公益法人のいわゆる財務三基準については、誤解が広がり、「都市伝説」とまで言われていました。「財務三基準があるから、○○ができない」という公益法人の声にあふれていたともいえます。
こうしたことに関して、内閣府の対応は立派でした。まさに清水の舞台から飛び降りる覚悟で、財務三基準を大幅に柔軟化する公益認定法の改正を行い、公益充実資金、公益目的事業継続予備財産の創設を導入し、、「収支相償、遊休財産保有の制限、公益目的事業比率」の財務三基準は、「中期的収支均衡、使途不特定財産保有の制限、公益目的事業比率」の財務三規律へと柔軟化されました、
また、内閣府は法改正に先立ち、財務三基準に対する間違った行政庁の指導の相談窓口までを設置してくれていました。
さらに、今回の法改正に当たって、柔軟に対応することを期待して旧ガイドラインに具体的な基準等を示さなかった規律が「行政庁や担当ごとに指摘がバラバラである」等々の指摘を受けたことから、「ガイドラインには細かく書かないという考え方を改め、@法人や国民など利用者から見て、分かりやすく予見可能性が高いものとする、A行政による恣意的又は硬直的な運用を抑制する、B事前の審査より事後のチェックを重視するという観点から、ガイドラインの全面的な見直しを行った」として、全244頁の大部な新ガイドラインとなっています。
このように「都市伝説」の原因を、政府側がしっかりと受け止めて、大幅柔軟化につながったものです。
しかし、果たして「都市伝説誕生」の原因は行政側だけにあったのでしょうか?「柔軟に対応することを期待して」という部分を十分に理解しないままに、例えば、特定費用準備資金の規程等は、とても運用できない内容で法令上の縛り以上に厳しい規程が民間サイドで流布していたことも否めません。「羹に懲りて膾を吹く」ことになりかねず、過剰なコンプライアンス意識が公益法人の活発な活動を阻害してきた例はたくさん見られます。「昨年まで認められてきた方法を今年も繰り返す」というマンネリ化こそ、一番の安全運転だからです。
このように、法令で求められる以上の規制を民間側が課すことを、学術上「コンプライアンス・クリープ」と言います。「コンプライアンス・クリープ」は、なにも日本だけに見られる現象ではありませんが、今回は政府が大幅な柔軟化を成し遂げてくれています。それに対応するように柔軟化を図り、民間側はコンプライアンス・クリープに陥らないように努力する責務があるでしょう。
しかし、民間の士業の方々が、ガイドラインをしっかりと読みこんで、柔軟な運用が可能な最低限の規程を提案しても、行政庁が修正を求めるようなことも過去にはありました。今回のガイドラインには、そのようなことがないように釘を刺してくれていますが、士業の方が太鼓判を押したものを万一行政庁が否認してしまえば、士業の方は信用や仕事を失いかねません。どうしても安全運転への誘因が働いてしまうでしょう。
民間側には常に挑戦的な心意気と、行政側にはガイドラインの十二分な理解と自制によって、はじめて「都市伝説」が払しょくされることでしょう。

