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民間公益の増進のための公益法人等・公益認定ウォッチャー (by 出口正之)

日本の民間公益活動に関する法制度・税制は、10数年にわたって大きな改善が見られました。たとえば、公益認定等委員会制度の導入もその一つでしょう。しかし、これらは日本で始まったばかりで、日本の従来の主務官庁型文化の影響も依然として受けているようにも思います。公益活動の増進のためにはこうした文化的影響についても考えていかなければなりません。内閣府公益認定等委員会の委員を二期六年務めた経験及び非営利研究者の立場から、公益法人制度を中心に広く非営利セクター全体の発展のためにブログをつづりたいと考えております。


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会計研究会のヒアリングが始まりました。誰が分かりにくいのですか? [2021年10月12日(Tue)]

 前回、公益財団法人公益法人協会の意見書を取りあげましたが、すでにヒアリングを終えその第48回公益法人の会計に関する研究会議事録.pdfされています。以下その議事録からです。


〇研究会委員「私は監査法人に所属しておりますけれども、公益法人会計に初めて携わる会計士も、このような処理は仕組みとしてどうなっているのだということで、なかなかすぐには理解できないような会計処理になっているという事実もございます。

 こういった中で、作成者側としては確かに浸透しているというのは間違いないかと思うのですけれども、財務諸表の利用者側の観点から、この分かりやすさという点で、特に御懸念をお感じになるところはないでしょうかというところについてお伺いさせていただければと思います。よろしくお願いいたします。」

(中略)

〇公益法人協会「先ほども申し上げました受託者責任を全うするという意味では、この財産は寄附者ないしは出捐者から預かっているものだということを明確に示すことができて、その財源を使った都度一般に戻して使うということはむしろ分かりやすくて、受託者、出捐者、寄附者に対しての説明もむしろしやすくて、利用者から分かりにくいという話は、私は今まで十数年この協会におりますが、一切聞いたことはございません。


同意見の繰り返しは実は平成16年会計基準改正時にも行われています。まさにデジャヴュです。


平成16年の公益法人会計の大改正時の議論は以下の通りです。「(公益法人に対して)なぜ企業会計を基本的な立場として採用するのかと言う点について説明させていただきます。基本的な発想は、冒頭から話題になっているように、国民向けの財務諸表を作るという立場です。では国民にとってわかりやすい財務諸表とはどういうものかという問題ですが、とりあえず現行の公益法人会計を所与とせずに考えた場合には、多くの方々が企業会計で作成している貸借対照表、損益計算書に慣れている。一般の国民にとってみれば、企業のほうに慣れ親しんでいるであろうから、公益法人会計についても、そちらの目から見た方がわかりやすいのではないか、と考えました。(公益法人協会2003a7-8


企業会計の勉強をして公認会計士になったのはいいけれども非営利の世界にはなかなか足を踏み込めないというような捉え方をしていた方もいます。そういう意味では、今回の基準は、かなり参入障壁を低める効果があるのではないかと思います。」(公益法人協会2003)



この20数年間、会計関係者は「浸透しているけれども会計士にとって分かりにくいから変えましょう」と言い続けていると捉えられてもしかたない主張の繰り返しです。法人はその間何度も大きな会計上の変更を強いられ、その都度勉強し現在に至っています。


また、わからない公認会計士も法定監査の範囲が広がれば仕事をすることでわかるようになると言わんばかりの驚くべき主張まで存在します。


法人側は熱心に勉強することでわかるのに、頭の良い公認会計士になぜわからないのか、最もシンプルな答えに是非辿り着いてください。それがない限り「わかりやすくするために変更した」⇒「やはりわかりにくいからまた変更する」の繰り返しではないでしょうか?



改正の論理もこの20年間変わっていません。

@米国のFASB(Financial Accounting Standards Board)の基準がそうなっているから。

A一般目的だから。



@については任意適用であるFASBの基準と、実際強制的適用がある学校法人等の非営利の会計基準や建前は任意適用だが認定法5条2号の経理的基礎を持ち出して事実上の強制適用としている日本の公益法人会計基準を同列に考えることは無理がありすぎるでしょう。「発生主義ではないから」という理由を堂々とあげられ解散に追い込まれた法人が存在していたことは、世界の会計行政の歴史上の大きな汚点といってもよいくらいです。実際にFASBの基準を適用していない現金主義の非営利免税団体が米国でたくさん存在する事実を全く明らかにしていません。欧州でも同様です。


また全国公益法人協会の『公益・一般法人』9月15日号で、公認会計士の村山秀幸先生が、実際に会計研究会が提案されている内容を仕訳の例を提示し、如何に混乱を招きかねないかを解説されています。これは非常に説得力のある方法です。


村山先生の顰に倣うならば、Aについて会計研究会が演繹的に「非営利にも一般目的が企業と同等に適用される」ことをいうだけではなく、実際に、提案の方法で現実の例えば奨学金支給の公益法人の仕訳や決算を行い複数の財務諸表を作って「比較可能性」や「効率性」を示すべきでしょう。それで意思決定に影響を与えるのなら会計研究会は証拠を示してください。コロナに対応する病院とそうではない病院との比較をして「効率性」を計ってみてください。


M&Aを含む投資家や金融機関向けの財務報告を「一般目的」と名前を付けただけで、非営利に強制適用しようとすることはそれこそ、、Evidence Based Policy Makingに反することではないでしょうか?「一般目的」という用語を単に免罪符にしているだけではないですか?どこに一般性があるのでしょうか?


もともと寄付は、日本では喜捨とか義捐と呼ばれておりました。「捨」も「捐」も「すてる」という意味です。リターンがどうしても必要な投資家や金融機関と、もともと「すてる」という意味も内包した寄付者との「ステークホルダーとしての本質」の差を全く議論しようとしないのはなぜでしょうか?

寄付者にとって資産が時価評価されていなければならない理由はどこに存在するのでしょうか?


まずは、法人の実態をしっかりと見ることをお勧めします。


FASBの意見だけを紹介して国内外の多様な会計学の議論を無視することも小生には理解不可能です。


公益法人の側も賛成・反対を含めて、実際に財務諸表を作っている方々が声を上げるべきでしょう。


事務局幹部が総入れ替えになっていることにも一抹の不安を覚えます。内閣府公益認定等委員会委員はこういうときこそ、しっかりとした役割を発揮してください。


出口正之


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