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民間公益の増進のための公益法人等・公益認定ウォッチャー (by 出口正之)

日本の民間公益活動に関する法制度・税制は、10数年にわたって大きな改善が見られました。たとえば、公益認定等委員会制度の導入もその一つでしょう。しかし、これらは日本で始まったばかりで、日本の従来の主務官庁型文化の影響も依然として受けているようにも思います。公益活動の増進のためにはこうした文化的影響についても考えていかなければなりません。内閣府公益認定等委員会の委員を二期六年務めた経験及び非営利研究者の立場から、公益法人制度を中心に広く非営利セクター全体の発展のためにブログをつづりたいと考えております。


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公益法人協会の財政基盤安定化基金と渾沌 [2017年09月02日(Sat)]
南海の帝王(儵(しゅく))と北海の帝王(忽(こつ))とが、中央の帝王「渾沌」に恩義を感じ、その恩義に報いようとする話があります。南北の帝王は「渾沌」には、目、耳、鼻、口の七つの穴がなくてかわいそうだと思い、恩義のお礼に、二人して1日ひとつずつ「渾沌」に穴を開けてあげます。その結果、7日目には「渾沌」は死んでしまいました。言わずと知れた、荘子の渾沌で、混沌の語源となった話です。南北の帝王が「渾沌のためにしてあげたこと」が仇になってしまったわけです。


多くの公益法人の運営面で心の支えとなっている公益財団法人公益法人協会が、今回、「財政基盤安定化基金」という名称の特定費用準備資金を積み立てたところ、内閣府からおとがめを受けていることがわかりました。この話を聞いて、荘子を思い出した人は小生以外にもいるのではないでしょうか?公益法人協会がこのようになったということは、制度が死にかけているということに他なりません。



平成25年に始まった内閣府公益認定委員会の会計研究会は、小規模法人の緩和策など、一貫して公益法人規制の緩和を掲げてガイドラインの解釈の変更をしようと努力してくれています。気の毒にも会計の専門家だけが集められ、法解釈の結果ばかり報告させられています。さらに、滑稽なことは、ガイドライン策定時の人が一人も入っていないにもかかわらず、議論させられていることです。

 法令及びガイドライン上は、大規模、中規模、小規模法人が定義されていますが、会計研究会は「小規模法人が定義できないので、小規模法人の緩和策は取らない」という驚きの報告結果をまず出しました。荘子に例えれば、一つ目の穴を開けてくれたということでしょう。以来、毎年、報告書を出していますが、出発点がこれですから、制度をよく知る者からすれば、毎回驚かされて、その都度、「公益法人に迷惑がかかる」と本ブログは警告を発してきました。


そして不思議なことに、内閣府の公益認定等委員会、会計研究会はこの間の議事録を全く公開してきませんでした。


他方で、公益法人協会は理事会、評議員会議事録、監査報告書等あらゆる公式文書をWEB上で公開しています。


そこで公益法人協会の理事会の経緯を追ってみましょう。



将来の収支の変動に備えるため特定費用準備資金を積む方針が提案され、理事全員一致により可決。


「財政基盤安定化基金」という名称で具体的な特定費用準備資金が提案され、理事全員一致により可決。出席監事3名からも意見が出されず。

 *なお、小生の名前が議事録に出ておりますが、小生は本件と全く関係ありませんし、小生の考え方についてはブログでご確認ください。


 「その後、内閣府及び監事より特定費用準備資金として適正性に欠けるとの指摘」があり、新しい対応を協議し、当該特定費用準備資金を全額取り崩しし、赤字解消分を除く額を平成29年度の公益目的事業に充てることを理事全員で可決(この間、発言などあり)。


監事からの指摘がいつの時点からなのかはわかりませんが、慎重な手続きを踏んでいたにもかかわらず、当初は、理事、監事から異論が出なかったことがわかります。また、評議員会でも報告され、議事録からは意見が出たことは記載がされていません。平成26年度27年度28年度の監査報告書はすべて「法令もしくは定款に違反する重大な事実はみとめられません」と記載され、それぞれ記名・捺印されています。


これらはすべて公開されていますから、当然、次のような質問が、公益法人から公益法人協会のWEBに投稿されていました。


貴協会の財政基盤安定化基金について

投稿記事by 疑問ばかり ≫ 2017年3月09日(木) 16:40


いつも参考にさせていただいております。

貴協会の財務関係の情報公開資料を拝見していたところ、平成27年度決算において表題の基金(特定費用準備資金)が設定されたことを偶然知りました。

この手の資金は、公益目的保有財産(資産取得資金)として積み立てる方法しか頭になかったので、勉強不足もあり目から鱗でした。


ついては同基金について質問させていただきます。

@積立限度額の算定について・・・直近の決算で一般正味財産が56百万円余りであり、これをキリのいい1億円を目標(積立額目標は50百万円)にしたことについて、

                当局から何か質問等照会はなかったのでしょうか?(相当厳密な根拠が求められると聞いておりましたので)

A取崩について・・・・・・・・・「当該活動の実施予定時期」には、「当法人の経常増減額がマイナスになった事業年度において取崩を行い・・」

                とありますが、実際に当面赤字が続いて資金が必要となった場合は、50百万円の目標額に未達のまま取崩は可能でしょうか?



Re: 貴協会の財政基盤安定化基金について

投稿記事by 太田達男 ≫ 2017年3月19日(日) 09:54


疑問ばかりさん、

ご指摘の通り公益法人協会は、平成26年度決算において公益目的事業会計において、お陰様で3期連続赤字決算から脱することができが815万円の経常利益を計上することができました。

この処理について、機関決定を経て「将来の収支の変動に備えて過去の実績や事業環境の見通しを踏まえて、活動見込みや限度額の見積もりが可能な度(ママ)要件を満たす限りで特定費用準備資金を用いることができます」というFAQX-3-Cに基づき特定費用準備資金として積立てました。積立限度額は公法協の公益目的事業費がおよそ2億円で推移している実績を勘案し、その50%までは純資産(一般正味財産残額)を積み上げることを目標に設定しました。

さて、ご質問の@ですが、行政庁はこれについて詳細な積算根拠を求めてきましたので、これを提出し数回にわたり説明してまいりました。現時点において当局がこれに納得したかどうかは不明です。

又質問Aについては、法人会計を含む公法協全体の経常損益が赤字となれば当然この特定費用準備資金は取り崩すことになります。公法協の特定費用準備資金の性格は将来の赤字に備えて、公益目的事業の水準を維持することが唯一の目的ですから、赤字になれば、水準を落とすのではなく、特費を取り崩して水準を維持する積りです。また、公益目事業会計が赤字、法人会計がそれ以上の黒字という場合は法人会計の黒字の公益目的事業会計への充当を優先し、特費の取崩はしません。


以上の通り、平成27年にFAQX-3-Cに基づいて特定費用準備資金を積み立てたこと、機関決定をしたこと、及び(公益法人協会としては)要件を満たしたものと考えていたことが明確に分かります。その間、公益法人協会の情報公開文書からは、理事の誰一人、評議員の誰一人反対者はなく、監事は捺印までしています。


ところが、公益法人協会は今年の8月25日にホームページに、特定費用準備資金を取り崩すことをホームページで報告しています。その理由は「法律に基づく適正性に欠ける旨指導」というから驚きです。これを内閣府が「掌を返した」と言わずに何と言ったらよいのでしょうか?


2017年8月25日


特定費用準備資金「財政基盤安定化基金」の扱いについて

                                         (公財)公益法人協会


公益法人協会では、平成26年度決算の公益目的事業会計において、815万円の経常利益を計上したことから、特定費用準備資金とするか、公益目的保有財産とするか、平成27年9月、及び同年12月の理事会で検討し、下記別表C(5)のとおり特定費用準備資金とすることを決議し、基金を設定いたしました。

 →平成27年度定期提出書類別表C(5)

その後、内閣府より、本基金について使用事業が特定されていないこと、赤字が発生した場合に取崩すものとして使用時期、金額が記載されていないことなど、特定費用準備資金として法律に基づく適正性に欠ける旨指導がありました。これを受け当協会では対応を検討した結果、平成29年6月9日の理事会において、本基金はいったん815万円全額を取り崩して解消し、平成28年度決算における公益目的事業会計の経常損失に充当し、残額は平成29年度の公益目的事業の費用に充当することといたしました。


以上の通り、本件に関し、当協会の初期対応が不適切であった旨、訂正方々お詫び申し上げると共に、今後皆様の特定費用準備資金について、上記のような適切な対応をお願いしたく、ご案内申し上げます。



さらに、驚きは非公開を続ける会計研究会の報告書です。

「まず、将来の収支の変動に備えて法人が積み立てる資金(基金)を特定費用 準備資金として保有することについては、将来の支出の確実性を担保する観点 から、従前と同様に、過去の実績や事業環境の見通しを踏まえて、活動見込み や限度額の見積もりが可能であるなどの要件を充たす限りで、有効に活用されるべきである。この際に、どのような条件等が整えば当該要件に合致するかに ついて統一的なメルクマールを設定することは困難であり、具体的な事例を提 示して参考に資することが有効であると考えられる。

 加えて、このような特定費用準備資金を新たに定義し直し、その具体的要件を定めることについても、 同様に困難である。 このため、これらの点については、事例の蓄積・提示に努めることとするとともに、後述する遊休財産に係る問題と併せ、特定費用準備資金のあり方とし て検討を深めることとした」。



 要件を満たす限り、特定費用準備資金として積めるがその要件は提示できませんということです。会計研究会が示すことすらできない要件に基づいて、公益法人協会は「法律に基づく適正性に欠ける」と指摘されたのでしょうか?



相矛盾するメッセージを出される状態を「ダブルバインド」と言います。緩和するという大メッセージに従っただけの法人を「法律に基づく適正性に欠ける」と指摘したとするならば、まさしく「ダブルバインド」状態に法人を陥れることになります。そして「ダブルバインド」状態に陥った者がどうなっていくかは、既存の研究でご確認ください。



この間、民間法人の公益法人協会は見事なまでに、情報を公開していっています。それに対して、内閣府並びに会計研究会は議事録を一切公開していません。

直ちに、情報を公開してください。今のままでは会計研究会のメンバーの方々も気の毒です。


さて、小規模法人に緩和策を講じると言って、定義された小規模法人があるにもかかわらず、「小規模法人が定義されない」と報告してから、これは「公益法人のために」開けた幾つめの「穴」なのでしょうか?


「混沌」と同じように公益法人制度が死ぬかどうかはわかりませんが、少なくとも現在の状況が「混沌」とした状況であることだけは間違いなさそうです。

もう、公益法人は行政庁にお伺いを立てなければ、息一つできない状態にまでなっています。
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コメント
ご指摘を受け「内閣府が会計研究会の報告に基づき修正したFAQを信じて」の部分を削除しました。

「FAQX-3-Cの修正があったから」を「FAQX-3-Cに基づいて」に変更しました。

お詫びかたがたご連絡いたします。とりわけ、必要以上に会計研究会のメンバーの方に不快な印象を与えたのではないかと危惧しております。本ブログの趣旨は、政府の会議を公開していくことを要望しているものであって、会計研究会の方々に不必要な誤解を与えないためにも、今後、議事録を公開していただくよう切にお願い申し上げます。
Posted by:出口  at 2017年09月09日(Sat) 11:50
ご参考
認定法施行令
(会計監査人を置くことを要しない公益法人の基準)
第六条  法第五条第十二号 ただし書の政令で定める勘定の額は次の各号に掲げるものとし、同条第十二号 ただし書の政令で定める基準は当該各号に掲げる勘定の額に応じ当該各号に定める額とする。
一  一般社団法人にあっては一般社団・財団法人法第二条第二号 に規定する最終事業年度、一般財団法人にあっては同条第三号 に規定する最終事業年度に係る損益計算書の収益の部に計上した額の合計額 千億円
二  前号の損益計算書の費用及び損失の部に計上した額の合計額 千億円
三  一般社団法人にあっては一般社団・財団法人法第二条第二号 の貸借対照表、一般財団法人にあっては同条第三号 の貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額 五十億円

ガイドライン(P2)
2(3) 情報開示の適正性
@ 外部監査を受けているか、そうでない場合には費用及び損失の額又は収益の額が1億円以上の法人については監事(2人以上の場合は少なくとも1名、以下同じ)を公認会計士又は税理士が務めること、当該額が1億円未満の法人については営利又は非営利法人の経理事務を例えば5年以上従事した者等が監事を務めることが確認されれば、適切に情報開示が行われるものとして取り扱う。
Posted by:出口  at 2017年09月09日(Sat) 09:17