• もっと見る

民間公益の増進のための公益法人等・公益認定ウォッチャー (by 出口正之)

日本の民間公益活動に関する法制度・税制は、10数年にわたって大きな改善が見られました。たとえば、公益認定等委員会制度の導入もその一つでしょう。しかし、これらは日本で始まったばかりで、日本の従来の主務官庁型文化の影響も依然として受けているようにも思います。公益活動の増進のためにはこうした文化的影響についても考えていかなければなりません。内閣府公益認定等委員会の委員を二期六年務めた経験及び非営利研究者の立場から、公益法人制度を中心に広く非営利セクター全体の発展のためにブログをつづりたいと考えております。


<< 2026年01月 >>
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
最新記事
月別アーカイブ
財務三基準の「都市伝説」の原因は何だったのか:コンプライアンス・クリープと民間の責務 [2025年12月19日(Fri)]

 公益法人のいわゆる財務三基準については、誤解が広がり、「都市伝説」とまで言われていました。「財務三基準があるから、○○ができない」という公益法人の声にあふれていたともいえます。


 こうしたことに関して、内閣府の対応は立派でした。まさに清水の舞台から飛び降りる覚悟で、財務三基準を大幅に柔軟化する公益認定法の改正を行い、公益充実資金、公益目的事業継続予備財産の創設を導入し、、「収支相償、遊休財産保有の制限、公益目的事業比率」の財務三基準は、「中期的収支均衡、使途不特定財産保有の制限、公益目的事業比率」の財務三規律へと柔軟化されました


 また、内閣府は法改正に先立ち、財務三基準に対する間違った行政庁の指導の相談窓口までを設置してくれていました。


 さらに、今回の法改正に当たって、柔軟に対応することを期待して旧ガイドラインに具体的な基準等を示さなかった規律が「行政庁や担当ごとに指摘がバラバラである」等々の指摘を受けたことから、「ガイドラインには細かく書かないという考え方を改め、@法人や国民など利用者から見て、分かりやすく予見可能性が高いものとする、A行政による恣意的又は硬直的な運用を抑制する、B事前の審査より事後のチェックを重視するという観点から、ガイドラインの全面的な見直しを行った」として、全244頁の大部な新ガイドラインとなっています。


 このように「都市伝説」の原因を、政府側がしっかりと受け止めて、大幅柔軟化につながったものです。


 しかし、果たして「都市伝説誕生」の原因は行政側だけにあったのでしょうか?「柔軟に対応することを期待して」という部分を十分に理解しないままに、例えば、特定費用準備資金の規程等は、とても運用できない内容で法令上の縛り以上に厳しい規程が民間サイドで流布していたことも否めません。「羹に懲りて膾を吹く」ことになりかねず、過剰なコンプライアンス意識が公益法人の活発な活動を阻害してきた例はたくさん見られます。「昨年まで認められてきた方法を今年も繰り返す」というマンネリ化こそ、一番の安全運転だからです。


 このように、法令で求められる以上の規制を民間側が課すことを、学術上「コンプライアンス・クリープ」と言います。「コンプライアンス・クリープ」は、なにも日本だけに見られる現象ではありませんが、今回は政府が大幅な柔軟化を成し遂げてくれています。それに対応するように柔軟化を図り、民間側はコンプライアンス・クリープに陥らないように努力する責務があるでしょう。


 しかし、民間の士業の方々が、ガイドラインをしっかりと読みこんで、柔軟な運用が可能な最低限の規程を提案しても、行政庁が修正を求めるようなことも過去にはありました。今回のガイドラインには、そのようなことがないように釘を刺してくれていますが、士業の方が太鼓判を押したものを万一行政庁が否認してしまえば、士業の方は信用や仕事を失いかねません。どうしても安全運転への誘因が働いてしまうでしょう。


 民間側には常に挑戦的な心意気と、行政側にはガイドラインの十二分な理解と自制によって、はじめて「都市伝説」が払しょくされることでしょう。



トラックバック
※トラックバックの受付は終了しました
コメント
公益信託認可等ガイドラインが出て、パブコメの回答も公開されています。受託者が公益信託申請後、委託者が死亡した時のケースを質問したところ「公益信託認可の審査中 に委託者が死亡した場合 については、民事法の原則 に沿って信託契約の成立 や申請の有効性が判断さ れることになり、個別の申 請内容に応じて対応は分 かれるものと考えられま す。その上で、委託者死亡 時に信託契約が未成立で あれば、公益信託認可の前 提を欠くため、行政手続法 第7条の規定により公益 信託認可が拒否されるこ とになると考えられます。 また、未成立の信託契約が 当然に遺言とみなされる ことはないと考えられます。」という回答を得ています。とりわけ公益信託の場合には迅速な認可が必須条件となるでしょう。
Posted by:出口正之  at 2025年12月25日(Thu) 17:27