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民間公益の増進のための公益法人等・公益認定ウォッチャー (by 出口正之)

日本の民間公益活動に関する法制度・税制は、10数年にわたって大きな改善が見られました。たとえば、公益認定等委員会制度の導入もその一つでしょう。しかし、これらは日本で始まったばかりで、日本の従来の主務官庁型文化の影響も依然として受けているようにも思います。公益活動の増進のためにはこうした文化的影響についても考えていかなければなりません。内閣府公益認定等委員会の委員を二期六年務めた経験及び非営利研究者の立場から、公益法人制度を中心に広く非営利セクター全体の発展のためにブログをつづりたいと考えております。


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会計研究会で日本財団が素晴らしい指摘(2−1) [2022年01月15日(Sat)]

 内閣府公益認定等委員会の「公益法人の会計に関する研究会」(以下「会計研究会」という)の第51回、52回議事録が公表されました。数回にわたって、解説していきましょう。

第51回は日本財団がヒアリング対象で、相澤経理部部長、柏田経理チームリーダーのお二人が出席しています。


相澤部長の指摘は以下の点でとても素晴らしい。

1)公益法人会計の歴史的変遷の矛盾の指摘。

 もともと公益法人に広く浸透していた昭和60年公益法人会計基準を、「一般に分かりやすい」ことを目的として平成16 年会計基準に正味財産増減計算書が導入され、平成20年会計基準に引き継がれたことを指摘しています。


 企業会計の理論を援用する形で外部ステークホルダー向けの「一般目的の財務報告」を平成16会計基準で目指し、その上で、「認定法の要請に従う必要があることから平成20 年会計基準が設けられ、行政庁からの指導も受け、大半の公益法人がそれを適用している現状にあります」と述べている。平成16年会計基準の改正の目的が、今回の見直しの目的と同一であったことを鋭く指摘しています。 


 こうした流れを考えれば、行政庁への報告は特殊目的で「一般目的ではない」からと軽視し、今回、再び外部の「一般ステークホルダー」向けに変更しようとしているのはおかしいのではないかという指摘で、説得力のある主張となっています。


 このような歴史的な変遷については研究会は十分なレビューをしていたとは言い難い面があります。


 しかも、残念なことに、この大事な指摘を十分に理解した痕跡がありません。第52回研究会で既にヒアリングを終えた中谷財団へ提案の活動計算書に書き換えたものを見せて「活動計算書を作成する法人側に大きく負担がかかることはないと思われる」というコメントを引き出し報告しています。


 平成20年公益法人会計基準は財務諸表から認定法に求められた別表AからHの記載に法人が負担がなく、行政庁もチェックしやすいような改正が行われていました。外部へのわかりやすい報告が行政庁への報告へ影響を与えるのかどうかというこれまでヒアリングでさんざん指摘された点を全くあきらかにしていません。平成16年会計基準のように元に戻す提案をして活動計算書だけを見せて「大きく負担がない」とのコメントを強調するのは適切ではないでしょう。


 法人は財務諸表だけを作成しているわけではなく、認定法に基づき別表AからHまで作成しなければならず、今度の新しい提案はその負担の変化まで含めて「法人の負担」を測るべきことを相澤部長は指摘しているのに等しいからです。この発言を研究会側が受け止めていないことは大変遺憾だあといわねばなりません。財務諸表及び財産目録と別表AからHまで全てを記載したものを提示して、「法人の負担」を論じなければならないことは言うまでもありません。


(続く)


(日本財団の事前ペーパーは日本財団のホームページにも記載があります。)

https://www.nippon-foundation.or.jp/who/news/information/2021


なお議事録と資料については公益法人インフォメーションとフロントページから入れます(リンクが張りにくくなっております)

                                    


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