発信箱:寺よ、いずこへ=萩尾信也(社会部)(毎日新聞)
[2009年05月31日(Sun)]
2009(平成21)年05月31日(日)
毎日新聞
トップ>ニュースセレクト>社説・解説・コラム>発信箱
発信箱:寺よ、いずこへ=萩尾信也(社会部)
http://mainichi.jp/select/opinion/hasshinbako/news/20090531k0000m070093000c.html
「葬儀屋に尋ねられ、初めて我が家の宗派を知った」。
50代半ばの同窓会で1人が切り出すと、
「オレも同じだ」
という声が相次いだ。
昨今の葬儀は大半が業者任せで、式はセレモニーホールの使用が
増えている。
「式の当日に見知らぬ僧侶と初顔合わせして、
1周忌、3回忌、7回忌と全部お坊さんが違った」
という例もある。
かくして、ちまたでは仏教の存在感が薄れ、
「葬式仏教」
とやゆする声も耳にする。
そんな折、長野県松本市にある神宮寺の高橋卓志和尚から
著書「寺よ、変われ」(岩波新書)
を頂いた。
第1章は「寺は死にかけている」。
宗教法人としてのさまざまな庇護(ひご)を受け、
寺の世襲化を重ねながら、「今生の苦」から乖離(かいり)
してきた仏教界を憂い、将来像を模索している。
そこには、自らケアタウンを運営して「老い」や
「看(み)取り」に立ち会い、生前に延命措置や葬儀のあり方を
考える「リビング・ウイル」の普及や、遺族の悲しみに向き合う
「グリーフケア」を続けて、試行錯誤してきた和尚の思いが
込められている。
ちなみに、国内には8万軒の寺があり、20万人余のお坊さんが
いる。
全国4万軒のコンビニの2倍の数に達しているのに、
その影は薄い。
そうした中、現代社会に広がるさまざまな苦に向き合う活動も
萌芽(ほうが)している。
自殺予防活動や、ホームレスや派遣切りの炊き出しで出会う
若き僧侶たちはひとつの希望だ。
平安末期。飢饉(ききん)や疫病や戦が続いた「末法の世」に、
民衆に向き合って広まった浄土信仰の例もある。
未曽有の経済危機で人々の心に苦しみが広がるこの時代こそ、
人々と仏教がつながる糸口があるように思うのだが。
毎日新聞 2009年05月31日 00時05分
毎日新聞
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発信箱:寺よ、いずこへ=萩尾信也(社会部)
http://mainichi.jp/select/opinion/hasshinbako/news/20090531k0000m070093000c.html
「葬儀屋に尋ねられ、初めて我が家の宗派を知った」。
50代半ばの同窓会で1人が切り出すと、
「オレも同じだ」
という声が相次いだ。
昨今の葬儀は大半が業者任せで、式はセレモニーホールの使用が
増えている。
「式の当日に見知らぬ僧侶と初顔合わせして、
1周忌、3回忌、7回忌と全部お坊さんが違った」
という例もある。
かくして、ちまたでは仏教の存在感が薄れ、
「葬式仏教」
とやゆする声も耳にする。
そんな折、長野県松本市にある神宮寺の高橋卓志和尚から
著書「寺よ、変われ」(岩波新書)
を頂いた。
第1章は「寺は死にかけている」。
宗教法人としてのさまざまな庇護(ひご)を受け、
寺の世襲化を重ねながら、「今生の苦」から乖離(かいり)
してきた仏教界を憂い、将来像を模索している。
そこには、自らケアタウンを運営して「老い」や
「看(み)取り」に立ち会い、生前に延命措置や葬儀のあり方を
考える「リビング・ウイル」の普及や、遺族の悲しみに向き合う
「グリーフケア」を続けて、試行錯誤してきた和尚の思いが
込められている。
ちなみに、国内には8万軒の寺があり、20万人余のお坊さんが
いる。
全国4万軒のコンビニの2倍の数に達しているのに、
その影は薄い。
そうした中、現代社会に広がるさまざまな苦に向き合う活動も
萌芽(ほうが)している。
自殺予防活動や、ホームレスや派遣切りの炊き出しで出会う
若き僧侶たちはひとつの希望だ。
平安末期。飢饉(ききん)や疫病や戦が続いた「末法の世」に、
民衆に向き合って広まった浄土信仰の例もある。
未曽有の経済危機で人々の心に苦しみが広がるこの時代こそ、
人々と仏教がつながる糸口があるように思うのだが。
毎日新聞 2009年05月31日 00時05分



