公益法人行政:内閣府令等改正手続き上の法令違反について
[2019年05月08日(Wed)]
公益認定委員会「10年の振り返り」に対する疑問
こんなことが起こるのではないかと思っていました。 本ブログでたびたび指摘しておりますが、内閣府の公益認定等委員会運営規則.pdfでは個別法人に関わることを除いて公益認定等委員会の議事録は公開することになっています。 ところが、このところ公益認定等委員会運営規則に違反する形で議事録を公開せずに、委員会が開催されてきました。「新公益法人制度10年を迎えての振り返り」報告書(以下「報告書」という)も議事録が公開されないままに、公表されてしまいました。 報告書は今後の制度改革の基礎資料となりそうな重要な報告書なのですが、驚いたことに間違いだらけなのです。完全な間違いをわかりやすい順に列挙します。
新公益認定等委員会に期待したい
内閣府の公益認定等委員会委員7名のうち、5名が入れ替わりました。 まさに、令和の時代にふさわしい新生の委員会といってよいでしょう。 委員の方々におかれましては大変な重責ですが、民間の公益の増進という立法趣旨に則ってその重責を果たしていただけるものと思います。 なにしろ、公益法人関連三法の条数だけで868条、政令、府令、法務省令さらに新公益法人会計基準、ガイドライン、申請書の手引きなど参照すべきものが格段に増えています。新委員ばかりではなく、事務局も含めて全容を理解することは決してたやすいことではないと思います。
施行規則の一部を改正する府令案及びガイドライン改正案に対するパブコメ募集
内閣府が公益認定法の施行規則の改正案及びガイドラインの改正案についてパブリックコメントを募集しています。 締切は3月5日です。 かねてより認定等委員会委員が問題視していた控除対象財産の6号財産の果実に対しての変更です。「特定費用準備資金の運用の点検及 び遊休財産額算定の際に控除される財産の明確化」として、緩和策と規制強化策を同時に行う中で出てきたものと思います。
大いに期待したい節目の年の内閣府公益認定等委員会
早いもので本年12月には現行の公益法人制度の施行10年を迎えます。10年という年月を考えれば「新」公益法人制度という言い方も躊躇されるようになってきたのではないでしょうか。 この節目の年に公益法人協会の雑誌『公益法人』1月号に山下徹内閣府公益認定等委員会委員長が「新年の御挨拶」と題した一文を載せています。 そこでは「この法律においては、その目的に『民による公益の増進と活力ある社会の実現』が掲げられ、民間の団体が自発的に行う公益を目的とする事業の重要性が指摘されました」と立法趣旨を確認しています。 その上で「『初志』と言うべき上の目的を改めて肝に銘じ、業務に励んでまいりたいと思います」と述べています。たいへん有意義な言葉で、大いに期待したいものです。
全国申請状況の公表を止めたのはなぜ?秋田県、奈良県、高知県は申請ゼロ?
内閣府は「新公益法人制度における全国申請状況」を毎月発表していましたが、今年3月末の数字を発表した後、発表を取りやめてしまっています。 内閣府のことですから、背後に公表をやめるだけの合理的理由があって、その理由は、民間の「公益の増進」に資するものと考えますが、その理由が小人の頭にはとんと浮かんできません。 唯一小人の頭で考えられる理由は、少しでも業務を減らしていこうということなのでしょうが、この数字は、巨額の税金を使って作り上げたPICTISというデータベースで簡単に作成されるものです。したがって、過度な業務を減らすためという理由は想像できません。言い換えれば、公表のコストはほぼゼロのはずです。
公益認定等委員会の英文名称について
多くの人にとってどうでもいいことかもしれませんが、小生にとっては重大なことを少し書きます。深読みしていただけるとありがたいなと思っています。
小生の認定等委員会時の名刺の裏には、Public Interest Corporation Commissionとあります。公益認定等委員会の英語呼称については、PICCやPIC Commissionとして、定着しかけていました。ところが、あるとき内閣府のホームページを見たところ、Public Interest Commissionと変わっていました。平成25年5月8日に、英文ホームページのリニューアルがあり、その時に変わったようです。そこで、事務局に問い合わせをしたところ、「平成25年5月の委員会での正式決定による」とのことでした。委員会で決定したのであれば仕方ありません。しかし、あまり納得がいかなかったので、「英文名称を変えるのでしたら、もう少しはっきりと広報してもらえないでしょうか」と頼んでみたところ、平成26年1月27日に以下のようにホームページにアップされたのです。
故丹下甲一氏を悼む
第三期後半(2月6日以降)の委員会及び事務局に大いに期待しましょう
委員会の好転
「公益法人の会計に関する研究会」の「公益法人の会計に関する諸課題の検討状況について(最終報告書素案)」が出て、多少唖然としていますが、意見募集がされていることもあり、そのことは、別の機会に書かせて頂こうと思います。今回は、最近の委員会が良い意味で変わってきたのではないかということについて触れます。
「内閣府公益認定等委員会委員による公益法人訪問」(以下「法人訪問」という)の第一回として、公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)への法人訪問が実現し、このほど議事要旨が公開されました。これまでも「公益法人の自律と活性化に向けたヒアリング等の実施」(以下「ヒアリング」という)として、委員会は法人との対話を行っていましたが、スタンスが大きく変わったように思います。 「ヒアリング」は委員会会議室で行っていました。好意的に解釈すれば、委員会の一環として行なったということでしょうけれども、来てもらっていたというか、呼びつけていたわけです。議事要旨から見られる内容は問い質しのように感じます。委員会と法人との関係は、そういうものだと言えばそういうものですが、垂直的関係は歴然です。 それに対して「法人訪問」はその名の通り、委員が法人への訪問を行い、現場を見て「お互いの問題意識等について理解を深めるための活動としての『法人との対話』を推進」しようとすることを謳っています。言い換えると、権力主義的な傾向が全く抜けて、「民による公益活動の増進」という目標に向けての水平的関係がこれまた明確に出ています。 さらに議事要旨を比べると、委員会側の発言が「ヒアリング」では「委員等」という独特の官僚表現になっており、委員会と事務局の関係は如何かという邪推をしたくなるような要素もありました。さらに、「外部理事を入れていくことが必要」という法人側の発言を根拠に「法人の理事会や監事、評議員会等の機関に外部の人材を登用するなど、より積極的に外部の視点を導入していくことが、極めて重要です」という「公益法人の自己規律について」(全柔連への勧告と同時)を全法人に発し、読みようによっては官僚OBの受け入れを慫慂しかねないメッセージともなっていました(深読みしすぎでしょうが)。 他方で「法人訪問」では「(理事会と評議員会の開催に2週間期間を設けることについて)規定の趣旨は、情報開示の期間を設けることにあり、法定の制度であるのでご理解いただきたい」「収支相償の規定の趣旨は、提供された資金・資産を最大限公益に使っていただきたいということにある」という委員側の発言を見ても、規定の趣旨を丁寧に説明しようとしている姿勢がうかがえます。法人との関係において「ヒアリング」とは明らかに大きな変化が見えるように感じるのは私だけでしょうか。単なる議事要旨の書き方かもしれませんが、一事が万事、それを含めた委員会と事務局の関係にも改善がみてとれるようにも思います。 何か角が取れた委員会の今後の活動に大いに期待したいものです。 |
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