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民間公益の増進のための公益法人等・公益認定ウォッチャー (by 出口正之)

日本の民間公益活動に関する法制度・税制は、10数年にわたって大きな改善が見られました。たとえば、公益認定等委員会制度の導入もその一つでしょう。しかし、これらは日本で始まったばかりで、日本の従来の主務官庁型文化の影響も依然として受けているようにも思います。公益活動の増進のためにはこうした文化的影響についても考えていかなければなりません。内閣府公益認定等委員会の委員を二期六年務めた経験及び非営利研究者の立場から、公益法人制度を中心に広く非営利セクター全体の発展のためにブログをつづりたいと考えております。


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これはひどい! 公益法人を馬鹿にしていませんか? [2021年11月13日(Sat)]

 公益法人の会計に関する研究会(以下「研究会」)の議事録を読んでいて「賛成だが、〇〇…」という公益法人側の主張の展開になっていて、何となく違和感があったのですが、ようやくその正体が掴めました。


 公益法人への共通の事前質問があるらしいのですが、研究会は事前質問を公開していません。第47回研究会の資料に「令和2年度会計研究会報告において記載された論点について、どのようにお考えか」「上記の他、公益法人の会計についてお考えの点はあるか」とだけ公表されています。研究会では公益法人側が用意してきた事前質問に対する回答を述べ、それに対して研究会側から質問を行なうスタイルとなっています。


 事前質問の正式の公表はありませんが、ヒアリングの対象となった公益財団法人公益法人協会が事前質問を含めた回答書を公開しているのを見て、その質問内容に本当に驚きました。それによると、全文なのか要約なのかはわかりませんが、以下が最初の質問のようです。


(1)公益法人の会計基準についての基本的な考え方について

公益法人の損益計算書となる「活動計算書」について、分かりやすく作成も容易であるべきという考えについて、どのように考えますか。

 特に、公益法人会計をはじめ非営利法人の会計制度はそれぞれ別のものになっていますが、公益法人と他の非営利組織との比較や、利用者にとっての有用性や分かりやすさという視点も必要という考えについて、どのように考えますか。



 唖然とするような悪い質問の見本であることは誰でも分かるでしょう。「分かりやすく作成も容易であるべき」は普遍則です。最初に賛成の意見を誘導しています。


例えば、以下のような質問と同じと考えてよいでしょう。

 世界は平和であるべきだという考えについて、どのように考えますか?



世界は平和であるべきだという理想の共有はできてもその実現手段については合意がなかなか取れないところに問題の本質があります。公益法人側の回答もすべてそのような展開で答えています。というかそうせざるをえないのです。


以下の質問も完全に誘導です。


 ・・・分かりにくく廃止すべきである、という考 えについて、どのように考えますか。


 ・・・公益法人のガバナンス、自主性の強化を後押しするものである、という考えについて、どのように考えますか。


 ・・・の方が適切であるという考えがあります。これについて、どのように考えますか。


 ここまでくると、公益法人側は完全に馬鹿にされていると思わないといけないでしょう。


というか、こんな質問をぶつけて会計「研究会」は継続できるのでしょうか?


少なくとも研究者としてはこのような問答会に「研究」の用語を使用してほしくはないです。もう少し期待していただけに残念です。



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