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今日の人197.中川博司さん [2020年09月10日(Thu)]
 今日の人は児童発達支援・放課後等デイサービス「ミックスベリー」管理者の中川博司さんです。
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ミックスベリーは富山市平岡に昨年10月に開所した障害がある子ども向けの放課後等デイサービスです。4500uの広い敷地には築150年の古民家「いいとも広場」や広い畑もあり、利用者だけでなく、地域の人たちとも交流できる場になっています。
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いいとも広場
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いいとも畑

 中川さんは昭和46年3月に福岡町で生まれました。家の周りは田んぼだらけだったので、小川で魚をとったり野良猫を追いかけたり仮面ライダーごっこをしたり、とにかく外遊びばかりしていました。中川さんが子どもの頃はまだゲームと言えばウオッチマンくらいだったのです。家族はみんなヤクルトファンで、中川さんも杉浦亨選手の大ファンでした。ヤクルトが優勝した時は家族でヤクルトで乾杯したものです。
その頃、笑っていいともや俺たちひょうきん族などフジテレビの番組がテレビ界を席捲していました。テレビからスタッフの人たちの笑い声が聞こえてきて、とても新鮮な感じがしました。「楽しくなければテレビじゃない」というキャッチフレーズも心に響いて、中川さんは大人になったらフジテレビのカメラマンになりたいという夢を持ちました。

 中学校ではブラスバンド部に入ります。最初はサッカー部に仮入部したのですが、中学入学当時は142cmだった中川さんはサッカー部で3年過ごしても活躍できる余地は少ないなと感じたのでした。小学生の時から縦笛が得意で音楽の先生にも一目置かれていたので、ブラスバンド部の方が自分を生かせると感じたのですね。選んだ楽器はユーフォニアムでした。ユーフォニアムはいろいろなメロディが吹けてソロ部分もあってとてもやりがいのある楽器だったのです。
中学校で身長が30pも背が伸びた中川さんは女の子にも結構人気があったようです。部活の仲間や学級委員の仲間と一緒に誕生日パーティをしたり、川遊びをしたり、とても楽しい中学生時代を過ごしました。

 高校は地元の福岡高校へ。開校間もない入学当時は吹奏楽部がなかったので部活には入らず、勉強中心の生活になりました。理系だった中川さんが好きだった教科は数学と物理です。といっても、ずっと勉強ばかりしていたわけではありません。友達と高岡に出て遊んだり、青春18きっぷを使って京都に遊びに行ったりもしていました。

 そして富山大学工学部電子情報工学科へ入学。大学では1年生の時から車に乗り、オーケストラ部に入ってクラリネットにものめり込みました。大学時代はとにかくクラリネットと車とそしてバイトに明け暮れていました。バイトはいろいろやりました。レストランや居酒屋、結婚式場、イベント会場等、中でもいちばん長かったのはテレビ局のアルバイトです。記者とカメラマンの補助をしていたのですが、普段入れないところにも入れて、とても刺激的でした。でも、同時に思いました。やはりテレビ局のカメラマンというのは難しい仕事で、おいそれと目指せるものではないと。

 大学の4年間はとても楽しく、クラリネットに没頭したことで一つのことを極める楽しさも知りました。当時工学部の学生には一人当たりに20社ほどの求人がありましたが、中川さんはどんな生き方をしていくべきか悩んでいました。テレビ局のカメラマンはあきらめていましたが、このまま企業に就職するのはどうなんだろう、もっと自分の視野を広められることはないか、そう思っていた時に見つけたのが青年海外協力隊員だったのです。これだ!と思った中川さんは青年海外協力隊に応募し見事に合格。こうして研修期間を経て、青年海外協力隊員としてインドネシアに派遣されることになったのです。インドネシアでの派遣先は肢体不自由者リハビリセンターでした。ここで初めて福祉の世界と出会った中川さん。インドネシアで出会った障害を持った貧しい生徒たちの笑顔と元気さが中川さんが福祉に携わる原風景です。

 インドネシアに行く前はインドネシアに行ったら精神疾患になる人が多いから気をつけてと言われたけれど、中川さんはとても充実した2年間を過ごすことが出来ました。協力隊に行く前に言われたのは、理想を高く持ち過ぎていくとしんどくなるから、自分のできることをやるというスタンスで行けということでした。実際、大学を出たばかりの中川さんは現地で教えることより教えられることの方が多いと感じた2年間でした。

 こうして協力隊を終えて帰ってきた中川さんはこの先も福祉の世界で生きていこうと心を決めていました。
そして就職先に選んだのは、立ち上がって2年目の障害者支援施設いみず苑でした。それまでの障害者支援施設はコロニー型で人里離れたところにあることが多かったのですが、いみず苑は県内で初めて平野部にできた障害者支援施設だったのです。若い職員がとても多くてみんなが施設をよくしようと意気込んでいました。その時掲げられていたのは「ノーロックで利用者主体」というとてもわかりやすいスタンスでした。そこに向かってみんなが一つになれたのです。やがて、さまざまな仕事を任されていく中で、地域支援も担当します。地域生活体験ホームも作りましたが、施設自体が壁になって、その壁を乗り越えるのが大変だと痛感しました。施設からではなく、地域から変えていかないといけない、その時そう痛感したのです。そんな時に出会ったのが惣万佳代子さんが創設された富山型デイサービスの「このゆびとーまれ」でした。
「お年寄りはお年寄りの施設」「障がい者は障がい者の施設」と仕切りを作るのではなく、おじいちゃんも、
おばあちゃんも、こどもたちも、赤ちゃんも、障がいがあってもなくても、いろんな人たちが一緒に楽しく過ごす・・・そんな福祉サービスが「富山型デイサービス」です。(このゆびとーまれのホームページより)
 地域を知ろうと地元の特養ホームで1年働いたあと、このゆびとーまれで13年半働いた中川さん。
できることもできないこともあっていい、お互いがお互いを補って現場を作り上げる心地よさが共生型福祉にはありました。一方で高齢者福祉の現場では、例えば転倒のリスクを減らすために、床に一滴の水も落とすな等、専門性を突き詰めることもあり、職員の心理的負担は多い。それは取りも直さず利用者のストレスにも直結するのです。障害福祉の現場にも同様の話は意外と多い。じゃあ、福祉って何だろう?中川さんは考えました。例えば、よそ見をして食事が進まない子に、職員が自立を促す声掛けをする。そんな姿をよそに、一緒に生活しているおじいちゃん、おばあちゃんは、優しい声をかけて食べさせてくれたりする。いろんな愛情を受けることで人の生活は豊かになる。それは床に水一滴すら落とすな、という現場では体感できない感覚です。利用者だけでなく、福祉に携わる人が福祉って楽しいという心の余裕がないところでどうやっていい福祉ができるのでしょう。強みも弱みもお互いに補える環境でチャレンジしていきたい、そしていつまでも惣万さんたち富山型の先駆者に頼っているのではなく、自分たちでチャレンジしていきたい、それが惣万さんたちに対しての恩返しにもなる。そんな中川さんの熱い思いが素敵な場所と素敵な人との出会いを引き寄せ、今の場所で放課後等デイサービスミックスベリーを開所する運びになったのです。

 昨年の10月に開所して来月で1年を迎えるミックスベリー。スタッフと忌憚なく話し合える関係もとても心地よく、みんなそれぞれ好きなことをやれていると感じています。今まで好きな生き方をしてきたから、自分の子どもたちを含めて次世代のために何かしていきたい。惣万さんたち大先輩が築いてきた大事な共生型福祉を次世代へちゃんとバトンをつないでいけるように。自分に与えられた使命のようなものがあって、残りの人生でやらなくてはいけないと思っています。でも、それは肩に力を入れてやるのではなく、自分もスタッフもそして利用者もみんなのQOLを大切にしながらやっていきたいと思っています。

 そんな中川さんが今、楽しいことは1400坪ある敷地の中にみんなが遊べる空間を作ったり、DIYでいろいろなものを手作りしたりすること。ワクワクな空間がどんどん増えています。
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中川さん手作りのバスケットゴールやBBQ台が置かれています

 いつか時間ができたら、かつて青年海外協力隊で2年を過ごしたインドネシアにいって、のんびりしてみたい。奥さまと一緒に家でビールを飲みながら、ゆっくりそんな話をする時間も大切にしています。

中川さんたちの活躍で、富山の共生型福祉はこれからもっともっとワクワクする場になっていくことを予感させる、そんなインタビューでした。
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明るくて開放的な雰囲気のミックスベリー
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