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民間公益の増進のための公益法人等・公益認定ウォッチャー (by 出口正之)

日本の民間公益活動に関する法制度・税制は、10数年にわたって大きな改善が見られました。たとえば、公益認定等委員会制度の導入もその一つでしょう。しかし、これらは日本で始まったばかりで、日本の従来の主務官庁型文化の影響も依然として受けているようにも思います。公益活動の増進のためにはこうした文化的影響についても考えていかなければなりません。内閣府公益認定等委員会の委員を二期六年務めた経験及び非営利研究者の立場から、公益法人制度を中心に広く非営利セクター全体の発展のためにブログをつづりたいと考えております。


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選考委員会が必置ではない理由 第一期の公益認定等委員会から。 [2023年01月28日(Sat)]

 有識者会議から「多様性」を強調した中間報告が出たことは誠に喜ばしいことです。


 しかし、行政庁ないし委員会の法令外の行き過ぎた指導がしばしば公益法人の手段的多様性を殺しているという話も聞こえてきます。


 助成金の決定や褒賞の決定の際に、選考委員会が設けられることはとりわけ日本においては少なくないのですが、選考委員会や選考基準などは法令上必須のものではありません。


チェックポイントを見てもそれは明らかです。

(13) 助成(応募型)

 【注:なお、非応募型の助成は、「上記の事業区分に該当しない事業についてチェックす べき点」でチェックすることになっています。】


@ 当該助成が不特定多数の者の利益の増進に寄与することを主たる目的

として位置付け、適当な方法で明らかにしているか。

A 応募の機会が、一般に開かれているか。

B 助成の選考が公正に行われることになっているか。(例:個別選考に当たって直接の利害関係者の排除)

C 専門家など選考に適切な者が関与しているか。

D 助成した対象者、内容等を公表しているか。(個人名又は団体名の公表に支障がある場合、個人名又は団体名の公表は除く。)

E (研究や事業の成果があるような助成の場合、)助成対象者から、成果についての報告を得ているか。


 以上のとおり、選考委員会も選考基準も必須要件としては挙げられていません。


 これを設けるかどうかはあくまで法人サイドの裁量に委ねられています。


 選考委員会を設置した場合のメリットはわかりやすいのですが、デメリットとしては選考委員が不正を働いた時には法的な罰則が設けられていないことが挙げられます。


 他方で、2006年の公益法人大改革においては、理事、監事又は評議員の罰則が非常に強化されました。


 オリンピックに関連して組織委員会の理事が「みなし公務員」であることから受託収賄罪に問われたような報道が相次いでいますが、実は、一般社団・財団法人の理事、監事又は評議員も公務員ほどではないにしろ懲役刑を含む重い罪に問われる可能性があります(一般法第三百三十七条)。


 このように理事、監事又は評議員には非常に厳しい罰則規定があるにもかかわらず、別個に選考の実質的権限を罰則規定のない人に委ねること強制することの是非についての議論もあったわけです。


 したがって、「公正に行われること」については、多様な手段を当然許容することになりました。選考委員会というのはそのうちの一つの手段かもしれませんが、これも万能ではありません。


 日本の場合には、手段的多様性が非常に少ないように思います。この種のことが強要されることがないように願いたいですね。民間非営利で、役所ではないのですから。


 考えるのは重い責任を課せられている理事会です。公益認定等委員会ではありません。
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