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民間公益の増進のための公益法人等・公益認定ウォッチャー (by 出口正之)

日本の民間公益活動に関する法制度・税制は、10数年にわたって大きな改善が見られました。たとえば、公益認定等委員会制度の導入もその一つでしょう。しかし、これらは日本で始まったばかりで、日本の従来の主務官庁型文化の影響も依然として受けているようにも思います。公益活動の増進のためにはこうした文化的影響についても考えていかなければなりません。内閣府公益認定等委員会の委員を二期六年務めた経験及び非営利研究者の立場から、公益法人制度を中心に広く非営利セクター全体の発展のためにブログをつづりたいと考えております。


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基本財産の一部を流動資産表示にする提案について、会計研究会は正確な情報で質問せよ [2022年01月29日(Sat)]

内閣府の公益法人の会計に関する研究会が具体的に何を提案しているのかが、よくわからないままに制度改革が進展して極めて危険かつ異常事態が生じています。


モデル会計の提案については、議事録を公開していなかった頃の第38回研究会(令和元年 10月21日)で資料として添付されています。この情報は全く伝わっていないのではないでしょうか?


現在、非営利の会計では基本財産に相当する部分はどの非営利の会計基準でも固定資産です。


10億円を基本財産として活動しているときに、例えば国債の満期を迎えることで一時的に普通預金に入金されることがありますが、その時でも10億円は10億円の基本財産として固定資産に計上されています。また、年度末に基本財産として新規に1億円寄附したときも一旦は普通預金で受け入れます。これらは普通預金、定期預金に関係なく「基本財産」として固定資産の部に表示されます。

 現在の議論が正味財産増減計算書の名称変更の活動計算書に限るといっても、貸借対照表への影響も無視できません。公益財団法⼈中⾕医⼯計測技術振興財団が公表している令和元年度の正味財産増減計算書内訳表をベースに当研究会事務局が作成した事例では「基本財産受取利息」の用語は残っていますが、「⽂⾔の定義、係数の作成⽅法など現時点で明らかではないものは、当研究会の議論を踏まえて当研究会事務局で仮置きしています。」という注記までわざわざ入れられています。

 その証拠に味の素ファウンデーションを題材にした事例では基本財産の部分が使途拘束の前期末、当期末残高にも表れていません。
 縦と横の項目をすっかり変えてしまうものを活動計算書への名称変更に伴う修正としているのはあまりにも無謀と言えます。



提案そのものが全く示されないままに、これほどの革命的な大提案について会計研究会のヒアリングでは、各公益法人に対して「分かりやすい会計にすることについてどう思うか」とだけ質問しています。


 これではヒアリングになっていないでしょう。




「現行会計基準で、基本財産として普通預金を保有している場合固定資産表示になるが、提案しているモデル会計基準上は、流動資産として表示される点についてどう思うか」という質問をするならば、まだわかります。


それを「分かりやす会計にすることについてどう思うか」という質問にすることで何を引き出そうとしているのでしょうか?


 会計関係者だけで構成される同質的な研究会が陥っている陥穽ともいえます。


 基本財産は財団法人(学校法人や社会福祉法人を含めて)の心臓部であり、その一部を年度末の形態によって固定資産にしたり流動資産にしたりする提案については、法人サイドはそれだけで大混乱になるでしょう。


 せめて何を提案しているのかをよく理解してもらうような努力をしてから、公益法人や関係者からヒアリングをしてもらいたいものです。


個別論を提示することなく一般論で分かりやすい会計に変えようというだけでは社会に対する大混乱を生じさせる責任を後から負うことになりますよ。


 公益法人関係者や長く公益法人を見ていらっしゃる真摯な公認会計士の皆様方、是非この点にご注意ください。


第38回公益法人の会計に関する研究会+議事次第及び資料 (1).pdf

第38回+公益法人の会計に関する研究会+議事要旨 (1).pdf

(いずれも令和元年 10月21日)
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