最近、助成財団の守旧性がよく語られるようになりました。新しいことをしようとするのにものすごいエネルギーが必要とされます。ひどい場合には定款の変更や変更認定申請など膨大な事務作業が待ち受けています。そこまでいかなくても、変化しないことに慣れきっている理事会や評議員会に対して「etwas Neues=何か新しいこと」をしようとすれば、説明の必要も出てきます。
そんな中で、先般のサントリー地域文化賞(公益財団法人サントリー文化財団主催)の贈呈式が実に20年ぶりに東京から大阪へと変更になったことは、何気ない変化のように感じるかもしれませんが、大阪の人間としては関係者の間に非常に大きな決断があったように感じます。
残念なことに、大阪から東京への流れは様々な分野で生じてしまっています。「民都・大阪」を目指す「民都・大阪」フィランソロピー会議では、大阪の企業設立による企業財団の主たる事務所の大阪への設置を主張しています。大阪の企業は繰り返し、大阪の活性化を主張していますから、まず、その主張の一貫性を「非営利の組織」である企業財団から始めてみてはどうかというものです。
同財団は大阪の財団ですが、二つの賞贈呈式であるサントリー学芸賞、サントリー地域文化賞ともに、メディアが圧倒的に集中する東京で開催していました。今回、後者を大阪での贈呈式に切り替えたことになります。
民間の公益活動は全体を見据える必要がありません。それは個々の法人にとっては大きな利点でもあります。そうした制約にとらわれることなく公益活動が行われることで多彩な活動が可能となってくるからです。しかし、一方でこの点は全体にとっては大きなマイナスともなりうることが指摘されています。「公益法人による民間公益活動がばらばらに発達しても地域間のバランスが悪くなるだけではないか」という批判に反論するすべは実はないのです。
これを日本に当てはめれば、民間公益活動は過度に東京に集中して、結局は東京一極集中を加速化させるだけになりかねないことが懸念されています。
この点は、民間公益活動反対派からの強力な批判の根拠となっています。
守旧性が指摘される中で、東京一極集中への圧力に抗し、同財団の贈呈式を東京から大阪へ移したことは、上記のような批判への重要な反証となります。
この英断に拍手を送りたいと思います。