久しぶりの投稿となります。
第60回公益法人の会計に関する研究会議事録 及び資料が公開されました。
「新しい時代の公益法人制度の在り方に関する有識者会議」の最終報告に基づいて、公益認定法改正や公益法人会計基準改正も予定されていることから、新しいメンバーも加わって再開されたものと思います。
本ブログの読者は、会計研究会について本ブログがかなり厳しい批判をしてきたことはご存じと思いますが、今回はそれがほとんど改善されています。
大いに期待したいですね。
その理由は以下の通りです。
第一に、公益財団法人トヨタ財団の総務部長川島治彦氏が参与として加入しています。
川島氏は30年以上にわたって、トヨタ財団の会計実務を実際に担っていた方です。もともと金融機関にもいらっしゃったので、企業会計はもちろんのこと、いわゆる番場嘉一郎公益法人会計基準もご存じです。会計学の大家であった番場嘉一郎先生、新井清光先生及び加古宜士先生さらに実務界のスーパースター公認会計士の出塚清治先生が作られた公益法人会計基準です。この会計基準については世界の範になるだろうとまで番場先生が豪語されていました。その公益法人会計基準もご存じであり、平成16年公益法人会計基準、平成20年会計基準まで全て実務として利用されてきた方です。また、行政庁への提出書類についても実務で行ってこられた方です。
会計研究会のメンバー構成の多様化については本ブログが何度も主張してきたことであり、ようやくその第一歩となったものと思います。
第二に.事例から議論を開始していることです。
会計研究会は何年にもわたって議事録が公開されていなかったので実際の議論がどのようなものだったかわかりませんが、資料を見る限り演繹的に議論がなされてきたといわれても仕方ないものばかりでした。
今回の会計間貸借や他会計振替のことについて机上資料でしっかりと議論されたことが議事録からわかります。
「他会計振替」の定義を突如として変えた2013年の会計研究会でこのような議論が行われていたら、その後の別表Hの混乱もなかったはずです。
退職給与引当金の処理についても事例で行ったため、実務家の発言が光っています。
第三に.北川局長が議論が細部に入り込もうとしたときに、「そもそも論」を展開し、議事を元の本流に戻した点です。
実はこの役割は非常に大きいものといえます。
第四に、有識者会議最終報告のパブリックコメントを資料として引用し、外部の声を反映しようとしている点です。
こうした諸々の理由から、今回の会計研究会は大いに期待したいと思います。
ただ、褒めちぎるのも問題だと思いますので、一点、弱点を指摘したいと思います。
それは「わかりやすい会計」という言葉が法人サイドと共有されていないままに、独り歩きしかねない点です。
これは公益法人のガバナンスの更なる強化等に関する有識者会議の議論の中でも、パブリックコメントでも、さんざん指摘されてきた点です。「わかりやすい会計がよい」といえば、誰も反対しないでしょう。しかし、それは「誰にとってわかりやすいのか」という大事な議論無しに進んだ時に、社会に亀裂をもたらせるでしょう。
このブログでも何度も指摘してきたことです。
まあ、しかし、大いに期待していきましょう。