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民間公益の増進のための公益法人等・公益認定ウォッチャー (by 出口正之)

日本の民間公益活動に関する法制度・税制は、10数年にわたって大きな改善が見られました。たとえば、公益認定等委員会制度の導入もその一つでしょう。しかし、これらは日本で始まったばかりで、日本の従来の主務官庁型文化の影響も依然として受けているようにも思います。公益活動の増進のためにはこうした文化的影響についても考えていかなければなりません。内閣府公益認定等委員会の委員を二期六年務めた経験及び非営利研究者の立場から、公益法人制度を中心に広く非営利セクター全体の発展のためにブログをつづりたいと考えております。


出口正之

名前出口正之
2024年10月17日変更
国立民族学博物館名誉教授/特定教授。及び総合研究大学院大学名誉教授(Charities Studies。特に公益法人を含む非営利法人に関するAnthropology of Policy)
内閣府公益認定等委員会常勤委員、大阪府公益認定等委員会委員長、政府税制調査会特別委員、国際NPO・NGO学会(ISTR本部米国ジョンズホプキンス大学)会長、公益財団法人助成財団センター理事長などを歴任。
現在、

公益財団法人公益事業支援協会大阪支部長
『公益・一般法人』編集委員長
「民都・大阪」フィランソロピー会議議長
関西大学客員教授
The School of Public Policy and Legal Studies, Chanakya University, Bengaluru.India 学術顧問
IFR4NPO(International Financial Report for Non-profit Organizations)PAG member


 
私は、『公益法人の活動と税制』(清文社1986年)をはじめ、一貫して非営利の世界を研究してきました。ジョンズ・ホプキンス大学の国際フィランソロピー研究員(所長レスター・サラモン教授)に日本人として初めて指名され(1991‐92)、ソ連崩壊後、世界で非営利組織が誕生していく興奮をジョンズ・ホプキンス大学で目の当たりにしました。ジョンズ・ホプキンス大学が世界的に展開した国際比較非営利団体プロジェクト(ICNPO)にメンバーとして加わり、国際的な研究を国内に紹介し続けました。
 
 他方で、研究生活を送る一方、26才から公益法人にどっぷりとつかり、事務局員、主任研究員(英語名program officer)、事務局長、専務理事、理事、評議員、外国の組織(国際学会)の会長を務めた経験があります。とりわけ90カ国近い会員を有するISTRは世界の非営利組織の研究者の学会であり、アジア人として初めての、そして今でも唯一の会長職を務めました。その理事会では他国の研究者と朝から晩まで議論を行うことが数日続き、NPO組織実務の真剣勝負の世界でもありました。いわば非営利・公益組織の活動を「フィールド」とした研究者でもあり、ある意味では、社団・財団をともに知る公益法人の「たたき上げ」でもあります。
 ISTR会長だった2006年には、ISTRの世界大会を初めてアジア(バンコク)で開催し、タイ王国のシンリントン王女のご臨席を賜りました。

 こうした経験も含めて、1988年に「試験研究法人等」から「特定公益増進法人」へと変わる現場、その際の実務、昭和52年公益法人会計基準、昭和60年公益法人会計基準、平成16年公益法人会計基準に関する実務も承知しています。
 民博の教授だった、自公連立政権下の2003年に税制調査会特別委員となり、民主党連立政権で委員全員が入れ替わった2009年まで務め、その間、政府税制調査会の社会分析であるわが国経済社会の構造変化の「実像」について非営利法人課税ワーキンググループ報告書さらに公益法人の税制が大転換した答申に直接深く関与してきました。
 とりわけ、「わが国経済社会の構造変化の「実像」について」は政府税制調査会史上出色の報告書だと高く評価しております。これこそが公益法人の税制改革を推進させる契機となったものだと思っております。

 さらに、公益認定等委員会発足に当たっては、自公連立政権時代に第1期の非常勤委員、民主党連立政権時代の第2期に常勤委員となって、悪名高い平成20年度公益法人会計基準、同じく悪名高いが実はすぐれたガイドライン作成にも関わりました。2013年に民博に戻るまで、公益法人制度改革に集中しておりました。

 この間、財務省職員、初期内閣府職員らの制度を作り上げるときの情熱的で英知に満ちた営みに深く感動も感謝もしております。それだけに公益法人制度が現在誤解されていることに非常に残念に思っております。

 現在では、制度、政策と文化、あるいは会計と社会との関係を学際的に探る「Anthropology of Policy」に関心を寄せています。

また、大阪府、大阪市の特別参与を務めていたことから、学校法人、社会福祉法人、公益法人、NPO法人の各理事長が構成員となった非営利セクターの包括的会議体である「民都・大阪」フィランソロピー会議の議長でもあります。
  
最近の研究成果としては 以下のものがあります。
出口正之・藤井秀樹編著2021『会計学と人類学のトランンスフォーマティブ研究』清水弘文堂。なおこの本は学術書としてはおそらく日本では初めてブック・ローンチ・ビデオと銘打ったYouTubeを作成しております。

https://youtu.be/iWbT9j3K7Ck

また、共編著者の会計学の藤井秀樹先生も京都府公益認定等審議会の委員を長らく務められた方であることからわかる通り、研究の契機は公益認定等委員会での議論が契機となっています。この点については、大阪のボケ・ツッコミも交えた下記YouTubeで説明しております。

https://youtu.be/SAFBoVUYOyw

また、出口正之2018『公益認定の判断基準と実務』(全国公益法人協会)。は公益法人関係者などに向けた書籍です。

出口正之(2020)「公益法人税制優遇のルビンの壷現象:価値的多様性と手段的多様性への干渉」非営利法人研究学会誌、公益社団法人非営利法人研究学会 Vol.22、pp1-14 

出口正之(2018)「『理念の制度』としての財務三基準の有機的連関性の中の収支相償論」非営利法人研究学会誌、公益社団法人非営利法人研究学会 Vol.20、pp1-13 

出口正之. (2017). 法人形態から見た 「チャリティ・公益法人制度」 の国際比較: 非営利の法人制度と会計を巡っての政策人類学的比較研究. 非営利法人研究学会誌, 19, 31-40.

出口正之(2016)「“クリープ現象”としての収支相償論」非営利法人研究学会誌、非営利法人研究学会 Vol.18、pp29-38 (査読あり)

Cordery, C., & Deguchi, M. (2017). Charity registration and reporting: a cross-jurisdictional and theoretical analysis of regulatory impact. Public Management Review, pp.1-21.

Deguchi, M., (2017), Philanthropy in Ogawa, A. (Ed.).. Routledge Handbook of Civil Society in Asia. Routledge. pp.390-406.

Deguchi, M. (2016). Globalization, glocalization, and Galapagos syndrome: Public interest corporations in Japan. Int'l J. Not-for-Profit L., 18, 5. May 2016 pp.5-14

などがあります。

また、近年では国際非営利会計基準IFR4NPO策定に関してのPAGメンバーとして、国際的な非営利会計の議論に参加しております。


なお、ブログでの発言はすべて個人的な見解です。