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民間公益の増進のための公益法人等・公益認定ウォッチャー (by 出口正之)

日本の民間公益活動に関する法制度・税制は、10数年にわたって大きな改善が見られました。たとえば、公益認定等委員会制度の導入もその一つでしょう。しかし、これらは日本で始まったばかりで、日本の従来の主務官庁型文化の影響も依然として受けているようにも思います。公益活動の増進のためにはこうした文化的影響についても考えていかなければなりません。内閣府公益認定等委員会の委員を二期六年務めた経験及び非営利研究者の立場から、公益法人制度を中心に広く非営利セクター全体の発展のためにブログをつづりたいと考えております。


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前回の続き [2024年09月25日(Wed)]

前回からの続きになります)

もともとのチェックポイントの用語については以下のような明確な説明があります。


各用語の解説 ア 「機会が、一般に開かれているか」:共益的に行われるものを除く趣旨である。 受益の機会が特定多数の者(例えば、社団法人の社員)に限定され ている場合は原則として共益と考えられる。 ただし、機会が限定されている場合でも、例えば別表各号の目的に 直接貢献するといった合理的な理由がある場合、不特定かつ多数の者 の利益の増進に寄与するという事実認定をし得る。(例:特定の資格等 を有する者の大半で構成される法人における講習による人材の育成が 学術の振興に直接貢献すると考えられる場合、受講者が社員に限定さ れていても、公益目的事業とし得る。) 


特定の学校を指定した奨学金が「機会が、一般に開かれているか」という文言の文字通りの意味において疑問があるとしても、「共益的に行われるものを除く趣旨」とは全く関係のない話です。特定校であるにしても第三者が提供する奨学金が「共益的」であるはずがなく、そのことに公益認定等委員会が疑義を差しはさむことは明らかに当初の説明と食い違っておりクリープ現象が起きています。ここまで明確に説明がある事項についても異なる運用が現在はされているということです。


今回のガイドラインは、こうした「クリープ現象」(法律改正がないままに法の運用が一方向に徐々に変化していく現象。今回の場合は規制が強化されていく現象として使用している)を公認しています。


現行の 17 事業を含むこれまでの公益目的事業該当性の判断から帰納的導いたものであり、17事業の公益目的事業該当性チェックポイントついては、簡便公益目的事業該当性を判断するためのものとして、原則、現在の判断の構造は維持する(ガイドライン案)。


さらにこの個所の注として、

従来、「不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するもの」という事実があるかどうかを認定するに当たっての留意点とされていたが、現実の運用においては、「別表に掲げる種類の事業」という事実があるかどうかを認定するに当たっての留意点としても使われており、実際の判断の構造に変更はないと考えられる(ガイドライン案注)。


これは初期の委員からすればありえない記述であり、クリープ現象の典型といえるでしょう。チェックポイントと異なる運用してきたこと認めたうえで、それを前提にしますと宣言しているのですから。


事務局としては公益認定等委員会がガイドラインやチェックポイントと異なる運用をしてきて、実際の判断の構造は変化していましたとは言えませんから、こう記載せざるを得ないのでしょう。これまでのガイドラインやチェックポイントと異なる運用をして変化してきました、本来の運用と現在の運用とはどちらがよいでしょうか、と言えるのは実際に運用をしてきた委員だけです。


これまでと一緒だというのは、議論を否定することにほかなりません。


今回、チェックポイントをガイドラインに格上げし、クリープ現象を現在の運用のところで止めるための膨大なガイドラインということはわかりますが、これだけの分量があると、今後もクリープ現象が進まないという保証は全くできないでしょう。


数年後に、また、「実際の記載は〇〇であったが、現実の運用としては△△であったので、次のように記述を変更しても実際の判断の構造に変更はないと考える」とすれば、この制度はその時の委員の字句の読み間違いによって永遠に無意味な規制が増大し続けるでしょう。


クリープ現象を止めるのは公益認定等委員会委員の良心以外にはありません。


とりわけ、ガバナンスの中核である定款の目的や事業にまで、現状では、委員会が口を挟み出していたことや、それを今回のガイドラインで公認しかけていることについては看過できません。企業が定款に書いていない社会貢献活動をどんどん展開できている中で、公益法人が法律上の根拠もなく「具体的に書け」と指導されて作られた定款に縛られて社会貢献活動が制約されるという規制は果たして正しいのでしょうか?疑問に感じます。


今こそ、事務方トップが指摘した法律の「思想」ということをかみしめたいと思います。





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