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民間公益の増進のための公益法人等・公益認定ウォッチャー (by 出口正之)

日本の民間公益活動に関する法制度・税制は、10数年にわたって大きな改善が見られました。たとえば、公益認定等委員会制度の導入もその一つでしょう。しかし、これらは日本で始まったばかりで、日本の従来の主務官庁型文化の影響も依然として受けているようにも思います。公益活動の増進のためにはこうした文化的影響についても考えていかなければなりません。内閣府公益認定等委員会の委員を二期六年務めた経験及び非営利研究者の立場から、公益法人制度を中心に広く非営利セクター全体の発展のためにブログをつづりたいと考えております。


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公益法人こそ新公益信託制度に貢献せよ [2025年10月26日(Sun)]

 全く新しい公益信託の制度が来年4月1日から始まります。


 現在、内閣府において、「新たな公益信託制度の施行準備に関する研究会」や「公益信託制度改正に伴う事業検討ワークショップ」が立ち上がり、ガイドライン案や申請の様式案がほぼ出来上がり、まもなくパブリックコメントに付されます。


 現在の公益信託ガイドライン案はA4で234頁にわたる大部なものです。


 また、様式集案も非常に複雑なものです。


この間、内閣府の関係者や研究会、ワークショップの関係者の並々ならぬ努力には頭が下がります。


一つの制度を作り上げることに、これほどまでに精力的に活動していただいていることにまずは深く感謝したいと思います。


公益信託は、大正時代の信託法によって出来上がった制度ですが、実は50年間は全くの「眠れる森の制度」でした。これに生命の息吹を与えたのは、一人の信託マンと総理府(当時)のお役人でした。


 しかし、この制度は受託者は信託銀行に限られていたうえ、旧公益法人と横並びの、悪名高い「主務官庁制度」によって、総合的な政策の中の制度とはならずに、このところ制度の持続性も風前の灯となっていました。


 旧公益法人制度は、2006年に法改正されましたが、その時、公益信託はおいておかれたままでした。


法制審議会がようやく2018年に「公益信託法の見直しに関する要綱案」を発表しましたが、これもまた放置されていました。



公益法人が再度の改正を行うにあたって、昨年、改正公益認定法とともに、新公益信託法が成立し、来年の施行を待っている状態です。


「眠れる森の制度」が信託マン等によって覚醒してから、さらに50年以上の月日が流れました。


繰り返しになりますが、この間の関係者のご尽力には大変なものがありました。


受託者には個人、各種非営利法人、営利企業を含め誰もが成り得るようになり、金銭の拠出以外の活動もできるようになった上に、主務官庁制度をなくしたことから、内閣府公益認定等委員会や地方の合議制機関が、公益信託契約を認可するという「公益法人スタイル」がとられています。


 その結果、先のガイドラインや様式集に関する知識のある方は、士業の方たちにも、信託銀行の関係者の中にもそう多くはいません。また、これらの大量の資料を読み込み理解可能とする時間を割ける方も決して多くはないでしょう。


 しかし、公益法人関係者だけは別です。申請のスタイルや各種規制は公益法人に準じていますので、ガイドラインもたやすく理解可能なはずですし、すでに知識を有しているといってもよいほどです。


 言い換えれば、日本の社会の公益の増進のために、多くの方が汗を流したこの制度を、各方面に活かすには、公益法人関係者が、まさに公益のために汗をかくことが不可欠であると信じます。


 公益法人は、損得でこの制度を考えるのではなく、明治以降の民間公益活動の中心であるとの矜持をもって、様々な受託者等への協力・助言を含めて、この制度を素晴らしいものにするために、ひと肌脱いでいただきたいと思います。


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ついにINPAS(国際非営利会計基準)が公表される [2025年10月21日(Tue)]

 かねてより、本ブログで日本でほぼ唯一ご紹介し続けたIFR4NPO(International Financial Reporting for Non Profit Organizations)がかねてより検討をしていたINPAS(国際非営利会計基準)が公開されました。


 考えてみれば、私も約6年にわたって関わってきた関係で感無量です。


 IFR4NPOは、より強固な組織として、INPRF(The International Non-Profit Reporting Foundation)という財団(米国で非営利法人化、さらに英国では外国法人として登記)として生まれ変わりました。


 この基準は、非営利団体の財務報告における一貫性そして信頼性を劇的に向上させることになると思います。非営利団体は、数十もの異なる資金提供者の要件を順守する代わりに、明確な基準を用いて報告できるようになりました。財務情報の比較が可能になり、寄付者の信頼が高まり、非営利団体チームの負担が軽減され、信頼が強化されることが期待されます。


 INPASは、助成金収入の認識方法、制限付き資金の報告方法、監査済み会計報告書の作成方法、そして助成金報告の統一化など、非営利団体に必要なあらゆる事項を網羅しています。INPASは、確立された国際的な枠組みに基づき、非営利団体の実際の運営に根ざしています。


日本の非営利会計基準の考え方とは以下の点で大きく異なっていると考えます。


1.使用する非営利組織側の視点から作成されたこと。

2.最大のステークホルダーである、政府への報告とは切り離されて議論されたこと。

3.IFR4NPOプロジェクトには、6年以上の年月をかけ、繰り返しの意見表明期待を提供し、多少なりとも関与した者は15,000人以上の個人と3,500以上の組織になり、そのことで正当性を担保していること。



 日本の非営利法人会計は混迷の度を深めていると思います。監査する側が主体で議論が進行する日本の非営利法人会計の考え方にとっても極めて示唆に富むものと思います。


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フィランソロピーにおける日本のプレゼンスの低下から脱せよ [2025年10月19日(Sun)]

 アジアのフィランソロピー活動がこのところ非常に活発化してきています。AVPN(アジアベンチャーフィランソロピーネットワーク:本部はシンガポール)の大会が、先月香港で約1550名の出席者を集めて開催されました。AVPNのこのところの隆盛は大いに賞賛されるべきものですが、背景には社会貢献にかかわる人の増加や社会課題解決に対する意気込みの増加等があるものと考えられます。


 実は日本においても、岸田内閣における「新しい資本主義実現会議」で同種のことは議論されていました。公益認定法の改正の趣旨もこのような潮流に適応できるようにしたいという意図があったことが、閣議決定の文書からも読み取れます。


 会議の大盛会を受けて、日本から会議に出席した人たちを中心に、AVPNグローバルカンファレンス報告会がありました(主催AVPN,笹川平和財団)。


AVPN報告会.jpg



 日本からは、1550名の参加のうち、約50名の参加があったようです。そして、日本のAVPN参加者から異口同音に語られたことは、アジアの熱気に感銘を受けたことと、それに比べての日本のプレゼンスの低さでした。


 特に財団の参加は、日本財団及びその関係財団である、笹川平和財団、社会変革推進財団

トヨタ財団くらいでこの数年全く変わっていないという嘆き節に近いものでした。


 1990年代初頭、アジア地区の財団連携を強く提唱したのは、日本国際交流センターの代表理事だった、故山本正さんでした。当時は、フィランソロピーにおける日本のプレゼンスは絶大なものがありました。アジア地区のフィランソロピーの発展のために日本の財団が尽力することを呼び掛けていったものでした。


 それから30数年。


 日本の財団関係者(理事・評議員の方々を含む)、政府関係者、金融機関関係者等は、一度はこうした会議に出席されることをお勧めします。アジア(だけではないのですが)のフィランソロピーの熱気を感じていただきたいと思います。そして今回の制度改革を活かした民間公益活動の活性化とはどうあるべきかについて様々に議論がなされることに期待いたします。また、行政庁もそれを邪魔しないようにしていただきたいものです。


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