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民間公益の増進のための公益法人等・公益認定ウォッチャー (by 出口正之)

日本の民間公益活動に関する法制度・税制は、10数年にわたって大きな改善が見られました。たとえば、公益認定等委員会制度の導入もその一つでしょう。しかし、これらは日本で始まったばかりで、日本の従来の主務官庁型文化の影響も依然として受けているようにも思います。公益活動の増進のためにはこうした文化的影響についても考えていかなければなりません。内閣府公益認定等委員会の委員を二期六年務めた経験及び非営利研究者の立場から、公益法人制度を中心に広く非営利セクター全体の発展のためにブログをつづりたいと考えております。


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非公開の研究会からは混乱しか生まれない [2018年05月13日(Sun)]

内閣府の会計研究会が報告書案を発表し、パブリックコメントを募集中です。

会計研究会については、

@一切の議論及び資料を非公開・非公表で研究会を行っている。

Aガイドラインに相当する部分をガイドライン策定時の関係者を一人も交えずに議論している。

B法令解釈に相当する部分を会計関係者だけでしている。


以上のような特徴を持ち、改善の必要性を本ブログでたびたび指摘してきたところです。


さらに、

名目上は緩和策を目的としていながら、規制強化策を同時に組み込んでいるため、民間側は混乱に陥り、公益法人協会ですら対応がおかしなことになりました。

残念ながら今回もこれまでと同じ轍を踏んでいます。

今回は公益法人界あげて白紙撤回を要求するなど抜本的な対策を講じないと本制度が崩壊しかねないところまで来ていると思います。以下、今回の報告書を例にとり、解説していきます。


 報告書では【「新たな公益法人制度への移行等に関するよくある質問(FAQ)」 において従来から認められてきた将来の収入の減少に備えて 法人が積み立てる資金(基金)として、過去の実績や事業環境の見通しを 踏まえて、活動見込みや限度額の見積りが可能であるなどの要件を満たすことができれば、特定費用準備資金として認められるものの要件を明確にした】とのことです。


 その結果が「積立てできる期間が明確ではなかったが、公益法人の収入の減少を見積もった積立期間が長期にわたることは適切では なく、一方で、公益法人の収入回復の目途を立てるために一定期間を要す ることを考慮すると、最長5年の期間の特定費用準備資金の計上を認める ことが妥当であると考えられる。 なお、将来の活動の見込みに関連する収入の減少見込みについては、法人の説明に合理性があると認められれば、基本的に当該特定費用準備資金 の計上を認めることが適当であると考える。」ということで、要件=何が合理的かということには一切触れられずに、最長5年という突然の規制が入り込みました。

  


どのように混乱しているかを説明いたします。



妙な話ですが、問題になっているのは、わかりやすくするはずのFAQの解釈なのです。


 当該のFAQの中には特定費用準備資金を説明した部分があります。「将来の収支の変動に備えて法人が自主的に積み立てる資金(基金)については、過去の実績や事業環境の見通しを踏まえて、活動見込みや限度額の見積もりが可能など要件を充たす限りで特定費用準備資金を用いることができます。」


これについてはもともと

FAQ問X−4−K(遊休財産額

移行認定を申請する段階で、将来の単なる備えとして保有している資金を特定費用準備資金として整理することは可能でしょうか。という質問の回答として作られました。


つまり、保有する資金を整理するにあたって、特定費用準備資金として整理すれば、遊休財産額から控除できますよという常識的な回答です(ストックの整理)。


ところが、これが

FAQX--C(公益目的事業比率)のところに変更されました。この部分は、単に特定費用準備資金の説明としてまとめられたのです。


さらに、この部分が「収支相償のプラス」の場合の解決策に使えると内閣府がパブコメ回答などで主張し始めました(フローに対する対応)。このメッセージに対応して、公益法人協会が収支相償のプラス部分を財政安定化基金の特定費用準備資金として理事会決定したところ、内閣府から「法律に基づく適正性に欠ける旨指導」があり、非常に混乱に陥ったわけです


だから、収支相償がプラスの時に、このFAQを満たすにはどうしたらよいのかを明確化しようということで非公式の会計研究会が一年以上にわたって議論してきたものです。


FAQの場所の変更及びパブコメ回答のメッセージが実は非常に混乱のもとでした。


 もともと移行法人(旧公益法人から新制度へ移行する法人)の中には、低金利時代に資産を取り崩しながら活動する法人がありました。これらの資産を遊休財産との関係においてどのように整理するのか、という問題に対して、特定費用準備資金(控除対象財産のうち4号財産)として整理し、毎年、使用していくことを可能として説明したものがFAQ問X−4−K(遊休財産額)です。したがって、特定費用準備資金として計上した時点においては公益目的事業比率とは関係ありません。ましてや、収支相償とも関係ありません。


 移行法人以外に本FAQの適用があり得るとしたら、以下のような場合です。


 低金利などで法人運営が立ち行かなくなり(言い換えればそもそも赤字の状態)、公益目的保有財産(控除対象の1号財産)の運用益で活動していたのを諦めて公益目的保有財産を取り崩して年々使っていくような場合です。この場合では、継続保有としての公益目的保有財産として整理できなくなります。これを遊休財産規制に適用することはできませんから、特定費用準備資金として整理することによって、控除対象財産とすることにしたものです。このような場合ならば、当然、活動見込みや限度額の見積もりが可能などの要件を充たすことできます。


他方で、突然内閣府が可能だと言って公益法人協会を混乱に陥れた「収支相償の黒字の対策」として、「活動見込みや限度額の見積もりが可能など要件を充たす」ことは、一時的な巨額の寄付等がない限り、通常では想定できませんので、もともとのFAQでは想定しなかったものです。ほぼ不可能なことを可能と言ったことが混乱の正体です。一時的な寄付金などは指定正味財産であれば、収支相償に関係ないのですが、過去の会計研究会の報告に基づいて「指定正味財産」にするのも常識以上に厳しくしてしまっています。


 したがって、今回の報告書通りにすると、仮に、法人理事会が「取崩し型」を選択した場合に、突然5年間という年限が規制として入り込んでくることになります。研究会の報告書は、「弾力化」という見出しとともに、「法人の責に帰すことができない事情」「5年間」という新たな規制を出してきています。「弾力化」という用語とともに「規制強化」が続けば、再び、公益法人界は混乱に陥るでしょう。


初期の制度設計は極めて常識的なものでした。そこに対する信頼がないと、どんどんとおかしな方向へ行ってしまうでしょう。法人側から見れば、何を信じて運営していけばよいのかわからないところまで来てしまっています。



(続く)

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