公益財団法人公益法人協会が50周年を迎えました。誠におめでとうございます。
初代理事長渡辺昌夫さんの謦咳に触れた人間としては感無量の思いがあります。
50周年に合わせて記念シンポジウム「多様化する社会と公益法人の可能性ーサステナブルな公益活動の実現に向けてー」が先般行われました。
そこで印象に残った点を3点挙げておきたいと思います。
第1点は、雨宮孝子理事長の挨拶でした。
歴代理事長と雨宮理事長とが写りこんだ写真を上げながらのご挨拶でした。
大学院生時代から公益法人協会とかかわりがあった雨宮理事長にとって、公益法人協会の50年は文字通り人生そのものだったと思います。
可能ならば、基調報告くらいの時間を取ってじっくりお話を伺いたかったなと思います。
とりわけ、昭和52年・60年の公益法人会計基準策定にかかわった公認会計士の出塚清治先生や初期の公益法人協会を事務局長として牽引した森彬氏、雑誌「公益法人」の編集を続けた土肥寿員氏らについてもっと語りたかったことと思います。
特に出塚先生が番場嘉一郎氏等とともにかかわった昭和60年会計基準は、「比較可能性」という妖怪を重視する現在の公益法人会計基準とは発想が全く異なり、受託責任会計を重視して現金主義計算に基づき法人が未払い・未収金等を自由にカスタマイズする画期的な「発明」でした。
現金主義会計におけるPLとBSの一致という難問を解決したものです。
平成16年公益法人会計で企業会計からの圧力で、ほとんど議論されることなく葬り去られました。非常に普遍性を持った会計基準だと思います。
英訳して国際的に議論できるようにしていれば、現在、進行中の「国際非営利会計基準」(IFR4NPO)にも大きな影響を与えたはずです。
第2点は、溜箭将之東京大学大学院法学政治学研究科教授が基調報告です。
その中で、同教授はガバナンスの重視が「あれをしてはいけない、これをしてはいけないと」いう状況を作り出していることを指摘し、その状況を子育てに譬えたことでした。現在の公益法人の守旧性の本質を突いた比喩だったと思います。
現在の公益法人が外部からどのように見えているかを考える上でも非常に示唆的な比喩だったと思います。
第3点は、太田達男会長の報告です。
その中で同会長は会計研究会(レジメでは会計委員会)の問題を指摘しました。これは極めて重要な問題で、本ブログは会計研究会の問題を指摘するために立ち上げたようなものです。財務三基準の問題を指摘する人は多いのですが、この解釈運用が一部の会計関係者だけの研究会に特化・独立した状態で進行していたことの「根源的な問題」の指摘です。
地方の委員会でも、委員会とは別に、会計委員会を設置して事前に議論して、委員会が財務三基準については全く関与していない都道府県もあります。
財務三基準がこれほど問題になっている中で、だれがどのようにこの制度をゆがめてきたのか、もう一度よく検討したほうがよいと考えます。
財務三基準は「合議」されているのか、という合議制機関の根幹にかかわる問題の指摘だったと思います。
以上のとおり、記念シンポジウムは意義深いものでした。
最後になりましたが、意見の多様性をどうやって集約していくのかといった新しい課題に挑戦することなど、同協会の今後のご活躍を祈念いたします。