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民間公益の増進のための公益法人等・公益認定ウォッチャー (by 出口正之)

日本の民間公益活動に関する法制度・税制は、10数年にわたって大きな改善が見られました。たとえば、公益認定等委員会制度の導入もその一つでしょう。しかし、これらは日本で始まったばかりで、日本の従来の主務官庁型文化の影響も依然として受けているようにも思います。公益活動の増進のためにはこうした文化的影響についても考えていかなければなりません。内閣府公益認定等委員会の委員を二期六年務めた経験及び非営利研究者の立場から、公益法人制度を中心に広く非営利セクター全体の発展のためにブログをつづりたいと考えております。


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公益法人行政の真の問題は「審査の文化」か。諸外国の審査文化(Rebuttable Presumptionの原則)の導入を [2025年12月24日(Wed)]

今般、公益法人行政の問題点を改正し、公益法人を活性化させるために、公益法人の法制度の改正が行われました。素晴らしい内容です。新しい公益信託についても公益法人と同等の仕組みがなされる予定です。


 「令和6年公益法人の概況及び公益認定等委員会の活動報告」がこのたび公表されました。これによると、制度改革前とはいえ、令和5年12月1日から1年間で公益法人の認定はわずかに78法人。さらに、解散、認定取消し、合併で減少した法人数を差し引けば、1年間で僅かに35法人しか増えていません。公益法人制度改革の中心であった、民間有識者による認定という制度で、国地方併せて約250人も民間人がかかわって、税金からの250人もの人件費を支払って、僅かに35法人しか公益法人が増えていない実態をどう考えているのでしょうか?実際の行政の事務局員の人件費や各種経費まで考えれば、委員側から強い懸念の声があがってもおかしくないですが、外から見ている限り、そうした声も聞こえてきません。その要因は行政側というよりも、委員会側にあるのではないかという強い懸念を有しています。


 さらに仔細を見れば、1年間で僅か公益認定の申請は99法人、取下げが実に32法人。対比をとれば、約3割が取り下げていることになります。

 申請数の少なさは「都市伝説」の流布などがあってやむを得ないものがあるかもしれませんが、その「都市伝説」にもめげずに申請して来た法人を、質問攻め・提出書類攻めにしているのは、「制度」というよりも、「委員会の審査の文化」という側面もあろうかと思います。海外のチャリティ委員会等で日本の制度を説明すると、「なんでそんなに担当者や委員がたくさんいるのか」という同じ質問を何度も受けてきました。


 制度改革については、内閣府は実に頑張ってくれました。改正に当たっては、情報を公開しつつ、意見提出を求め、とりわけ問題が多いと指摘されていた「財務三基準」の制度を思い切って柔軟化してくれています。あれだけの改正作業を行いえたのは、日本の公益活動を活発にしたいという強い思いがあったものと思います。問題は、その制度をしっかりと運用できるか否かにかかっているでしょう。単刀直入に言えば、委員会側が「審査の文化」を変えられるかどうかにかかっていると思います。


 米国では数万から数十万の公益の団体が、毎年、誕生していますし、英国の一部に過ぎないイングランドとウエールズでも、毎年、数千の公益の団体が、同じような認定の制度で誕生しています。


 米国でも財務上の規制はありますが、これについては、Rebuttable Presumptionの原則がとられています。つまり、一応は申請書に記載されていることは正しいとして審査し、余程合理的な矛盾があった場合に、それを覆すことができる(Rebuttable)前提(Presumption)として審査しています。


 日本の場合にも、明文化されてはいませんでしたが、非常に厳しい罰則規定を背後に持っているため、申請書の内容は真だと考えて差支えはなかったわけです。委員会側が、十分に合理的な疑いをもつ場合に、再度確認すればよいものと、法社会学的には解釈可能だったはずですし、実際当初はそういう運用がなされていたと思います。


 ところがいつの間にか、例えば、奨学金財団に対しては、途中で資金ショートしたら学生が気の毒だからという過度のパターナリズムから、寄附予定者が本当に寄附できる資産があるかどうかを確認するために、預金通帳の写しや確定申告書の写しなどをとっていた実態があったことが政府関係資料から明らかになっています。

 それどころか、「ガバナンスを重視せよ」と言いながら、理事会で議論すべき内容にまで平気で口を出す事例もここかしこで散見されます。


 その結果、4か月で認定するという標準処理期間は、大幅に伸び、1年を超えるような申請法人も出てきてたわけです。これでは、途中で取り下げる申請法人が3割にもなることもうなづけます。


 内閣府は「制度面」で何とか、手を打ってくれましたが、「申請書が真であるかを確認するような審査」の文化を変えない限り、どのような制度の下でも同じ結果になる可能性は否定しきれないと思います。公益法人の制度は、委員に対して行政は口出ししにくい制度ですので、国地方の委員会のおかしな点はことあるごとに民間が注意を促すことが大事だと思います。何か不安を抱える法人に対しては、公益認定を諦めさせることが委員会の役割だと思っている委員もいるのではないかと思います。実際に、公益法人を増やす必要はないとまで断言していた委員もいました。


 このような中で、新しい公益信託制度が公益法人と同じスキームでスタートすることになります。こちらはもっと深刻です。信託契約が行政庁の認可を停止条件としてはじめて成立するからです。数か月や一年以上かかっていたのでは、委託者と受託者の関係にひびが入りかねません。ましてや遺贈の場合はどうなるのでしょうか?


 委託者が信頼(トラスト)のもとに、受託者にお願いしているのに、受託者が信頼できるか否かを委員会が判断するなんてことはあっていいはずがありません。


 「柔軟・迅速」。かつて内閣府公益認定等委員会のキャッチフレーズだったものです。これを是非思い出し、一日も早い認定・認可をしていただけるようお願いいたします。


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財務三基準の「都市伝説」の原因は何だったのか:コンプライアンス・クリープと民間の責務 [2025年12月19日(Fri)]

 公益法人のいわゆる財務三基準については、誤解が広がり、「都市伝説」とまで言われていました。「財務三基準があるから、○○ができない」という公益法人の声にあふれていたともいえます。


 こうしたことに関して、内閣府の対応は立派でした。まさに清水の舞台から飛び降りる覚悟で、財務三基準を大幅に柔軟化する公益認定法の改正を行い、公益充実資金、公益目的事業継続予備財産の創設を導入し、、「収支相償、遊休財産保有の制限、公益目的事業比率」の財務三基準は、「中期的収支均衡、使途不特定財産保有の制限、公益目的事業比率」の財務三規律へと柔軟化されました


 また、内閣府は法改正に先立ち、財務三基準に対する間違った行政庁の指導の相談窓口までを設置してくれていました。


 さらに、今回の法改正に当たって、柔軟に対応することを期待して旧ガイドラインに具体的な基準等を示さなかった規律が「行政庁や担当ごとに指摘がバラバラである」等々の指摘を受けたことから、「ガイドラインには細かく書かないという考え方を改め、@法人や国民など利用者から見て、分かりやすく予見可能性が高いものとする、A行政による恣意的又は硬直的な運用を抑制する、B事前の審査より事後のチェックを重視するという観点から、ガイドラインの全面的な見直しを行った」として、全244頁の大部な新ガイドラインとなっています。


 このように「都市伝説」の原因を、政府側がしっかりと受け止めて、大幅柔軟化につながったものです。


 しかし、果たして「都市伝説誕生」の原因は行政側だけにあったのでしょうか?「柔軟に対応することを期待して」という部分を十分に理解しないままに、例えば、特定費用準備資金の規程等は、とても運用できない内容で法令上の縛り以上に厳しい規程が民間サイドで流布していたことも否めません。「羹に懲りて膾を吹く」ことになりかねず、過剰なコンプライアンス意識が公益法人の活発な活動を阻害してきた例はたくさん見られます。「昨年まで認められてきた方法を今年も繰り返す」というマンネリ化こそ、一番の安全運転だからです。


 このように、法令で求められる以上の規制を民間側が課すことを、学術上「コンプライアンス・クリープ」と言います。「コンプライアンス・クリープ」は、なにも日本だけに見られる現象ではありませんが、今回は政府が大幅な柔軟化を成し遂げてくれています。それに対応するように柔軟化を図り、民間側はコンプライアンス・クリープに陥らないように努力する責務があるでしょう。


 しかし、民間の士業の方々が、ガイドラインをしっかりと読みこんで、柔軟な運用が可能な最低限の規程を提案しても、行政庁が修正を求めるようなことも過去にはありました。今回のガイドラインには、そのようなことがないように釘を刺してくれていますが、士業の方が太鼓判を押したものを万一行政庁が否認してしまえば、士業の方は信用や仕事を失いかねません。どうしても安全運転への誘因が働いてしまうでしょう。


 民間側には常に挑戦的な心意気と、行政側にはガイドラインの十二分な理解と自制によって、はじめて「都市伝説」が払しょくされることでしょう。


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