公益認定等委員会事務局長に期待
[2018年02月18日(Sun)]
公益法人協会のブログで公益財団法人助成財団センターの田中皓専務理事が先の「助成財団フォーラム」のことを記載されています。その中で内閣府公益認定等委員会のS事務局長のことについて「終了時まで、質疑を含めて熱心にご参加」とその姿勢を高く評価されていますが、小生も同様の印象を持ちました。
公益認定等委員会委員の人事よりも事務局長の人事の方が大きな影響が与えることは、制度上ありえないのですが、組織は人の集まりであり、どの人事がどのように影響するかは、制度設計だけで割り切れるものではないでしょう。事務局長の人事がどの程度ものかは一概に言い切れませんが、重要なものであることは間違いありません。
現在のS事務局長は公益認定等委員会事務局総務課長の経験があり、歴代の事務局長の中で、初めて委員会事務局経験者が事務局長を務めることになりました。制度改革10年という時を刻んだことのなせる業かもしれません。公益法人側の期待も大きいものがあるのではないでしょうか?
かつて予想したことがありますが、公益認定の制度は時間が経つほどに、パターナリズムの傾向が強くなり、「箸の上げ下ろしの指導」が復活するだろう、と危惧しておりました。
「箸の上げ下げの指導」の弊害はあげたらきりがありませんが、ホッチキス財団や墓守財団はその典型でしょう。
役人の立場にたてば、立法趣旨通り「公益の増進」に資することがなくても誰からも文句が出ない代わりに、何か事件が起きれば、「監督はどうしていたのだ」と世間から非難の大合唱が繰り返し起こってきます。事務方が、時間の経過とともに、微に入り細に入り手足を縛ろうと前のめりになるのはある意味でいたしかたないといってもよいでしょう。
まして改正前には56条しか法律で定められていなかった事項が、法律の条数だけで868条に増えたばかりではなく、政令、府令、さらに新公益法人会計基準、ガイドライン、申請書の手引きなど参照すべきものが格段に増えたため、口を出そうという気にさえなれば、出すべきところは格段に増えたわけです。委員の人たちもいますから、委員会が行政庁をセーブする役割を忘れ、むしろそれにお墨付きを与えるようであれば、「箸の上げ下げの指導」はもっとひどいことになりかねません。
これは当然予想されていた事態であり、だからこそ監督の基本的考え方(平成 20 年 11 月 21 日)には
@監督についても主務官庁による裁量的なものから法令で明確に定められた要件に基づくものに改められたこと、A法律により法人のガバナンス(内部統治)及び情報開示について詳細に定められたことを踏まえ、
(1) 法令で明確に定められた要件に基づく監督を行うことを原則とする。
(2) 法人自治を大前提としつつ、民による公益の増進のため新公益法人が新制度に
適切に対応できるよう支援する視点を持つ。
と、真っ先に歯止めをかけています。
役所ではなく、法人自身が監督をしていく、ガバメントからガバナンスへという流れによって、行政改革として行政コストを下げていく必要があります。何よりも、「柔軟かつ機動的な活動を展開することが可能」(閣議決定)な「民間公益セクター」(政府税制調査会)の多彩な活動を、行政の画一的な「箸の上げ下げの指導」によって邪魔をしては、税制上優遇した意味が全くありません。政府にできないこと企業にできないことを行うことが期待されている以上、狭量な考えに基づく押しつけを止める必要があります。
「裁量行政を止める」という制度と「ちゃんと監督をしろ」という文化の狭間にあって、立法趣旨に常に立ち返り、委員会事務局としての立居振舞をチェックするのに、法人との対話は不可欠だと思います。
その点、「改革前よりも口うるさい『爪楊枝の上げ下げ』の指導・監督がある」という小生の小言(?)にも、トーンは抑えられていたものの行政庁への不満が溢れた法人の声にもめげず、S事務局長は、フォーラムの最後まで参加し、法人の声を聴くべきところは聴き、言うべきところは言った初めての事務局長だと思います。
「初志に帰る」と宣言した内閣府公益認定等委員会同様に本年の事務局に期待していきたいものです。
【公益法人制度改革施行10年の最新記事】