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民間公益の増進のための公益法人等・公益認定ウォッチャー (by 出口正之)

日本の民間公益活動に関する法制度・税制は、10数年にわたって大きな改善が見られました。たとえば、公益認定等委員会制度の導入もその一つでしょう。しかし、これらは日本で始まったばかりで、日本の従来の主務官庁型文化の影響も依然として受けているようにも思います。公益活動の増進のためにはこうした文化的影響についても考えていかなければなりません。内閣府公益認定等委員会の委員を二期六年務めた経験及び非営利研究者の立場から、公益法人制度を中心に広く非営利セクター全体の発展のためにブログをつづりたいと考えております。


公益法人会計基準案についての意見募集開始 [2024年11月18日(Mon)]

 内閣府が公益法人会計基準(素案)についての再度の意見募集を開始しました。



意見募集要領 (PDF/98KB) PDF【案文】「公益法人会計基準(素案)」 (PDF/322KB) PDF【案文】「公益法人会計基準の運用指針(素案)」 (PDF/1.3MB) 

 地味で退屈な本ブログが、実にもうすぐ百万ビューを迎えます。感無量ではありますが、思い起こせば本ブログを書く契機となったのは、実は「公益法人の会計に関する研究会」(以下「会計研究会」)に対する不信感からでした。


「議事録どころか議事要旨も全く公開しない、会計関係者だけが構成員」という状態が何年も続いていた研究会でしたが、本ブログの度重なる抗議が影響したのかどうかまではわかりませんが、近年改善され、今回の公益法人会計基準案の作成には、こうした研究会運営上の明確な問題点はなくなっています。


 良いものができたかどうかはともかく、議論もしっかりと公開されています。また、中間で意見も募集されました(意見募集実施期間:令和 6 年 5 月 27 日〜6 月 26 日)。


 さらに、「事務局では、内閣府で所管されている公益法人について、サンプリングの調査を100法人に」実施したことも議事録で明らかにされています(第70回会計研究会議事録)


 度重なる指摘がなされながら修正されていない部分もあれば、募集された意見や研究会の議論を踏まえて改善されたところも数多くあります。


 国際的な非営利会計基準案作成も関わっている小生から見て、根本的なところで異見のある内容ではあるにせよ、手続き面だけではなく、「一つの考え方」に則って整合的に作成された案となっているものと思います。


 だからこそ、「一つの考え方に則って整合的に作成された案」について公益法人の方々、とりわけ、平素の会計実務に係わっている方々の率直なご意見が重要になってくると思います。


 「制度は与えられるものではなくて、作り上げていくものだ」という気概がないと、いつまでたっても振り回されてしまうだけでしょう。


 会計については、「不正」と「誤謬」の区別がつきにくいものです。実務家の皆さんの声こそ重要になるものと思います。


 ぜひ多くの方々が、ご意見を表明されることが大切だと思います。

また、基準案の本文だけで長文になり大変ですが、議事録も是非参考にしながら、コメントをされることをお勧めします。


 というのも「結論の背景」について研究会で記載したほうがよいという意見があったにもかかわらず、記載しないということになったようです。その理由が議事録に記載されているからというものでした(第70回会計研究会議事録)

 

 議事録もしっかりとお読みになるにことをお勧めします。(第71回会計研究会の議事録は今後公開されると思います)。


なお、議事録にはロックがかかっており、コピペができません。可能ならば、このロックも外していただければ幸いです。


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チャリティ委員会(「公益認定等委員会」)の国際会議が開催 [2024年11月14日(Thu)]

 このほど、オーストラリア、カナダ、イングランド・ウェールズ、アイルランド、北アイルランド、スコットランド、シンガポールのチャリティ委員会の代表と事務局、および米国からはオブザーバーという形で関係者が3日間ロンドンで会合を開きました。このほどその概要がわかりました。

 日本風に言えば、公益認定等委員会関係者の国際会議といっていいと思います。また、対象の団体も各国の法律が異なりますが、以下、「公益法人」、委員会も「公益認定等委員会」という用語で解説してみます。


 実はこの会合、小生が大阪府の公益認定等委員会委員長を務めているときにも、アジアにも拡大したいということで参加依頼がありましたが、残念ながらコロナで中止されました。


 リアル開催は2019年以降初めてだったようです。小生は、同委員長退任後でもあるので、政府関係者限定の会合ということで、残念ながら、今回は参加していません。


 現在の世界情勢を考えると、世界の「公益法人」の活動がこれまで以上に重要になっていることを確認、「公益法人」は、社会の適応を可能にし、世界中の何百万人もの人々の生活を改善し、分裂があったところで団結を支援し実現してきた長い歴史を持っています。世界で最も困難な問題の解決策を見つけるためにセクター間で協力している「公益法人」は、健康、環境、動物福祉の問題を前進させる世界クラスの研究、科学的努力、政策変更の基礎となっています。


 また、「公益法人」は各国内の法律で規制されますが、公益の現場に国境は関係なく活動しています。こうしたことからも、もうずいぶん前から


 人類が世界の課題に直面している今、各国の「公益認定等委員会」が協力することがこれまで以上に重要であるという点で合意しました。これらの課題には、ボランティア活動のパターンの変化を伴う社会環境の変化、気候変動と自然災害の増加、生活費の圧力によるサービス需要の高まりと組織の運営コスト、そして大規模な紛争で人々を支援する必要性などが含まれます。これらの課題が拡大するにつれ、生活を改善しコミュニティを結びつける「公益法人」の重要な役割がさらに重要になっているという認識に立っています。「公益法人」とより広範な非営利セクターは、あらゆる社会問題の最前線に立っています。


 「公益認定等委員会」当局は、効果的で専門的な規制が「公益法人」の繁栄に重要な役割を果たし、公益法人の活動に対する国民の信頼と自信につながっている例を共有しています。「公益認定等委員会」当局は、この会議で知識とベストプラクティスの交換を通じて共通の目標に向かってそれぞれ改善を行おうするために、会議では、4 つの主要なテーマが取り上げられました。


1.「公益法人」の認定と「公益法人」としての地位

 公益認定は、新しい「公益法人」と理事にとっての新しい段階の始まりであり、「公益認定等委員会」の役割の核心は、真の申請者が公益目的を達成することができるように効率的で効果的な決定を下すことができるよう情報交換しています。


2.デジタル、テクノロジー、データ

 「公益認定等委員会」当局は、新しいデジタルテクノロジーを提供する挑戦のさまざまな段階にありますが、各国で特に重点が置かれているのは、オンラインサービスを使用して「公益法人」の理事との関係を強化し、「公益法人」に最高のガイダンスとツールを提供し、規制の効率性を高めることです。「公益認定等委員会」当局は、最近のイノベーションの提供の経験と、各国の「公益法人」がどのように対応したかについて話し合い、それぞれの将来の計画に役立てようとしています。


3.広報活動:コミュニケーション、教育、および公共の信頼

 「公益認定等委員会」当局は、ソーシャル メディア、イベント、ガイダンスを使用して「公益法人」、特に従来は連絡が取りにくかったり知識が少なかったりする「公益法人」との関わりを強化するためのアプローチに多くの共通点があることを確認しました。


4.コンプライアンス

 「公益認定等委員会」当局として、FATF=金融活動作業部会の基準(世界的なマネーロンダリングやテロ資金供与と戦うためのもの)への準拠を支援する役割を担っていることが確認されました。


 国境を越えて多額の民間公益資金が流れており、世界で最も弱い立場にある人々に重要なサービスを提供するこの分野の活動への資金が悪用されないことが議論されました。


 「公益認定等委員会」当局は、「公益法人」がコンプライアンス上問題を生じさせた事例に関する世界的な傾向と、規制権限の使用を通じてこれらにどう対処してきたかを検討しました。国際的に重要な最近の国内事例について議論することで、真のコンプライアンスを遵守する「公益法人」の大多数に損害を与える可能性のある共通の問題を特定できたようです。


 FATFの問題もあるのでしょうが、今後4半期ごとにオンラインの会合を持つようです。


 日本の公益認定等委員会にとっても参考になるものと思います。


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「公益認定等に関する運用について(公益認定等ガイドライン)(素案)」等に対する意見募集開始 [2024年11月04日(Mon)]

「公益認定等に関する運用について(公益認定等ガイドライン)(素案)及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律施行規則の規定に基づく内閣総理大臣が定めるものを定める件」に対する意見募集が開始されました。


 今回のガイドライン策定プロセスでは、ガイドライン研究会が設置され、かなり丁寧な手続きを経て、ガイドライン案が作成されました。中間的なもの(素案イメージ)を発表して、意見を募集したり、第5回ガイドライン研究会では議事要旨を作成する前にわずか数日で、さらに第6回研究会では即日に、その時その時のガイドライン案を含む資料を発表し、外部へできるだけ早く情報提供をしようとしていた姿勢や研究会で出された意見を反映しようとする意図が明確に感じられました。


 また、中間的なもの(素案イメージ)で出された意見についても、研究会でフィードバックしながら、この種の意見募集としてはかなりのものを取り入れたり、取り入れなかった理由を研究会で公表しながら現在の案があると思います。


 これまでいろんな文書を参照しなければ公益法人制度の全体像がつかめなかったことから、ガイドラインという形で様々な文書を今回一か所にまとめたこともあって、A4で234頁にも及ぶ大量の書類となっています。


 できるだけ多くの公益法人関係者やそれ以外の方々が意見提出することが期待されているものと思います。本来ならば、国民全体にその受益が及び国民の関心が高くなって当たり前の公益法人に関してあまりにも無関心層が多いことが公益法人が活発に活動している他国と比べて大きな違いの一つになっているものと思います。


 ガイドライン案は本ブログの考えと著しく異なる部分ももちろんありますが、ある意味では社会全体の雰囲気を反映している部分もあると思います。このガイドライン案を見て本ブログの考え方を社会全体に広げていく必要性も痛感しているところです。


 できるだけ多くの方が、語義の質問を含めて多くのご意見を出されることがより良き制度や誤解のない制度へ近づく第一歩だと思います。


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