化の大きな原因と指摘されている。
Q なぜ、日本では長時間労働が解消されないんだろう?
A いろいろな要因が複雑に絡む問題だ。バブル崩壊後に
企業が新規採用を控え、中堅社員が不足して忙しくなっている
との指摘もある。グローバル経済の競争激化で、
中小企業を中心に残業代でようやく暮らしを維持できる人が
増えている可能性もある。
雇用の不安定な派遣労働者が長時間労働を強いられている
現実もある。日本の長時間労働は高度成長期から国際的に
顕著だったから、国民性も大きな理由かもしれない。
◇ 「自分だけ」「職場に迷惑」後ろめたさ
Q 国民性って?
A 07年の厚労省の国民の意識調査では、有給休暇の取得について
回答者の25・2%が「ためらいを感じる」、
42・5%が「ややためらいを感じる」と回答。
理由では、実に66・2%が「(職場の)みんなに迷惑がかかる」
と答えたんだ。厚労省が働く女性に育児休暇を取得しない理由を
尋ねたところ、4割以上が「職場の雰囲気」を挙げた調査もある。
自分だけ休むことに後ろめたさを感じる国民性の存在をうかがわせる。
Q 国や財界は、何か対策を取っているの?
A 政府と経営者、労働者の代表は昨年12月、
「ワーク・ライフ・バランス憲章」と「行動指針」を作成した。
行動指針は
(1)働くことで経済的に自立できる
(2)健康で豊かな生活の時間が確保できる
(3)多様な働き方や生き方を選択できる
−−社会の実現を目指すとしている。
実現のために14の数値目標が掲げられた。
▽現在約46%の有給休暇取得率を17年に100%に
▽第1子出産前後の女性の継続就業率を
現状の38%から17年に55%に
−−などだ。
Q 社会的にも大きな問題なのかな?
A 少子高齢化が進む日本は、誰もが働きやすい雇用環境を作り、
効率的な働き方を実現しないと、産業が衰退してしまう恐れがある。
危機感を抱き、残業時間短縮、育児休業普及などを進める企業が
少しずつ出てきている。経営者、労働者の双方が意識改革を進める
しか、方法はないかもしれない。



