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民間公益の増進のための公益法人等・公益認定ウォッチャー (by 出口正之)

日本の民間公益活動に関する法制度・税制は、10数年にわたって大きな改善が見られました。たとえば、公益認定等委員会制度の導入もその一つでしょう。しかし、これらは日本で始まったばかりで、日本の従来の主務官庁型文化の影響も依然として受けているようにも思います。公益活動の増進のためにはこうした文化的影響についても考えていかなければなりません。内閣府公益認定等委員会の委員を二期六年務めた経験及び非営利研究者の立場から、公益法人制度を中心に広く非営利セクター全体の発展のためにブログをつづりたいと考えております。


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賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準 適用問題 [2016年04月24日(Sun)]
賃貸等不動産の時価等の
開示に関する会計基準 適用の是非


先月「平成27年度公益法人の会計に関する諸課題の検討結果について」が、公益認定等委員会と会計研究会の連名で公表されました(以下「27年度会計報告」という)。

IFRSに追従する日本の企業会計基準を、公益法人に当てはめようという方向性が明確に出てきていると思います。

企業会計に関するテクニカルなことですので、今回は個人としてはパブコメ提出を見送っていました。しかし、報告内容は、移行時との一貫性も欠くことから、公益法人に混乱を招くことになりそうなので、敢えて指摘させていただきたいと思います。

 一例をあげると「企業会計基準第 20 号 賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準」の適用の是非についてです。

公益法人からのパブコメでは「財団法人には株価の評価が存在せず(投資情報としての意義なし)、不動産鑑定評価基準による方法のようなコストをかけてまで評価する必要はない」という意見が出されています。これに対して内閣府からは「公益法人が保有する賃貸等不動産から得られる賃貸料収入は、公益目的事業の財源として重要である場合が多いことから、賃貸等不動産の価額等を適正に把握することは、公益目的事業の財源を確実に確保する観点から必要であると考えます」と回答されています。

 パブコメは当然の疑問だと考えられます。
内閣府の回答はよくわかりません。仮に政策上「公益目的事業の財源を確実に確保する観点」が必要だったとして、「公益法人に毎年時価評価の報告を強いること」との間には、論理的な飛躍があります。

移行時にこの種の問題は十分に考えられていました。
それは公益目的取得財産残額の以下の計算方法に顕著に表れています。
公益目的取得財産残額=公益目的保有財産+公益目的増減差額(認定法施行規則第48条、第49条)

これは固定資産については原則として簿価をずっと使用することを念頭に置いてのことです。取消しがあった時にのみ公益目的保有財産は時価評価に基づいて公益目的取得財産残額を計算する仕組みを作ったのです。

 なぜそのようにしたかと言えば、公益法人にかかる経費を節減するためです。つまりパブコメの意見と同様です。公益目的事業財産ですらそのような配慮があったのです。

 そもそも公益法人制度改革は内閣官房行政改革推進室が中心となって行ったものでした。余計なコストをかけさせることは、改革の趣旨にも反することでもあり、公益法人に対する負担軽減はかなり重要度の高い課題でした。
今回の提案はこの大前提を覆すものです。

 仮に、「公益目的事業の財源を確実に確保する観点」が政策上非常に重要になっていたとしましよう。「公益目的事業の財源を確実に確保する観点」から取りうるべき選択肢を複数挙げ、その中で公益法人にとっての選択肢で最適なものを選ぶのであればまだしも、このような企業会計の押し付けは公益法人側にとってはとても納得のいくものではないと考えます。

 なぜならば、根本的な疑問につながるからです。「何のための」「誰に向けての」報告なのでしょうか?その疑問は財務会計そのものに向かっていくでしょう。株主のいない組織にとっての財務会計の意味とは何なのか、それをまず先に明らかにしてほしいと思います。その部分が不明なまま法人に負担を強いることについては納得がいかないのではないでしょうか?

 思い起こせば、一般法人への移行認可は、改正前民法72条との法的な整合性を図るために、移行時の公益目的財産額を決定しなければなりませんでした。これについても、費用を極力小さくさせるという方針のもので、ガイドラインが策定されていました。
法人の財産を不必要に消耗させることにより、法人のバイタリティをなくすことは今回の制度改革の趣旨に反するという基本的な考え方に沿ってまとめております。お読みしますと、『公益目的財産額の算定に必要な資産の評価に当たっては、過大な費用をかけることは適当でないと考えられるため、次のとおりとする。』ということでございます。」(第31回議事録)

 これだけの配慮にもかかわらず、一般法人への移行認可には、評価のために内閣府も法人もかなり膨大な時間(=費用)を要してしまいました。

 公益法人の土地は、中には固定資産税非課税となっているものもあり、毎年、評価していくとなると実に膨大な社会的損失を生じるさせることになるでしょう。

もちろん、内閣府の仕事も増え、行政改革に真っ向から反する政策となってしまうことをご理解いただきたいと思います。
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