21世紀に入って会計士が絡んだ虚偽の財務諸表によって世界の資本市場が揺らぎ、その反省から、グローバルな資本市場を安定化させるために財務報告の重要性は非常に高まってきています。IFRS(国際財務報告基準)もしかりです。これらは株主、投資家、金融機関といった「特殊なステークホルダー向け」の会計ですが、これを「一般的」という用語を使って流布させています。投資の判断、融資の判断には「わかりやすい会計」です。一般性を何ら実証することなくこのような用語の跳梁跋扈を許している会計学者にまず猛省を促したいと思います。
したがって、監査は財務諸表をまず疑うことからはじめられます。そこで公認会計士は「職業的懐疑心」ということを徹底的に叩き込まれています。財務諸表が虚偽であったことから資本市場が揺らいだのですから当然です。数字が正しいかどうかを示す書類を容赦なく要求します。
ここからが本題です。人間はだれしも思考法にはそれまでの知見に基づいたパターンに支配されてしまいます。公認会計士が公益認定の申請審査を行えば、「職業的懐疑心」を発揮することは仕方がないことでしょう。
海外へ行かれた方ならご存じと思いますが、税関申告書という「持っていないもの」をチェックしているだけの書類があります。税関で「職業的懐疑心」を発揮したらどのようになるでしょう。
公益認定の申請書は、虚偽申告に非常に厳しい罰則を用意しています。
申請者の中の数字で明らかな矛盾があるものについてはチェックも必要でしょう。
しかし、申請書の数字をまず疑い、その裏付けを次々と取っていたのでは、大変なことになります。
申請書の内容が真であることを確認するのが公益認定の審査ではありません。
提出された申請書の内容を所与として、それが公益認定法の認定基準に合致しているかどうかを確認する作業が公益認定審査です。
寄付予定者の財力を確認するために確定申告書を求めるなどあっていいはずがありません。
公益認定をここまで運用上の混乱に陥れた原因を究明すべきでしょう。