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民間公益の増進のための公益法人等・公益認定ウォッチャー (by 出口正之)

日本の民間公益活動に関する法制度・税制は、10数年にわたって大きな改善が見られました。たとえば、公益認定等委員会制度の導入もその一つでしょう。しかし、これらは日本で始まったばかりで、日本の従来の主務官庁型文化の影響も依然として受けているようにも思います。公益活動の増進のためにはこうした文化的影響についても考えていかなければなりません。内閣府公益認定等委員会の委員を二期六年務めた経験及び非営利研究者の立場から、公益法人制度を中心に広く非営利セクター全体の発展のためにブログをつづりたいと考えております。


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病膏肓に入る収支相償と特定費用準備資金 [2017年08月12日(Sat)]
特定費用準備資金をめぐる混乱が起きるであろうことは平成27年の年04月16日にこのブログで予想していたところです。残念ながら、その予想が的中してしまっているようです。公益認定等委員会の会計研究会報告にそれがはっきりと示されています。



 法令が変更されることなく、かつ法解釈が意図的に変更されることもなく、徐々に変化していく現象を「クリープ現象」と名づけたことがあります(出口2016)。収支相償をめぐる迷走は「クリープ現象」の典型のようにも思います。


  平成27年の会計研究会報告案についてのパブリックコメント(「意見のとりまとめ」)に対して、内閣府は、突然、「特定費用準備資金において将来的に発生する赤字の補てんについては、制限をしていないところです。単年度の収支で黒字が発生した場合に、将来の赤字が見込まれる場合には、これに備えて、資金を積み立てる(特定費用準備資金)や将来の将来の公益目的事業に使用するための財産の取得なども可能」と回答していました。


 将来の収入の落ち込みの時に特定費用準備資金を目的外で取崩してしまい、「結果的に」将来の備えになっていた、ということは十分にあり得ることですが、将来の赤字を目的に積み立てることは、現行の認定規則やガイドラインの下で可能だというのは如何にも行きすぎた緩和のメッセージであることは、平成27年の本ブログで指摘した通りです。


 案の定、緩和の行き過ぎを軌道修正するためと思われますが、平成28年度の会計研究会の設置(平成 28 年7月 22 日)には、「収支相償の基準を充たすために特定費用準備資金を積み立てる際には、将来に予定された事業の実施や事業拡大に限らず、将来の収支変動に備えて資金を積み立てることができるよう、要件の明確化等(考え方の整理、 具体的な適用事例の明記等)ができないか」ということが検討課題とされました(公益認定等委員会2016)。この強烈メッセージを出して1年後のことです。


そして、このたび会計研究会報告で1年間の検討結果が以下のとおり出ております。




 「まず、将来の収支の変動に備えて法人が積み立てる資金(基金)を特定費用 準備資金として保有することについては、将来の支出の確実性を担保する観点 から、従前と同様に、過去の実績や事業環境の見通しを踏まえて、活動見込み や限度額の見積もりが可能であるなどの要件を充たす限りで、有効に活用されるべきである。この際に、どのような条件等が整えば当該要件に合致するかに ついて統一的なメルクマールを設定することは困難であり、具体的な事例を提 示して参考に資することが有効であると考えられる。


 加えて、このような特定費用準備資金を新たに定義し直し、その具体的要件を定めることについても、 同様に困難である。 このため、これらの点については、事例の蓄積・提示に努めることとするとともに、後述する遊休財産に係る問題と併せ、特定費用準備資金のあり方とし て検討を深めることとした」。


 2年以上たって要件を示せないのですから、これでは、法人が困ることでしょう。法人側で被害が出ないことを祈るばかりです。


 2年前のブログでは「万一、赤字対策を目的に特定費用準備資金が積めるということであるならば、堂々と本文に書いて理由を説明しなければりません。このようなところ(意見の回答)で、信じられない緩和策が突然出てくることは現に避けて頂きたいと思います。それを信じて活動した法人に対して後から掌を返さないようにだけしていただきたいと考えます」と記載しておりました。


 残念ながら、このブログの危惧は当たってしまったようです。財務三基準のシステムとしての機能が理解できていないので、一部を緩和すれば、別の部分を強化し、またその逆を行うということをずっと繰り返してきました。


 その結果、収支相償をはじめとする財務三基準は病膏肓に入ってしまっています。なぜこんな議論がまかり通るのか、このブログはずっとそのことに警鐘を鳴らし、解説を加えていっております。

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コメント
アップルさん2
2年前の4月16日のブログに記載の通り、内閣府は「単年度の収支で黒字が発生した場合に、将来の赤字が見込まれる場合には、これに備えて、資金を積み立てる(特定費用準備資金)や将来の将来の公益目的事業に使用するための財産の取得なども可能」とまで踏み込んだ記載をしています。他方で ガイドラインには、特定費用準備金について「繰越金、予備費等、将来の単なる備えとして積み立てる場合は本要件を満たさない」と明確に記載されています。完全に矛盾しています。公益法人側に誤解を生じさせることは間違いありません。アップルさんのように立ち止まって考えれば、これは不可能なメッセージとわかるはずですが、不可能なメッセージなど出ているはずがないと思い込むのもまた世の常でしょう。こうした理不尽に対して黙っていてはいけないと思います。
Posted by:出口  at 2017年08月31日(Thu) 23:22
アップルさん
コメント有難うございます。
なんと、公益法人協会が掌を返されたのですか!それで内閣府に黙っているのですか?驚きました。

ガイドラインでは特定費用準備資金は「資金について、止むことを得ざる理由に基づくことなく複数回、計画が変更され、実質的に同一の資金が残存し続けるような場合は、「正当な理由がないのに当該資金の目的である活動を行わない事実があった場合」(同第4項第3号)に該当し、資金は取崩しとなる。」となっており、1回は自由に取り崩してよいことになっております。

したがって、普通に特定費用準備資金を積み立てて、不測の事態が起きれば、取り崩せばよいだけです。

ただ、内閣府のパブコメ回答やFAQは明らかに、認定規則違反を従容しており、病膏肓に入っている動かぬ証拠です。

それにしても公益法人協会は長いものに巻かれたのでしょうか?
驚きました。
Posted by:出口  at 2017年08月31日(Thu) 12:03
 ちょうど会計研究会報告書が公表された2年前に、単年度で使い切る財務体質を改善するため、特定費用準備資金の活用をするよう上部団体から指導がありましたが、「将来の収支の変動に備えて」特費を積み立てる方法が思いつきませんでした。

つまりは、「将来の収支の変動に備え」は結果論であり、たまたま
@将来、特定の事業計画があった
Aたまたま、剰余金が発生し数年で積み立てる特費を1年で積めた
Bたまたま、赤字が発生した
Cたまたま、特費で穴埋めできた。

これら偶然の出来事を、必然性をもって特費を積み立てるテクニカルな方法を「将来の収支の変動に備えて」特費を積み立てる方法だと感じていました。

財政破たんしないために、特費を活用する「ぎりぎり」のところを出されてくるのですが、意図するところを見誤ると取り返しのつかないことにもなりかねず、未だに特費の活用方法が見出せません。

実際に、公益法人協会では「財政安定化資金の特費」を積み立てて
掌を返されています。
http://www.kohokyo.or.jp/kohokyo-weblog/topics/2017/08/post_719.html
Posted by:アップル  at 2017年08月31日(Thu) 10:40
 特に本年出された会計研究会の報告書は「研究会」からの悲鳴が聞こえてきそうな内容です。皆で助けてあげなければなりません。@ガインドライン策定メンバーを一人も入れず、A非公開で実施し続け、B明らかにおかしな前提をもとに議論させられている、
 会計研究会メンバーの人たちを皆で救いましょう。原因を追究するより(原因については小生ははっきりと掌握しています.....。)、今後の対応を考えていきましょう。そのためには、一度、研究会をリセットして、公開で議論を進めることが何よりも大切です。
Posted by:出口  at 2017年08月26日(Sat) 20:18
会計研究会の議論を今の時代にあって全く公開してこなかったつけがここまで議論をもつれさせています。一から議論を公開することを強く勧めます。
Posted by:出口  at 2017年08月14日(Mon) 11:19