休眠預金等活用審議会における
内閣府公益認定等委員会委員の公益法人関連の全発言
内閣府公益認定等委員会委員でかつ内閣府休眠預金等活用審議会委員(以下の「●●委員」と表記)が、内閣府休眠預金等活用審議会において公益法人に関連する全発言15箇所を公益認定法等との関係を明らかにしました。〇で囲まれた数字が関連の発言です。
【1.第9回休眠預金等活用審議会議事録平成29年12月15日】
○岡本参事官最初のほうでございますが、公益認定を受けるかどうかは、指定活用団体がどう判断されるかというところがありまして、例えば公益認定基準が18ありますが、そのうちのかなりの部分を指定基準の中に入れさせていただいております。あえて入れていないものが、4つほどございます。1つは6番目の収支相償、2つ目が遊休財産額の保有の制限、3つ目が社員資格の得喪に関する条件、16で不可欠特定財産、この4つを18の基準から、除かせていただいております。
公益認定を受けるということは、税の優遇を受けるということですので、その部分を受けるかどうかというのは、指定活用団体がそれを欲するかどうかというところがあると思っておりまして、外させていただいておりまして、もし受けるということであれば、当然収支相償みたいなものも要ると思うのですが、今のところ、そこはあえて外させていただいております。
収支相償の制度自体について、ソーシャルセクターの中で、様々な御議論があるというのは、十分承知しておりますので、そういう議論がある中で、指定活用団体をはめてしまうのが、初めからいいのかどうかというのは、指定活用団体が税の優遇を受けるかどうかとの見合いで、判断されてもいいと思ったのですが、ただ、それ以外のものは、ガバナンスとか、そういう観点から、基準が定められていると思いましたので、ここでは、入れさせていただいているという整理にしています。
(中略)
○●●委員公益認定等委員会の委員なので、公益法人のことについて、一言ですけれども、前回の説明のときに、分配団体以下が公益法人である場合、公益認定等委員会という別のガバナンスの方向のものが入るということを、お話しました。活用団体もそれでして、活用団体に@公益認定等委員会というガバナンスが入るということなので、ややこしくなります。
それと、財団である場合、寄附者の意思があれば、A遊休財産などの規制から逃れられるのですが、B多用途なことに、ここがやっていこうということなので、余り似つかわないのではないかと思っています。
逆に、分配団体以下の現場の団体のところに、NPOであれば、パブリック・サポート・テストを通って、税の優遇がとれるような、そういうことを伴走支援でやってあげたり、財団の場合、人数が足らないものですから、公益法人同士で、事務的に足らないようなところのサポートをしてあげるとか、そういうことをやってあげたほうがいいのではないかと思っておりまして、ここ自体は、C公益を通って、税のメリットをとるなどの優遇措置は役割としては、余り感じません。
発言@「ガバナンスがややこしくなる」とはどういうことなのでしょうか。
発言A そもそも休眠預金等活用法第29条の制約から遊休財産規制に抵触することはないと考えます。(遊休財産規制の)「規制から逃れられる」とは如何なる意味なのでしょうか?
発言B多用途であれば公益法人が「似つかわしくない」とは全く理解できません。
発言C申請団体が税のメリットをどう考えるかということに関して、委員ご自身の印象を述べているに過ぎません。
<出口解説>
この回の審議会は、指定活用団体の要件を一般財団法人とするか公益財団法人とするかということが話題になっています。本来ならば、公益法人となることによる効果等をしっかり議論すべきところですが、「ガバナンスがややこしくなる」とか、「税のメリットを感じない」とか、感覚だけで公益法人を嫌う議論を行っています。
【2.休眠預金等活用審議会議事録(第10回)平成29年12月26日(火)】
○駒崎専門委員遅れてきてしまったので、資料1について、皆さんで合意したにもかかわらず、申しわけないのですけれども、1点、資料1の3ページ、諸規程等に関する事項のGなのですが「事業を行うに当たり、株式会社その他の営利事業を営む者又は特定の個人若しくは団体の利益を図る活動を行う者に対し、寄附その他の特別な利益を与える行為を行わないことが諸規程等に整備されていること」とあるのですけれども、ニュアンスとしては、一部の利益のために頑張る人たちを応援しないということだと思います。例えばなのですけれども、みんなでコンソーシアムをつくるときに、SPCを株式会社形態でつくって、そこが社会事業を行うみたいなことのときに、これで読んでしまうと、
もしかすると、株式会社に助成してはだめだと読めてしまうと、ダイナミックなコンソーシアムに対して、お金を出さなくなってしまうので「事業を行うに当たり、特定の個人若しくは団体の利益のみの増大を図る活動を行う者に対し、寄附その他の特別な利益」云々とすれば、これが意図することに沿うのではないかと思いました。株式会社と言ってしまうと、株式会社全体に網がかかるので、それはいかがでしょうかということです。
○小宮山会長そこに関することで、●●先生、どうぞ。
○●●委員随分前に発言したと思うのですけれども、D一定の利幅であるとか、一定の配当以上はしないという、キャップのかけ方もあると思っています。そこのところを具体的にしていけばいいと思っています。
○小宮山会長これは株式会社と言って、だめにしてしまっているわけですか。
○駒崎専門委員「株式会社その他の営利事業を営む者又は」です。
○小宮山会長そこは絞り過ぎかもしれません。
○●●委員E例えば全国共通にバイイング・パワーを発揮するといったら、株式会社のほうがいいわけで、それがもうけ過ぎないようにするとか、インフラの上に、次にのせるものの料金設定とか、クーポンを安くしてもらうということもあり得ますので、そこの具体的な基準を幾つか書けばいいと思います。
○小宮山会長そこは御相談いただきましょう。
○岡本参事官機械的に公益認定の基準にかかわってきているだけで、支障があるようでしたら、見直させていただきます。
発言DE 駒崎氏並びに岡本参事官の発言から、本件は公益認定法第5条4号の特別の利益供与についてと同様の内容を諸規程等に盛り込むことを議論している箇所であると思料します。駒崎氏はその解釈に関する質問をしているのに対して、公益認定等委員会委員の発言は、まるで方向が異なります。
<参考>
公益認定法
第5条
四 その事業を行うに当たり、株式会社その他の営利事業を営む者又は特定の個人若しくは団体の利益を図る活動を行うものとして政令で定める者に対し、寄附その他の特別の利益を与える行為を行わないものであること。ただし、公益法人に対し、当該公益法人が行う公益目的事業のために寄附その他の特別の利益を与える行為を行う場合は、この限りでない。
公益認定等に関する運用について(公益認定等ガイドライン)
3.認定法第5条第3号、第4号関係<特別の利益>
認定法第5条第3号、第4号の「特別の利益」とは、利益を与える個人又は団体の選定や利益の規模が、事業の内容や実施方法等具体的事情に即し、社会通念に照らして合理性を欠く不相当な利益の供与その他の優遇がこれに当たり、申請時には、提出書類等から判断する。
なお、寄附を行うことが直ちに特別の利益に該当するものではない。また、「その事業を行うに当たり」とは、公益目的事業の実施に係る場合に限られない。
<出口解説>
ここは認定法第5条4号についての議論です。議論ではそのことを全く関係ない話をしています。なお、認定法第5条4号は、公益認定等委員会の認定において極めて重要な条文であり、委員の人は皆承知しているもの=いわば常識に相当するものと思っておりました。ガイドラインにあるとおり、営利企業が対象として除外されるということではなく、「選定」等がしっかりとした手続等に基づいていれば全く問題ありません。
<発言で認定法と唯一齟齬がなかった箇所>
○●●委員 これはかなり大きな話になってしまうのですが、25ページの認可なのですが、認可されなかった場合を考えておかなければいけないと思っています。F例えば公益法人であれば、認定の取り消しとか、そういうことが起こった場合には、どういうふうにしなさいというものがありまして、あくまでも1つの認定団体に続いていただくのが、理想なのですけれども、これはだめなのではないかということが起きたときに、どうするかということ、ここから先がまたあると思っています。まだ出すには早いですけれどもね。
発言F 特に問題はありません。
<出口解説>
公益法人は認定取消しの場合、当該公益認定の取消しの日から一箇月以内に公益目的取得財産残額に相当する額の財産を認定法第5条17号に掲げる法人又は国若しく は地方公共団体に贈与することになっており、この部分だけ公益認定法と齟齬がありません。
【3.休眠預金等活用審議会議事録(第16回)平成30年12月6日:一般財団みらい財団面接時】
○小宮山会長 他にはいかがですか。
これは一般社団法人の通則として、理事会の成立要件というのはどうでしたか。この団体に関して言えば、理事は3名ということですね。
○●●委員 G社団別に制約条項はございませんね。
○小宮山会長 1人でもいいのですか。
○●●委員 H極端な話、そうです。設立手続はですね。
○小河専門委員財団の理事の場合は3人以上ですよ。
発言Gこの団体=みらい財団の理事に関しての制約条件がないというのは意味不明。
<出口解説>この場面は面接直前に委員だけで事項の確認をしているところです。極めて重要な事実確認のところです。小宮山氏の発言は、社団についての質問ではなく、一般社団財団法での理事会の要件を確認的に発言していているものと思われます。「この団体」とは一般財団法人みらい財団です。好意的に解釈すれば、一般論として社団法人の設立についての質問と勘違いして、理事一人でもよいという文脈になったのかもしれませんが、文脈上は一般財団法人みらい財団に即しての質問であり、一般社団法人の話をしているとは思えません。
○●● (中略)
もう一点は、設立時の1億円は、これは立派なことで、認可前のお金は御自分たちで支弁していただくことが必要なのですけれども、この拠出者のみらい財団設立準備会という、Hちょっと変わった名前なのですけれども、この財団は設立準備のためだけに設立されたのだと思うのですが、もちろん皆さんとは別法人のことなのでわかりませんけれども、Iもしこの設立準備団体が、皆さんが指定になった後、何らかの取引を行うことによって資金を回収するというような可能性が生じるかどうかということを、皆さんのほうからどうお考えになるかということをお伺いさせていただけますでしょうか。
発言H 財団法人設立に設立準備会を前もって作ることは極めて一般的であり、この発言も意味不明。
発言I 設立準備会の通常の機能を理解していない発言。
<出口解説>
申請書からみらい財団設立準備会が、一般法上の一般財団みらい財団の設立者となります。上記の質問が間違いとまでは言いませんが、最初から詐欺を目的として申請するなどしない限り、設立準備会と設立後の財団との取引は通常は生じませんから、一般的には面食らう内容だと思います。
【4.休眠預金等活用審議会議事録(第16回)平成30年12月6日一般財団法人民都大阪休眠預金等活用団体面接時】
○●●委員今もおっしゃいましたように、公益法人を目指されるということなのですけれども、一般財団法人であってということで法は定められているのですけれども、ここで公益法人をとられるということが、まず、お聞きしたいことが1点です。
2つ目に、J仮に公益法人であったとすれば、公益目的事業のどこの区分でなさるのか。これは助成金の受け取り方の考え方によりますけれども、ここに書かれているように、K700億がありまして、初年度の助成に回される部分以外というのは、翌1年度以外の遊休規制からどういうふうに逃れられるとお考えですか。
○申請団体理事長
(中略)
もう一つは、遊休財産規制、●●さん、これが公益をとれなかったらだめですよ。遊休財産規制というのは、現に将来にわたって何に使うかわからないものが遊休財産として定義されているので、これは法律でちゃんとこの資金分配団体の助成に使うということは明らかでございますから、遊休財産規制に抵触することは全くないと思います。
○●●委員そこはL毎年計画の洗い直しをするので、そこは見解が違うかもしれないですけれども、M23区分の中では、現在、分配団体と現場の団体の属性で分けるのであれば、なかなかつくりにくくて、最後の23番目の府令のものしか残っていないのかなと思うのです。
○申請団体理事長男女共同参画その他のというものがありますでしょう。そこには必ず当てはまりますし、問題ないと思っております。
○●●委員公益目的事業1本ですか。
○申請団体理事長公益目的事業は1本です。別表のあれは幾つかですけれども、これは1本にまとめさせていただきます。
○●●委員 N1本だったら、わかりました。
発言KL 休眠預金の指定活用団体の資金は法律ですべて厳重に監視されています。将来何に使用されるか不明の遊休財産は発生しません。議事録等では削除されていますが、実際には、「遊休財産規制に引っ掛かる」と発言しています。
<出口解説>
当たり前の話ですが、休眠預金等活用法第29条から、休眠預金の資金については、その使途・運用先・取崩し方法まで厳格に法定されています。したがって、認定法上の遊休財産(≒何にでも使える財産で何にも使用していない財産)に相当するものは出てきません。遊休財産には入らない認定法上の控除対象財産に相当します。
発言M指定活用団体の事業が公益認定法における別表のどの部分に当たるかということに関して、最後の23番目の府令(実際には政令。23番目については政令で定められていない)のものしか残っていないとは、公益認定法上の公益目的事業に当たらない=公益認定できないという発言です。実際には、存在していない23号しかないという意味は、存在していないのでこれらから政令指定して認めるしかないとも、好意的に解釈できます。いずれにしても現行の1号から22号に該当するものがないという意味以外に理解できません。
<出口解説>
これは驚くべき発言です。認定法上の別表の23区分に該当するところがないと言っていることは、指定活用団体の事業が認定法上の公益目的事業にあたらないということです。また、最後の府令のところと言っておりますが、政令(府令ではなく政令)では定められておりません。申請団体理事長が主張するとおり、少なくとも、別表第14号「男女共同参画社会の形成その他のより良い社会の形成の推進を目的とする事業」に相当します。休眠預金の指定活用団体が公益ではないということになれば、公益認定可能な法人等は世の中からなくなってしまうでしょう。
公益認定法
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(略)
四 公益目的事業 学術、技芸、慈善その他の公益に関する別表各号に掲げる種類の事業であって、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するものをいう。
公益認定表別表
十四 男女共同参画社会の形成その他のより良い社会の形成の推進を目的とする事業
二十三 前各号に掲げるもののほか、公益に関する事業として政令で定めるもの
<注>現在23号関係については、政令は定められていない。
<出口解説>
当たり前の話ですが、休眠預金等活用法第29条から、休眠預金の資金については、その使途・運用先・取崩し方法まで厳格に法定されています。したがって、認定法上の遊休財産(≒何にでも使える財産で何にも使用していない財産)に相当するものは出てきません。遊休財産には入らない認定法上の控除対象財産に相当します。
発言N 公益目的事業が1本かそれ以上かによって別表該当性や遊休財産規制が変わりうるようにも読めますが、理論上それはありえません。テクニカル上の問題としてはないことはないですが、休眠預金等活用審議会で問う話ではありません。「1本だったら、わかりました。」ということについては全く意味不明です。
<出口解説>
公益認定申請時において公益目的事業をいくつ設定するかを休眠預金等審議会の面接で聞いてきています。テクニカルなところで、公益目的事業を細分化すると事務処理が難しいところがあります。しかし、本来、公益認定基準に適合するかしないかという点において、公益目的事業の数は中立的です。
<参考>
公益認定法
第5条 行政庁は、前条の認定(以下「公益認定」という。)の申請をした一般社団法人又は一般財団法人が次に掲げる基準に適合すると認めるときは、当該法人について公益認定をするものとする。
(中略)
九 その事業活動を行うに当たり、第十六条第二項に規定する遊休財産額が同条第一項の制限を超えないと見込まれるものであること。
休眠預金等活用法
(運用資金の運用等)
第二十九条 指定活用団体は、民間公益活動促進業務に係る人件費その他の内閣府令で定める事務に要する経費の財源をその運用によって得るために運用資金を設け、休眠預金等交付金のうち運用資金に充てるべきものとして交付を受けた金額及び第三項の規定により組み入れた金額をもってこれに充てるものとする。
2 指定活用団体は、次の方法による場合を除くほか、運用資金を運用してはならない。
一 国債、地方債又は政府保証債(その元本の償還及び利息の支払について政府が保証する債券をいう。)の保有
二 内閣総理大臣の指定する金融機関への預金
三 その他前二号に準ずるものとして内閣府令で定める方法
3 指定活用団体は、運用資金の運用によって生じた利子その他の収入金を民間公益活動促進業務に係る人件費その他の内閣府令で定める事務に要する経費に充ててなお剰余があるときは、これを運用資金に組み入れるものとし、当該組み入れた額を限度として、民間公益活動促進業務に必要な経費に充てるため、運用資金を取り崩すことができる。
4 内閣総理大臣は、前三項に規定するもののほか、運用資金の運用その他運用資金に関し必要な事項を定めることができる。
以上
コメント誠にありがとうございます。
小生が問題にしたのは、政府の審議会の場で発言された委員の発言内容だけで、委員に対して何ら悪様を言ったつもりはありません。なお、「北地達明」様名義の当該公的発言に対して問題を公に指摘したのは小生の他にも数名いらっしゃいます。
また、政府の審議会の場で公益認定制度を議論しているさなかに、無知を堂々とさらけ出した公認会計士の方は「北地達明」様以外にもおられますし、様々な公表資料からわかる範囲でおかしな点がある場合にはその都度問題点を指摘することを含めて、小生が行っていることは全て建設的な意見を出しているつもりです。
世界でも例がないような濫立する非営利の会計基準の中で公認会計士の方がご苦労せざるを得ない構造的問題の方に小生の関心はあります。非営利の法人制度は、内閣府、厚労省、文科省等にまたがっていながら、公認会計士については金融庁が一括管理し、試験範囲も企業会計や会社法の部分だけです。公認会計士になった後の研修でも、不正が指摘されるなど多くの問題を抱えながら、公認会計士というだけで政策上も非常に大きな役割と責任を負わされています。
誤解のないように言えば、公認会計士の中には立派な活動をされている方も数多くおられますし、小生の尊敬する知己はいらっしゃいます。
可能ならば、是非日本公認会計士協会や内閣府公益認定等委員会、あるいは金融庁などの場を使ってご一緒に「公開」でこの問題を議論させていただければと思っております。
なお、下記コメントにつきましては、誤植と思われる箇所があり、文意が通じません。
もう一度お書きになってはいかがでしょうか?