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民間公益の増進のための公益法人等・公益認定ウォッチャー (by 出口正之)

日本の民間公益活動に関する法制度・税制は、10数年にわたって大きな改善が見られました。たとえば、公益認定等委員会制度の導入もその一つでしょう。しかし、これらは日本で始まったばかりで、日本の従来の主務官庁型文化の影響も依然として受けているようにも思います。公益活動の増進のためにはこうした文化的影響についても考えていかなければなりません。内閣府公益認定等委員会の委員を二期六年務めた経験及び非営利研究者の立場から、公益法人制度を中心に広く非営利セクター全体の発展のためにブログをつづりたいと考えております。


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国際非営利会計基準策定プロジェクト [2020年08月30日(Sun)]

企業会計の国際財務報告基準(IFRS)、公会計の国際公会計基準(IPSAS)に対して非営利組織の国際会計基準が存在しないことから、すでにお伝えした通り、現在、大規模な国際非営利会計基準(IFR4NPO)策定プロジェクトが進行しております。

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これは大規模な学術調査により、世界の179か国の72%の調査対象団体が、国際的な非営利専門の会計基準を望んでいるという結果からスタートしています。言い換えれば、現行の国際基準に対して多くの団体が違和感を覚えているということでしょう。


同調査ではイングランド&ウェールズでは現金主義会計を使用している登録チャリティが80%近くに上っていることが明らかになっています。


本報告書の中の世界全体での調査では24%が現金主義会計です。

8%が一部発生主義を取り入れた修正現金主義型会計で、発生主義会計は68%となります。


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ガバナンス有識者会議の中間とりまとめ素案の公表 [2020年08月28日(Fri)]

 ガバナンス有識者会議中間とりまとめ素案議事概要が公開されました。

8月31日に会議としての案を決定して9月早々にはパブリックコメントが求められると思いますので、公益法人内でよくご検討をお願いいたします。


 なお、外部から強い圧力があった中で、現行の会計監査人の適用法人の規模が定められたことに関しては、合理的な理由があります。


 これを下げようとしていることに関しては、経済的には、公益法人側の負担増、会計監査人側の収入増という関係が成立します。十分な理由とその負担増に見合うものがあれば、問題はないと考えますが、果たしてその負担増に相当するメリットが公益法人側にあるのかよくご検討下さい。とりわけ、コロナ関係で各法人が疲弊していることも勘案する必要があろうかと考えます。


 いずれ議事録が公開されると思いますので、是非、しっかりとお読みください。


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国際シンポジウム「東アジアの非営利組織をめぐる法・会計・文化 ――普遍性と個別性」のお知らせ [2020年08月17日(Mon)]

国立民族学博物館主催のZOOMによるオンライン国際シンポジウムのお知らせです。本来は中国から3名、台湾から1名の参加の予定でしたが、諸般の事情から下記のような簡易版となりました。


実務に直接結びつくものではありませんが、ご関心があれば、ご参加ください。


「東アジアの非営利組織をめぐる法・会計・文化 ――普遍性と個別性」と題しています。

詳しくは下記をご覧ください。

https://www.minpaku.ac.jp/research/activity/news/rm/20200828



基調報告は、「政策の人類学を展望するー−市民社会を分析レンズとして」

小川晃弘(メルボルン大学教授)先生にお願いしております。

小川先生はコーネル大学でPhD(人類学)を取得後、ストックホルム大学を経てメルボルン大学教授に就任し、人類学の国際的ジョブマーケットで勝ち抜いてきている方で、今回文化人類学者が非営利組織を研究する点について素晴らしい基調報告の論文をご準備頂いております。




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「正直で不正を起こさせないための会計」基準の議論を [2020年08月14日(Fri)]

非営利法人の会計の日本のおける乱立ぶりは甚だしいものがあります。

公益法人会計基準(平成20年、16年、昭和60年)、NPO法人会計基準、学校法人会計基準、社会福祉法人会計基準、医療法人会計基準、病院会計準則…。なんとかか統合した方が良いではないかという総論は誰も反対できないと思います。


ところが、そういったとたん別のロジックが出てきます。多様なステークホルダーのための「一般目的」の財務報告、比較可能性のある基準で効率的な運営ができるようにと。

これらは企業会計で使われるお題目です。つまるところ、投資家や金融機関向けの一般的な財務報告なのですが、翻って非営利の「一般目的」とは何なのでしょうか?


コロナのことで医療関係者は大変な思いをしていますが、コロナに対応した病院は経営が悪くなるようです。受け入れ態勢を整え、一人の患者に多くのスタッフがかかわることになります。それでも、社会的に意義があるから、医療機関の使命として頑張ってくれています。他方で他の患者への感染を恐れてコロナ患者には来てくれるなという病院もあるでしょう。


それぞれの病院は確かに比較可能な会計基準によって何らかの財務情報は財務諸表に反映されてくるでしょう。しかし、それらを比較して外部のステークホルダーはどのように行動の意思決定をしたらよいのでしょうか?


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オーストラリアのチャリティ委員会委員長のメッセージ [2020年08月11日(Tue)]

 英語でred tapeとは、お役所仕事のことをいいます。

イギリスでは法律文書など赤い布のテープで結んでいたことから、皮肉を込めたニュアンスで使われることは周知のとおりです。


 オーストラリアのチャリティ委員会委員長が、チャリティ・セクターに向かって、「red tapeを減らせ」とメッセージを出しました。


 チャリティ委員会の目的の一つは、非営利部門における不必要な規制のための義務の削減を促進することだと述べています。


 そして、このように締めくくっています。「チャリティ(≒公益法人)が地域社会を支援するために行っている本質的な活動に参加できるようにするためには、規制上の負担を軽減することが重要である。」



 日本においても、立法趣旨や民間の有識者が関与する委員会制度を採用している以上、この点は言わずもがなのことでしょう。


 ガイドラインを作成したときの公益認定等委員会の議事録はすべて公開されていますが、議論されている内容も全て不必要な作業を減らせということの点については一貫しています。


 ただこの点は言い続けないと、だらだらと書類を増やす側に委員会が変身しかねません。

大阪府の委員を務めている自らも参考としたいメッセージです。


 法人の皆様も、「公益の増進のためにその書類本当に必要なの?」と行政庁に問い続けてみてください。


内閣府公益認定等委員会事務局長に清水正博氏就任 [2020年08月01日(Sat)]

8月1日付で内閣府公益認定等委員会事務局長に清水正博氏が就任した。


清水氏は内閣府公益認定等委員会の第2代目の総務課長で、「公益の増進」という立法趣旨がまだ浸透していた初期の頃、要職についていた方である。


総務課長時代に、何よりも東日本大震災の直後に、委員長メッセージを素早く発したことは特筆に値する。


民間の公益活動への発意を迅速に応援していこうという思いも強かった。


毎年のように起こる大水害、新型コロナ禍による未曽有の社会変化、まさに公益ニーズは非常に高まりを見せている。新規認定申請、変更認定申請が次々とあってよいはずである。


傍目から見ても部下への接し方も柔和で事務局員が能力を発揮しやすい環境を作っていたのではないだろうか。


公益法人制度はとても使えない」と多くの人が思うようになってしまった閉塞感を打ち破るエースの登場だと期待したい。