全く新しい公益信託の制度が来年4月1日から始まります。
現在、内閣府において、「新たな公益信託制度の施行準備に関する研究会」や「公益信託制度改正に伴う事業検討ワークショップ」が立ち上がり、ガイドライン案や申請の様式案がほぼ出来上がり、まもなくパブリックコメントに付されます。
現在の公益信託ガイドライン案はA4で234頁にわたる大部なものです。
また、様式集案も非常に複雑なものです。
この間、内閣府の関係者や研究会、ワークショップの関係者の並々ならぬ努力には頭が下がります。
一つの制度を作り上げることに、これほどまでに精力的に活動していただいていることにまずは深く感謝したいと思います。
公益信託は、大正時代の信託法によって出来上がった制度ですが、実は50年間は全くの「眠れる森の制度」でした。これに生命の息吹を与えたのは、一人の信託マンと総理府(当時)のお役人でした。
しかし、この制度は受託者は信託銀行に限られていたうえ、旧公益法人と横並びの、悪名高い「主務官庁制度」によって、総合的な政策の中の制度とはならずに、このところ制度の持続性も風前の灯となっていました。
旧公益法人制度は、2006年に法改正されましたが、その時、公益信託はおいておかれたままでした。
法制審議会がようやく2018年に「公益信託法の見直しに関する要綱案」を発表しましたが、これもまた放置されていました。
公益法人が再度の改正を行うにあたって、昨年、改正公益認定法とともに、新公益信託法が成立し、来年の施行を待っている状態です。
「眠れる森の制度」が信託マン等によって覚醒してから、さらに50年以上の月日が流れました。
繰り返しになりますが、この間の関係者のご尽力には大変なものがありました。
受託者には個人、各種非営利法人、営利企業を含め誰もが成り得るようになり、金銭の拠出以外の活動もできるようになった上に、主務官庁制度をなくしたことから、内閣府公益認定等委員会や地方の合議制機関が、公益信託契約を認可するという「公益法人スタイル」がとられています。
その結果、先のガイドラインや様式集に関する知識のある方は、士業の方たちにも、信託銀行の関係者の中にもそう多くはいません。また、これらの大量の資料を読み込み理解可能とする時間を割ける方も決して多くはないでしょう。
しかし、公益法人関係者だけは別です。申請のスタイルや各種規制は公益法人に準じていますので、ガイドラインもたやすく理解可能なはずですし、すでに知識を有しているといってもよいほどです。
言い換えれば、日本の社会の公益の増進のために、多くの方が汗を流したこの制度を、各方面に活かすには、公益法人関係者が、まさに公益のために汗をかくことが不可欠であると信じます。
公益法人は、損得でこの制度を考えるのではなく、明治以降の民間公益活動の中心であるとの矜持をもって、様々な受託者等への協力・助言を含めて、この制度を素晴らしいものにするために、ひと肌脱いでいただきたいと思います。

