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民間公益の増進のための公益法人等・公益認定ウォッチャー (by 出口正之)

日本の民間公益活動に関する法制度・税制は、10数年にわたって大きな改善が見られました。たとえば、公益認定等委員会制度の導入もその一つでしょう。しかし、これらは日本で始まったばかりで、日本の従来の主務官庁型文化の影響も依然として受けているようにも思います。公益活動の増進のためにはこうした文化的影響についても考えていかなければなりません。内閣府公益認定等委員会の委員を二期六年務めた経験及び非営利研究者の立場から、公益法人制度を中心に広く非営利セクター全体の発展のためにブログをつづりたいと考えております。


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公益財団法人東京子ども図書館名誉理事長 松岡享子さんが文化功労者に [2021年10月28日(Thu)]

 今年の文化功労者が発表されました。


 小生の先輩である石毛直道国立民族学博物館教授が文化功労者に選ばれたことももちろん嬉しいのですが、学者は数多く選ばれ、大学共同利用機関の名誉教授が選ばれることは毎年のようにありますので、それほどの驚きはありません。


 むしろ、公益法人の研究者としては、松岡享子さんが文化功労者として選ばれたことがとても嬉しく思います。


 松岡享子さんは、東京都中野区のご自宅に家庭文庫「松の実文庫」開設。その後、1974年に『ノンちゃん雲に乗る』などの児童文学者の石井桃子さんらとともに、財団法人東京子ども図書館を設立し、理事長となりました。


以来、絶え間ぬ努力を続けられ2015年6月任期満了をもって退任し、現在は名誉理事長でいらっしゃいます。


その間、同財団は、2010年に公益認定を受け、公益財団法人となっています。


(詳しくは東京子ども図書館の「松岡名誉理事長と当館(注 東京子ども図書館)について」 をご参照ください。

https://www.tcl.or.jp/kyokomatsuoka/tcl/


 つまり、公益法人の創設者であり、このブログの読者と同じご経験やご苦労をされている方でもあるのです。


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本日の折々のことば [2021年10月16日(Sat)]

 朝日新聞一面の鷲田清一さんの「折々のことば」。


今朝は猪木武徳さんの次の言葉です。


「制度というものは、はっきりした欠陥が見つからない限り軽々に改革すべきではない。」


噛みしめて頂きたい方々がいます。


https://blog.canpan.info/deguchi/archive/253


https://blog.canpan.info/deguchi/archive/254



まして極度の「思い込み」だけで制度を変え、多くの人に迷惑をかけてはいけません。

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2021年の国際公益法人不正喚起週間が来週から始まります。 [2021年10月14日(Thu)]

 国際公益法人不正喚起週間が来週10月18日から22日にまで開催されます。公益法人と同等の団体(以下「公益法人同等団体」という)、監督当局その他の非営利団体のパートナーシップによって運営されるキャンペーンで,英国のチャリティ・コミッションや米国の非営利組織の税法上の規制機関であるIRS,オーストラリアのコミッション 、等がキャンペーンに参加しています。


 このキャンペーン週間の目的は、非営利セクター不正やサイバー犯罪防止に対する認識を高め、公益法人同等団体とその支援者が不正について話し、不正防止のための行動を共有し安全性を高めることを目的としています。


 内外の不正者によって公益法人同等団体は犯罪の対象とされています。残念ながら国内でも横領等の事件はありますし、現時点では国内では多くはないと思いますが、サイバー犯罪に対しても常時意識しておくことが大切でしょう。


日本はこのキャンペーンは入っていませんが、内閣府でもこれまで




と二つのパンフレットをまとめて留意喚起しています。

非常に参考になると思います。


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会計研究会のヒアリングが始まりました。誰が分かりにくいのですか? [2021年10月12日(Tue)]

 前回、公益財団法人公益法人協会の意見書を取りあげましたが、すでにヒアリングを終えその第48回公益法人の会計に関する研究会議事録.pdfされています。以下その議事録からです。


〇研究会委員「私は監査法人に所属しておりますけれども、公益法人会計に初めて携わる会計士も、このような処理は仕組みとしてどうなっているのだということで、なかなかすぐには理解できないような会計処理になっているという事実もございます。

 こういった中で、作成者側としては確かに浸透しているというのは間違いないかと思うのですけれども、財務諸表の利用者側の観点から、この分かりやすさという点で、特に御懸念をお感じになるところはないでしょうかというところについてお伺いさせていただければと思います。よろしくお願いいたします。」

(中略)

〇公益法人協会「先ほども申し上げました受託者責任を全うするという意味では、この財産は寄附者ないしは出捐者から預かっているものだということを明確に示すことができて、その財源を使った都度一般に戻して使うということはむしろ分かりやすくて、受託者、出捐者、寄附者に対しての説明もむしろしやすくて、利用者から分かりにくいという話は、私は今まで十数年この協会におりますが、一切聞いたことはございません。


同意見の繰り返しは実は平成16年会計基準改正時にも行われています。まさにデジャヴュです。


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公益財団法人公益法人協会が会計研究会ヒアリングに対する意見書を公表 [2021年10月08日(Fri)]

そもそも誰のための何のための改正なのか?


公益法人協会による全面否定



【内閣府公益認定等委員会公益法人の会計に関する研究会(以下「会計研究会」という)ヒアリング「活動計算書」への名称変更に伴い検討すべき事項】に関する意見を公益財団法人公益法人協会が公表しています。存在感を示しております。


非常に的確な意見だと思います。


日本の公益法人制度は法制、税制、会計もバラバラです。番場資金収支会計時代にはそれなりの共通性がありました。それが、近年、制度間での差が拡大し大きな混乱を招いています。例えば「非営利法人会計の混迷」(長谷川哲嘉 2012)という論文が発表されています。これとまったく同様のタイトルで”Nonprofit Accounting Mess”(Anthony.R.N 1995)が米国で出版されたのは1995年のことです。日本の非営利の会計が法人間で異なるのは、前世紀から同じなのに日米の「混迷論文」の時間差は気になるところです。法制、税制のバラバラな状態を温存したまま会計だけを無理に統一しようとすれば、どうなるのかを端的に示しているようにも思います。


さて、余談はここまでにして、早速、公益法人協会の意見を解説を加えながら見ていきましょう。



@会計の基本的考え方特に「比較可能性」について

 会計研究会の提案では比較可能性が強調されています。これは企業会計の財務報告の考え方を踏襲したものです。市場のグローバル化が進む中で投資家や金融機関が企業の財務状況を把握するのに、比較可能であることが重視されるようになりました。そのことによって初めて投資の判断などの「意思決定有用性」が生まれるというものです。つまり、どの法人へ投資するのが有利か(M&Aを含めて)、どこの企業に貸し出すのが間違いないかを探る上では、確かに比較可能性は企業においては「意思決定有用性」において意味があるかもしれません。


 これを企業会計の専門家は「一般目的」と呼んでいます。少しでもアカデミズムに身を置くものにとって、「一般性」を主張するというのは非常に勇気のいることです。「一般目的」という慣用用語だからといって、それが投資家もいなければ、従来規制のため金融機関借入がほとんどなかった非営利組織にも妥当するのかどうかについて全く検証がなされていないからです。この部分も非営利法人に適用可能とするのは「妄想」に近い部分といってよいでしょう。 


 公益法人協会は、比較可能性などの意思決定有用性を「優先度が低い」と否定しています。当然のことと思います。


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