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民間公益の増進のための公益法人等・公益認定ウォッチャー (by 出口正之)

日本の民間公益活動に関する法制度・税制は、10数年にわたって大きな改善が見られました。たとえば、公益認定等委員会制度の導入もその一つでしょう。しかし、これらは日本で始まったばかりで、日本の従来の主務官庁型文化の影響も依然として受けているようにも思います。公益活動の増進のためにはこうした文化的影響についても考えていかなければなりません。内閣府公益認定等委員会の委員を二期六年務めた経験及び非営利研究者の立場から、公益法人制度を中心に広く非営利セクター全体の発展のためにブログをつづりたいと考えております。


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1号財産と6号財産の違い他:内閣府規則等の改正案の影響 [2019年02月24日(Sun)]

公益法人に対する規制強化の内閣府規則等の改正案がパブリックコメントの対象となっていることは、以前お伝えしました。


公益認定等委員会・会計研究会についてはそれぞれ議事要旨しか公表されていませんし、内容については公表資料に頼るしかありません。


議論は十分なのでしょうか?


株式を有している公益法人の方々には影響が大きそうです。必ずパブリックコメントに回答してください。


@ 問題意識は公益参考資料【お知らせ】平成29年度公益法人の会計に関する諸課題の検討結果について+(2).PDFが公表されました。この中で以下のような記述があります。


「これまでは、金融資産の運用益については、寄附者の意思により使途が指定される(指定正味財産となる)場合もあると整理され、その結果、当該運用益が6号財産に繰り入れられてきた状況にある。上記のような実態を是正するためには、まずは具体的な事例の提示や分かり易い表の作成等により、各控除対象財産の趣旨や内容を明確化し、法人の理解を醸成することから始めるべきである。加えて、今後、公益目的事業に係る収入と公益目的事業に要する費用の均衡及び遊休財産の保有制限等を定めた制度の趣旨を徹底する観点から、控除対象財産として、一定の時期に特定の公益目的事業へ支出することが求められる特定費用準備資金をより活用することにより、資金が公益目的事業に使われることを担保することが考えられる。この場合の特定費用準備資金の活用に関し、その条件等がどのようなものであるべきかについては、更なる検討が必要である。また、公益目的事業に使われるべき財産を法人が自覚の下に適切に管理し、公益目的事業に着実かつ計画的に充てていくために必要となる法人のガバナンスの在り方についても合わせて考えていく必要がある。」



【内閣府の問題意識】

「運用益が6号財産に繰入れられてきた」ということが遊休財産規制との関係で問題視していることのようです。


【解決までの手続き】

「各控除対象財産の趣旨や内容を明確化し、法人の理解を醸成することから始めるべき」と考えているようでした。ところが私が探した範囲で、この部分が明示されていません。


【解決予想案】

「控除対象財産として、一定の時期に特定の公益目的事業へ支出することが求められる特定費用準備資金をより活用することにより、資金が公益目的事業に使われることを担保すること」とありましたが、今回特定費用準備資金を活用することについては触れられておりません。


したがって、今回の府令改正がどのような考察のもとに実施されようとしているのかわかりません。これは法人側も困るでしょうが、行政庁側も大いに困ると思います。



A 現状はどうなっているのでしょうか?

私も内閣府公益認定等委員会をはなれて6年も経ちますので、現状がどうなっているのかわかりません。ただし、改正案を見る限りにおいて、「当該財産を交付した者の定めた使途に充てるためにあって、当該財産を交付した者の定めた使途に充てるために 保有している資金(第一号、第二号、前号又は本号に掲げる保有している財産から生じた果実については、相当の期間内に費消することが見込まれるものに限る。)」とあります。カッコ書きからすると6号の規定の変更ですので、控除対象財産の1号、2号、5号財産から生じた果実を6号財産としているという実態があったものと推認できます第34回公益法人の会計に関する研究会+議事次第及び資料.pdf4頁でもそのことが裏付けられます。制度設計時から見れば、理解不能な運用がなされていたのではないかと思います。



B控除対象財産 1号財産と6号財産の相違

 実態からすると相当もつれた糸を解く作業かと思いますが、まず、1号財産(公益目的保有財産)と6号財産の相違について、おさらいしておきましょう。

 認定法上の一番大きな相違点は、公益認定法施行規則第48条への効果です。わかりやすく言えば公益目的取得財産残額への影響=H表の記載に影響しておりました。これは当初、6号財産について果実が発生するほど長期間置くことを想定していなかったからだと思います。

 会計上の観点では、1号財産の運用益は経常収益として認識し、他方で6号財産の収益は経常外収益と認識するよう指導してきた(ないしは会計上の考え方として)可能性があります。もしそうならば、この点も大きな違いでしょう。いずれにしても、6号財産の定義を変更するならば、単に定義から演繹的に変更理由を述べるのではなく、6号財産とは何かを丁寧に説明する必要があると考えます。

 さらに、株式の配当金など毎年大きく揺らぐ収入がある中で、法人の活力を奪わないための緩和策の特効薬として6号財産が使用されてきた経緯もあります。

拙著や拙論文の中で繰り返し強調していたことですが、財務三基準は公益目的取得財産残額の計算を含めた「有機的連関性」を持っております。全体として相互にバランスを取りながら、公益法人の公益目的事業支出を穏やかに推進させるものです。一つを動かすと他のものにも必ず影響してきます。施行規則22条の改正で48条を動かさない場合に、どのような影響があるのかまず明らかにする必要があると思います。まして、48条を変更しないまま、H表の記載方法を前回の関係研究会の報告で変更しています。ここまで来ると、誰も正しい数字を記載できなくなる可能性があります。


C 収支相償との関係

会計研究会の資料には「当該果実は収支相償の対象とはならないが、遊休財産額規制の対象とすることで、公益目的事業における支出の増大を間接的に担保することが適当であると考える。」とありますが、今回のガイドラインの改正案にいかされているのか、無視したのか一切わかりません。

収支相償に対する考え方を明確にし、万一上記のような考え方になるとしたら、ガイドラインの収支相償の部分も変更しなければなりません。これも財務三基準の有機的連関性です。

いずれにしても法令規制なのか会計規制なのか、会計規制とした場合には、それを順守させる法的根拠は一体何かなど非常に奥深い問題が隠されています。


D公益法人への影響

収益事業を行っておらず、株式の運用だけに頼る公益法人の多くで株式を6号財産に整理したところは多くあるのではないかと思います。ガイドライン変更案には「具体的な費消時期が明らかでない場合や、費消の時期が10年を超えるような場合には、基本的に『相当の期間内に費消することが見込まれる』とは認められない。」とあります。しかしながら、株式の配当金は変動が大きく法人の安定的な運営にとって最も適した観点からの議論であると法人側に胸を張って主張している箇所がわかりません。むしろ、遊休財産規制を逃れている(どこかで聞いたセリフです)ので、あたかももぐら叩きのような改正案のように感じます。これでは法人側も影響は見通しにくいのではないでしょうか?

この数年、経済社会の状況の変化で、配当金の額を増やした企業はたくさんあり、それに連動する形で思わぬ配当金収入の増加のあった公益法人もあるでしょう。他方で、株式の場合には無配ということも起こりうる中で、立法趣旨(=公益の増進)全体を視野におさめて、最適な舵取りをしていく必要があります。

また、永代使用料を徴収している法人、公益認定されてしまった共済資産を運用する法人など、多種多様な公益法人への影響も考えないといけません。それゆえのパブリックコメントだとは思いますが。


Eもぐら叩きの末に

以前にも書き追記分も書きましたが、緩和策を考えながら、その延長線上で規制強化を繰り返してくことは厳に慎むべきです。公開の議論で作り上げた府令及びガイドラインを、あの程度の議事要旨で変更しては結局行政庁も困ってしまいます。規制を強化する場合には、もぐら叩きのように一つの規制だけを取り上げて変更するのではなく、公益の増進という立法趣旨の観点から財務三基準の有機的連関性を考慮し、法人への影響をしっかり見極め、法人の理解を得ながら行ってほしいものです。


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