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民間公益の増進のための公益法人等・公益認定ウォッチャー (by 出口正之)

日本の民間公益活動に関する法制度・税制は、10数年にわたって大きな改善が見られました。たとえば、公益認定等委員会制度の導入もその一つでしょう。しかし、これらは日本で始まったばかりで、日本の従来の主務官庁型文化の影響も依然として受けているようにも思います。公益活動の増進のためにはこうした文化的影響についても考えていかなければなりません。内閣府公益認定等委員会の委員を二期六年務めた経験及び非営利研究者の立場から、公益法人制度を中心に広く非営利セクター全体の発展のためにブログをつづりたいと考えております。


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会計研究会で日本財団が素晴らしい指摘(2−2) [2022年01月16日(Sun)]

 昨日に引き続き、日本財団のヒアリングについてです。


2)バラバラな非営利の会計基準の要因をまず探れという指摘


 現在の会計基準が法人形態別にバラバラで法人間での比較可能でない点を強調する研究会の提案に対して、「法人形態別となったのはそれぞれが規定される法律および行政庁の求めに応じている結果です。法人形態ごとの比較を重要視するのであれば、会計制度の様式を合わせる前に、行政目的である監督官庁あるいは法律上の要請・要件を統一するところからの見直しが必要ではないでしょうか。」という率直なご意見を出しています。


 法人法も税法も全部バラバラの中で、会計だけ標準化を急ぐ必要性が十分に議論されていない点のご指摘だと思います。

 この点をないがしろにすれば、「結果として公益法人を含む非営利法人の会計処理は現状以上に複雑なものとなっていくことが懸念」と問題の危険性を端的に指摘しています。

 さらに、「提案されている活動計算書はモデル会計基準がベースとなっていると思われますが、公益法人以外の法人形態での導入の見通しが不明瞭であるとしたら、比較しやすいという目的も満たせる可能性が低いと言わざるを得ない」という主張も首肯できます。


 「一般に分かりやすい会計」、「アカウンタビリティを高める」、「有用性を高める」等の用語は、企業における財務会計の考え方が背景にあります。

 何も関心のないサイレント・マジョリティにとって耳に優しい抽象的な用語だけが、展開されているのに対して、日本財団の相澤部長はズバリとその本質を突きました。



 これは公益法人協会の以前の意見とも全く同じです。


 近年の会計理論はグローバル化する上場企業の会計を基に議論されております。そこでの重要なステークホルダーは株主であり、投資家であり、金融機関であり、債権者です。一言で言えば、金銭に最大限の関心を持つコミュニティです。これらの外部ステークホルダー向けの会計を財務報告会計として、内部向けの従来の管理会計に対して「一般」目的と称しています。企業の世界だけで「一般」の用語を使用することまで門外漢の小生が問題を指摘するのはやめますが、アカデミアに身を置く者は「一般」か「特殊」かということには非常に注意を払います。


 残念ながら会計研究会では、上場企業のコミュニティの中で一般化されたものが、非営利の世界で援用できるのかということについて議論した形跡がありません。「一般」という用語に無意識に操られているようにすら見えます。


 行政庁向け報告の会計は「一般目的ではないからダメなのだ」というところで止まってしまうのです。


 しかし、実務の世界からは行政庁や寄付者という重要ステークホルダーを無視することはできません。したがって、「本様式で作成すると、行政にあわせた明細書を別につくることになり、公益法人にとっては非常に負担が大きくなる」という指摘になるのです。「一般目的にすることが大事だから非営利会計も」という演繹的な思考形態から生まれた会計では、修復不可能な大混乱に陥ることになるでしょう。


 会計研究会のメンバーが会計専門家に閉ざされていることも議論に限界を与えてはいないでしょうか?


 公益法人には、企業会計でいう外部の一般的な利用者である、株主や投資家は存在しません。長らく主務官庁制度のもので規制されていたので、金融機関から借り入れをしている公益法人も実は非常に少ないです(このあたりの調査をすべきではないでしょうか?)外部の一般的なユーザーとはいったい誰なのかといった議論もされていません。


 また、任意適用か強制適用かということにも考慮しなければなりません。学校法人会計などは法令で定められており強制適用です。米国はむしろ特殊で非営利法人については強制適用の会計が多く、より慎重な態度が求められます。


 実際には任意適用のはずの公益法人会計基準を公益認定法の第2条4号の「技術的能力・経理的基礎」と組み合わせて、事実上強制適用させながら、多くの純粋な公益法人の会計担当者に対し「技術的能力がない」とレッテルを貼ってしまっている事実があることです? 突然、発生主義会計ではないからという理由の不認定文書とともに、みなし解散となった法人まであります。小生のところに泣いて電話してくる会計担当者もいます。


 会計研究会の議論が抽象的な「一般目的」「比較可能性」「意思決定有用性」など反対しにくい「きれいな用語」で散りばめられるので、何も知らない偉い理事長をはじめとする理事の方々にしてみれば、改革の方向性に反対するのはおかしな奴だとなってしまい、会計関係者が孤立してしまっている法人まであります。


 また、「アカウンタビリティを高める」ということも具体的な処理に則して説明する必要があります。金銭的関心のコミュニティである企業の世界では、資産活用の十分でない経営者には退出してもらう必要がありますから(これをガバナンスと言います)、資産評価を定期的にしかもできるだけ短期にしてもらうことがアカウンタビリティを高めることになります。より具体的に「資産の時価評価をどのようにするか」と聞けば、全く印象が異なってくるでしょう。


 非営利法人は、資産評価そのものができなかったり、売却することができなかったりする、たくさんの寄附資産や文化財等があります。


 こうしたことに対して企業会計の考え方は適用できないとしてIFRS財団は国際財務報告基準の対象から非営利セクターを除いているのではないでしょうか?


 相澤部長のように直接会計に携わった公益法人の方々が勇気をもってしっかりと声を上げていくべきです。

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