FAQ発表。法人会計については大緩和策が提案されています。
[2015年04月19日(Sun)]
FAQが発表され、会計部分の大改正の内容が明らかになりました。法人会計については大緩和策が提案されています。
内閣府が今後説明を変えない限り、収益事業等を行っていない公益法人の事務作業はかなり減少するのではないかと期待できるでしょう。初期の制度設計者は、緩和策をとるにあたって、収益の「各会計への直接計上」という大前提をつくり設計図を描きました。いわば、入口(収益での調整)ベースでの緩和策です。今回のものは、法人会計の財産を公益目的事業に使用した際に「他会計振替額」を使うという同用語の定義拡張の追認(問Y−2−E)にせよ、「法人会計区分の作成の省略」(問Y−2―F)にせよ、入口ベースの緩和に加えて、出口(費用での調整)ベースでの緩和策が盛り込まれています。「他会計振替額」の拡張についてはすでにに広く行われていたもので、それほど法人の皆さんにはインパクトは感じないかもしれませんが、少なくとも提案されている「法人会計区分の作成の省略」における管理費相当額の収益に関する考え方は、制度設計の考え方からすれば、非常に大胆な緩和策と言えるでしょう。
FAQ(問Y−2−F)において明確にされていますが、法人会計区分の作成の省略を法人が選んだ場合、管理費相当額を管理費の収益とすることと説明されています。また、収支相償上は公益目的事業会計の収益から管理費相当額を差引いた差額を「収入」とするということですから、これは「法人会計への直接計上」の原則がなくなることを意味していると考えられます。したがって、理論的には非常に大きな緩和策だと考えます。
それではすべて歓迎すべきかというと、やはり一定の注意が必要だと思います。
前回述べた通り、様々なことが次々と起こっていて、しかも根本原因が解決されていないですので心配の種は尽きません。今回の緩和策はどちらかというと劇薬に相当しますから、副作用も心配です。
府令改正が必要かどうかについては、当然検討済みのこととと思いますが、管見の限り、少なくともガイドラインの改正や公益法人会計基準の若干の修正も必要でしょう。そう考えると、それではなぜFAQが先に発表されたのでしょうか?いささか気になるところです。通常ならば、(府令改正)、ガイドライン改正、公益法人会計基準会計の修正、そしてFAQの順番となるところです。FAQの改正だけですと、いつから有効なのかもよく分かりません。とりわけ、H表への具体的な反映の方法への質問が集中することになるでしょう。設計図の書き換えであるのでかなり大幅な変更であり、過渡期の混乱は多少予想されるところです。それだけ大胆な緩和策ということです。
それともう一つは、規制と緩和は相互に連動していますから、これだけの緩和策が採られた場合に、知らず知らずのうちに別の規制の強化が起こりうるという危険性があります。これが副作用というものです。例えば、本ブログが非常に嫌っている法人会計の黒字への規制は、「他会計振替額」の定義の拡張によって、明示的な規制する根拠がないのに、「〇〇逃れ」などと言って、規制強化される危険性があります。
なかでも、収支相償への影響です。特定費用準備資金や資産取得資金の正しい活用法を知らないと、「法人会計区分の作成の省略」を選択した場合、法人は法人全体の会計の黒字が収支相償問題に直結することになります。また「剰余金の一年延長」(問X−2−E)は、行政庁の対応次第で必ずしも緩和策と受け取られない可能性もあるでしょう。特定費用準備資金や資産取得資金の制度の趣旨に合った使い方をしっかりと説明する方が、公益法人の混乱を小さくすることができるように思います。はっきりしたことは言えませんが、収支相償の部分で副作用が出てくる可能性はありますので、それを小さくする努力が今後必要になってくると考えます。
また、公益目的保有財産における金融資産の取得(問V−2−F)については、緩和策と考えないほうがよいと思います。むしろ、事実上、蓋をしたと理解すべきものでしょう。横に沿えてある図からすれば、特定費用準備資金や資産取得資金をぜひ使ってくださいということでしょうが、内閣府の立場からははっきりと言いにくいのかもしれません。その部分を忖度するならば、公益目的保有財産としての金融資産の取得は今後は基本的には認めないということを言いたかったのだろうと考えます。多少の混乱が生じる法人が出てくると思いますが、本来ならば、特定費用準備資金の柔軟性をもっと強調すべきだったのでしょうね。いずれにせよ、これまでの経緯もあるでしょうから、そのような法人には丁寧に対応していただきたいものです。
さらに、「収益事業等をする/しない」の段差が十分大きくなりましたから、「収益事業等の線引きに対する影響」にも注意が必要です。法人の方が必要な事業を収益事業等と見なされないように、必要以上に自粛していくような影響もあるかもしれません。
次に「他会計振替額」の定義拡張等については、実は法令への影響など簡単ではない問題が積み残されています。もともと設計図で想定していなかったことですから、認定法規則と連動するH表での記載方法や認定法18条の解釈問題への影響も積み残されています。「このほかにも意見をいただいております。来年度以降も、研究会を開催する予定ですので、引き続き検討を行う予定です」と記載されていた、先般の「最終報告書素案に対する意見について」からすると、今の段階でFAQで先走るとは思っていませんでした。
これだけの緩和策をとり、それが公益活動の増進が目的であれば、それを阻害するような根拠なき規制強化を行わないような配慮が必要でしょう。なによりも、公益法人界に蔓延する「黒字回避迷信」を和らげてあげることも必要だと考えます。
いずれにせよ、本ブログは第三期後半の委員会には、大いに期待し始めたわけですから、この法人会計に関する緩和策が公益活動の増進につながることを念じて止みません。
また、法人会計については一定期間の混乱の時期は生じる可能性は否定できないものの、それが可能な内容の提案でもあると皆様にお伝えいたします。
内閣府が今後説明を変えない限り、収益事業等を行っていない公益法人の事務作業はかなり減少するのではないかと期待できるでしょう。初期の制度設計者は、緩和策をとるにあたって、収益の「各会計への直接計上」という大前提をつくり設計図を描きました。いわば、入口(収益での調整)ベースでの緩和策です。今回のものは、法人会計の財産を公益目的事業に使用した際に「他会計振替額」を使うという同用語の定義拡張の追認(問Y−2−E)にせよ、「法人会計区分の作成の省略」(問Y−2―F)にせよ、入口ベースの緩和に加えて、出口(費用での調整)ベースでの緩和策が盛り込まれています。「他会計振替額」の拡張についてはすでにに広く行われていたもので、それほど法人の皆さんにはインパクトは感じないかもしれませんが、少なくとも提案されている「法人会計区分の作成の省略」における管理費相当額の収益に関する考え方は、制度設計の考え方からすれば、非常に大胆な緩和策と言えるでしょう。
FAQ(問Y−2−F)において明確にされていますが、法人会計区分の作成の省略を法人が選んだ場合、管理費相当額を管理費の収益とすることと説明されています。また、収支相償上は公益目的事業会計の収益から管理費相当額を差引いた差額を「収入」とするということですから、これは「法人会計への直接計上」の原則がなくなることを意味していると考えられます。したがって、理論的には非常に大きな緩和策だと考えます。
それではすべて歓迎すべきかというと、やはり一定の注意が必要だと思います。
前回述べた通り、様々なことが次々と起こっていて、しかも根本原因が解決されていないですので心配の種は尽きません。今回の緩和策はどちらかというと劇薬に相当しますから、副作用も心配です。
府令改正が必要かどうかについては、当然検討済みのこととと思いますが、管見の限り、少なくともガイドラインの改正や公益法人会計基準の若干の修正も必要でしょう。そう考えると、それではなぜFAQが先に発表されたのでしょうか?いささか気になるところです。通常ならば、(府令改正)、ガイドライン改正、公益法人会計基準会計の修正、そしてFAQの順番となるところです。FAQの改正だけですと、いつから有効なのかもよく分かりません。とりわけ、H表への具体的な反映の方法への質問が集中することになるでしょう。設計図の書き換えであるのでかなり大幅な変更であり、過渡期の混乱は多少予想されるところです。それだけ大胆な緩和策ということです。
それともう一つは、規制と緩和は相互に連動していますから、これだけの緩和策が採られた場合に、知らず知らずのうちに別の規制の強化が起こりうるという危険性があります。これが副作用というものです。例えば、本ブログが非常に嫌っている法人会計の黒字への規制は、「他会計振替額」の定義の拡張によって、明示的な規制する根拠がないのに、「〇〇逃れ」などと言って、規制強化される危険性があります。
なかでも、収支相償への影響です。特定費用準備資金や資産取得資金の正しい活用法を知らないと、「法人会計区分の作成の省略」を選択した場合、法人は法人全体の会計の黒字が収支相償問題に直結することになります。また「剰余金の一年延長」(問X−2−E)は、行政庁の対応次第で必ずしも緩和策と受け取られない可能性もあるでしょう。特定費用準備資金や資産取得資金の制度の趣旨に合った使い方をしっかりと説明する方が、公益法人の混乱を小さくすることができるように思います。はっきりしたことは言えませんが、収支相償の部分で副作用が出てくる可能性はありますので、それを小さくする努力が今後必要になってくると考えます。
また、公益目的保有財産における金融資産の取得(問V−2−F)については、緩和策と考えないほうがよいと思います。むしろ、事実上、蓋をしたと理解すべきものでしょう。横に沿えてある図からすれば、特定費用準備資金や資産取得資金をぜひ使ってくださいということでしょうが、内閣府の立場からははっきりと言いにくいのかもしれません。その部分を忖度するならば、公益目的保有財産としての金融資産の取得は今後は基本的には認めないということを言いたかったのだろうと考えます。多少の混乱が生じる法人が出てくると思いますが、本来ならば、特定費用準備資金の柔軟性をもっと強調すべきだったのでしょうね。いずれにせよ、これまでの経緯もあるでしょうから、そのような法人には丁寧に対応していただきたいものです。
さらに、「収益事業等をする/しない」の段差が十分大きくなりましたから、「収益事業等の線引きに対する影響」にも注意が必要です。法人の方が必要な事業を収益事業等と見なされないように、必要以上に自粛していくような影響もあるかもしれません。
次に「他会計振替額」の定義拡張等については、実は法令への影響など簡単ではない問題が積み残されています。もともと設計図で想定していなかったことですから、認定法規則と連動するH表での記載方法や認定法18条の解釈問題への影響も積み残されています。「このほかにも意見をいただいております。来年度以降も、研究会を開催する予定ですので、引き続き検討を行う予定です」と記載されていた、先般の「最終報告書素案に対する意見について」からすると、今の段階でFAQで先走るとは思っていませんでした。
これだけの緩和策をとり、それが公益活動の増進が目的であれば、それを阻害するような根拠なき規制強化を行わないような配慮が必要でしょう。なによりも、公益法人界に蔓延する「黒字回避迷信」を和らげてあげることも必要だと考えます。
いずれにせよ、本ブログは第三期後半の委員会には、大いに期待し始めたわけですから、この法人会計に関する緩和策が公益活動の増進につながることを念じて止みません。
また、法人会計については一定期間の混乱の時期は生じる可能性は否定できないものの、それが可能な内容の提案でもあると皆様にお伝えいたします。